罪悪感は人をも殺す

青海

パラレルワールド

「で、統一した結果がこれ、と。」

ほとんどの机には百合の花が生けられた花瓶が置かれている。

「まさか、ここまでとは思わないじゃん」

ロッカーの上に立つ行儀が悪い、高校生というには若すぎる女の子――神様はそう言った。

「君も止めればよかったんだよ。私の考えたことなんて」

「一縷の願いをかけたの。いじめやらなんやらがなくなるかもって」

その神様は世界中の感性を統一し、誰しもが同じ行為で同じ罪悪感を感じるように設定した。

その結果、沢山の迷惑を起こしたいじめっ子は集団自殺をし、強盗や殺人犯は持っていた拳銃やナイフで命を落とし、沢山の不祥事を起こした政治家は一家心中や辞職をしたりと、世界はもはや世紀末と言っても過言ではなかった。

「この世界もお終いかぁ」

「ねぇ、この言い振りだと、前もこんな事した?」

ただの人間はそう尋ねると、前もそんなこと言われたぁと神様は言い、

「人間は生命体の理から外れちゃったからねぇ。色々してんだから、天誅くらいやってもよろしいかと思いましてねぇ。」

と頬杖をつきながら答えた。

「それにしても、君は面白いねぇ。なんでこっちを認識してるんだか。」

「……さあ」

"ただの"人間は神様を一瞥した後、また教室の黒板の方向を向く。

(何故かこの人間、沢山のパラレルワールドに同人格としても居るんだよなぁ。)

神様は可愛らしい顔を人間に向ける。

並行世界の一つ一つでは、確かに同じ容姿でも性格や感性はほとんど違う。

しかし、目の前の人間はどの世界でも同じ容姿、性格、感性、ましては歩んでいる人生さえも同じなのだ。

昔から、ずっと感性を統一して天誅を与えていた。 その時から、人間は自分自身の方に振り向き、

「これ、お前がやったの?」

と言われていた。

別の世界に行けば、また別個体の人間に言われる。

最初は驚いたが、ここ最近驚かなくなった。

ましては、人間にその事を話してから感性を統一にするまでし始めたのだ。

「ねぇ、君もこの世界飽きたでしょ。」

「……それがどうしたの。」

「一緒に行こうよ。そして、人々に天誅を与えるの。」

「それを人間に伝えるのはどうかねぇ。行かないよ。めんどいし。」

神様の告白も同然のお誘いを人間はおざなりにした。

それを見て少し悲しくなったが、それと同時に、人間の性格を理解し、より次の世界が楽しみになった。

「私はもう行くよ」

「そう。自分はここにいるよ。」

小さな神様とただの人間は一回別れた。悔いもせずに。


――君はどのくらい迷惑を起こした?

――君は罪悪感を感じるかい?

――君の感性がもし、変わったら、罪悪感をより感じるようになったら。


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罪悪感は人をも殺す 青海 @AOI3737

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