青に包まれ晴天を仰ぐ。
青いバック
青げ天高く。
夏空。新緑が鼻の奥をくすぐる。空には大き過ぎる太陽が立ち上り、アスファルトには陽炎が。溶けてしまいそうな暑さの中、僕は君との約束場所に向かっていた。
「やっ、久しぶり」
「図書館の中に入ってなかったんだ。こんなに暑いのに」
「君なら入ってだろうね。でも、私は真面目なんだ。だから、約束場所からも動かない」
白い歯を見せながら、君はニヤッと馬鹿にするように笑う。こんなに暑いのに、クーラーの効いている図書館に入っていない君がおかしい、と僕は思ったが入れない事情があることを思い出す。
「まあ、君は入れないか」
「馬鹿にされたからって嫌味だね〜。モテないよ?」
「地球から愛されてるから大丈夫」
「わぉ、アースが恋人とは」
「こんなこと話してないで、そろそろ行こうよ。時間もないし」
「そうだね。行こうか」
僕はきゅうりとナスを手に持ち、君と暑い道を歩き始める。額から汗がダラダラと垂れる中、君は涼しげな表情をしながら歩いていた。
「やっぱり暑くないの?」
「暑くないね。私は寒さも暑さも感じない便利な体なのさ」
「便利だね、僕も涼しくしたりできない?」
「手持ち扇風機じゃないんだから無理だよ」
「あっ、手持ち扇風機持ってくればよかったな」
「持ってるんだ?」
「流行には乗らないとね」
「流行なの?」
「さぁ? 暑いからみんな持ってる感じじゃない?」
「なら、流行だ」
「流行認定、みんなが持ってるかどうかなんだ」
君の曖昧な流行認定に疑問を持つ。持つは持つが、そこまで気にしてても意味が無いのですぐに頭から消えた。
二人で冗談を言い合いながら、歩いていると最後の目的地に辿りつく。
「着くの意外と早かったね」
「君と話してたからね。あっという間だ」
「はは、それは嬉しい限り。もう、お別れか」
「うん、ナスときゅうりちょうだい」
僕は手に持っていたナスときゅうりを君に渡す。これに乗って君は帰る。ここでお別れだと思うと涙が溢れてきた。
「もう、いつも泣いてる」
「だから、この日は好きで嫌いなんだ」
「あはは、矛盾してるよ。また会いに来るからさ、笑って待っててよ」
「うん、待ってる」
「それじゃあね」
「ばいばい」
君はナスに乗り、自分のいるべき場所へ帰っていった。空には青空が広がっており、泣いている自分を慰めるように包んで欲しいと思う。
また来年か。強く生きよ。
青に包まれ晴天を仰ぐ。 青いバック @aoibakku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます