7 おしゃぶり
このひとこわい!
こらっ! ごめんなさい……いもうとが……
おねえちゃん! あっちいこ!
あっ、ちょっと! し、しつれいします……
あはは、おにー、きらわれてやんの
まぁそのほうが、つごうがいいかもな
わるいことはいわねー
あのふたりにはかかわるなよ、おにー
ZZZ……
チュンチュン チチチ
「ん……んん? ぅ……ぅーん……」
目蓋越しの明るさに、徐々に、意識が覚醒していく。
……朝か。
なんだか昔の夢を見てたような気がするけど……どんな内容だったか。
まぁ、夢の中身を忘れるなんて、いつもの事か。
目蓋を開く。
いつも通りの僕の部屋………………部屋?
なのに、何か違和感。
どこがおかしいのか…………あれ?
天井の照明、あんな形してたっけ?
部屋の窓の位置って、あそこだっけ?
あと……僕の部屋、こんなに良い匂いした?
「ぅぅん……むにゃにゃ」
あ?
なんだ? 今の、アニメキャラみたいなコロコロしたボイスは。
またPCで動画垂れ流しで寝ちゃったか?
ズシリ……
今頃になって気付く、両肩の重み。
筋肉痛?
でも、昨日は野球したりとか重い物運んだりとか、そんな事は…………
昨日?
……視線を下げる。
「すー……すー……」
「ムヘヘ……ゲヘ……」
女の子が二人。
シノさんにリノちゃん。
それぞれ左右に、僕の両肩(脇の上あたり)を枕にして、スヤスヤ眠っていた。
窓から差し込む陽の光で、キラキラと輝く銀色の髪の毛。
【エルフ】
幻想的過ぎて、そんな言葉が浮かんだ。
あー、思い出した。
昨日の、放課後からの出来事を。
同棲……この元アイドル美人姉妹との共同生活、ね。
一日目(二日目)の朝から、もうこんなバグってる距離感か。
昨晩は、覚えてる限りスケベなことはしなかった……と、思う。
そういえば、今は何時だ……?
分かっているのは今が朝というくらい。
平日なんで、学校は普通にある。
このままハーレムっぽい見た目で二度寝するのは『僕は』構わないが……優等生な二人を遅刻犯にはさせたくない。
微妙に、この位置だと首を動かしても壁掛けの時計は見えないな。
「おーい」
ゆさゆさ……ゆさゆさ……
身体を揺らすも、二人はまだ夢の中。
揺れるたび、柔らかそうな髪の毛と大きな胸も揺れている。
うーん……触りたい。
僕は欲望のままに、なんとか腕を曲げて、二人に手を伸ばす。
サワ……
同時に触れると、二人ともピクリとなるも、起きる様子はない。
サラリ……
指の間を潜る『髪の毛』。
どちらも、見た目以上に素晴らしい触り心地だ。
え? 乳? 流石に今は触らないけど?
「ムニャムニャ……オニーチャン……」
「うん? ああ、寝言か。ふふ、可愛いやつ(リノ)よ」
「あー……んっ(パクッ)」
「んあっ!?」
突然リノちゃんに、僕の大事な部分を咥えられ、ビクッとなる。
「んふふ……朝ごはん……朝ごはん(チュパチュパ)」
「ら、らめぇ……何も出ないからぁ」
「んっ…………何ですか、朝から騒がしい………………ッ!? な、何をしてるんですリノ! (グイッ)」
「やんっ」
目覚めたシノさんに引き剥がされるリノちゃん。
「はぁ……はぁ……ありがとうシノさん。もうすぐで僕はママになる所だった」
「どういう理屈ですか……」
「むにゃむにゃ……うーん? あー、みんなおはよー」
「とぼけないで下さいリノ。早く起きていたのでしょう?」
「なんのことー? ハッ! お兄ちゃん! どうしてTシャツのおっぱいのとこが(唾液で)濡れてるのっ!?」
「ああ……乳離れが出来ていない子の世話をしててね……」
「ぅぅ……ごめんお兄ちゃんっ、私っ、口寂しいとすぐに何かを口に入れちゃうんだっ」
「いいんだよリノや。今度一緒に睡眠時用のおしゃぶりでも見に行こうね」
「騙されないで下さい、その子にそんな習性は無いです」
ベッドから降りる二人。
「やーだっ、もっと寝るっ(ジタバタ)」
「着替えたらダイニングの方へ来て下さい、朝食にしますので。ああもうリノッ、暴れないっ」
そのまま、シノさんはリノちゃんを連れて、部屋を出て行った。
慌ただしい朝だ。
「時間は……(チラッ)なんだ、まだこんな早い時間か」
ササッと学校の制服に着替え、僕も朝食の手伝いをするか。
リノちゃんの唾液で一部ひんやりしたTシャツを脱いだ所で…………なんだ?
「この全身に感じる……鈍い違和感の正体は?」
『ふふっ、気付いたね、お兄ちゃん』
「ッ! その声はリノちゃん!」
彼女の姿は見えない。
彼女の声は、扉の向こう側から聞こえる。
『昨晩、忠告したよね? 朝、私より先に起きないと、お兄ちゃんの身体に『何をされても』文句は言え無いって』
「い、一体何をしたんだっ」
バンッ!
勢い良く開かれる扉。
「それはっ!」
「そんな学校でうろつかないで下さいっ」
上はブラ、下は制服のスカートというカッコいい(パリコレみたいな)ファッションで登場したリノちゃんだったが。
ピチッと制服姿でやって来たシノさんに、再び連れて行かれてしまった。
……い、一体……僕は何されたんだ……?
『ぐぬぬ……本当は嫌だけど、学校の中では今まで通り他人な感じでねっ』
『まぁ、そういう事ですので』
朝食時に。
僕らはそういう『確認』をしておいた。
僕からすれば特に異論は無い。
変に騒がれ注目されるのも嫌だしね。
で、今は学校の中だ。
朝、体育館に集まっての全校集会。
なんだか眠いなぁ……まぁ、昨日と今日、私生活での慌ただしさを考えれば当たり前か。
「それでは、生徒会長、お願いします」
「はい」
コツ コツ コツ
一人の女生徒が、ステージ上へとのぼる。
体育館の空気が変わったのを感じた。
「あー……生徒会長のヨミさんは今日も綺麗だな……」
「ああ。あの長い金髪と『白銀(はくぎん)姉妹』に劣らぬスタイル……」
「朝から男子サイテー」
「今日もキリッとしててカッコいいなー、ヨミさん……」
ボソボソと、生徒達の会話が聞こえる。
はー、みんなに慕われてるねぇ。
……で。
今からやるのは『表彰』らしい。
優秀な生徒がみんなの前で賞状を貰うアレだ。
「生徒会長が渡す役をやるんだな……こういうのって校長とかの役目じゃ?」
「ここじゃあ生徒会長の方が威厳あるからな……」
「確かに……」
変な学校だなぁ。
……で、そこで名前を呼ばれたのが。
「はーい」
リノちゃんだった。
なんでも、有名な絵画コンクールで賞を取ったのだとか。
忙しそうなのに、いつそんなの描いたんだ? と思ったが、要領が良い子なんだろう。
スタスタと軽快にステージへと上がる彼女。
そこは元アイドル、緊張感も無く堂々としてるな。
「おしとやかな姉のシノさんは勉強とスポーツ系、元気っ子な妹のリノちゃんは音楽や絵画特化の芸術系……バランスいいよな」
「あの二人がステージに立ってる絵面は映えるよなぁ。金の姫と白銀姉妹のコントラスト……素晴らしい光景だ」
家では暴走してるあの子が、あんなに立派な姿を見せて……
まるで親のような感動を覚える僕。
ステージ上では、美少女二人が、表彰台を挟んで向かい合っている。
不意に。
生徒会長様が、リノちゃんを見ながら目を見開き…………次に、だいぶ離れた位置に居る『僕を見た』。
一瞬の出来事なんで、周りの人間は気付いてないだろう。
なんだ? リノちゃん、あそこで生徒会長様に『何かした』?
……表彰自体は、何事も無く終わる。
「いぇーいっ」
賞状を貰ったリノちゃんは、階段を降りる前にお調子者のように全校生徒に向かってピース。
アハハ!!! と拍手する体育館の生徒達。
……ん?
いや、このピース、明らかに僕に向けてだな、僕の方しか見てないし。
なんで、パチリとウィンクで答えてやると、
「うおっ!? (ガタンッ)」
階段を踏み外しそうになっていた。
「はぁ……」
近くで、シノさんのため息が聞こえる。
それと同時に……
ザクザクッ!
という鋭い殺気。
遠くの方から、僕に向けられているのが分かる。
まぁ、その相手も分かりきってるけれど。
リノちゃんのとは真逆だな。
で、時間は飛び、昼休み。
いつものように、部室でボッチ飯をしていると、
ガラリ
扉が開かれ、閉じられる。
「説明しろ」
その金髪は、怒ってる猫のように逆立っていた。
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