狩人

 彼女はイスセンスダに連れられて、崩れる砂の上を歩いた。この世界に立った当初に比べると、体の違和感はかなり薄れている。人は慣れる生き物なのだ。


 再生炉への道中、彼女は獣の頭をした者に出くわした。犬のようでもあり猫のようでもある、この奇妙な顔をした者は、ジロジロと値踏みするように彼女を見る。

 不快に思った彼女は、イスセンスダの背後に隠れるように下がりつつ、恐る恐る獣頭の者に言った。


「な、なんですか……?」


 しかし、獣頭の者は彼女には取り合わず、イスセンスダに話しかける。


「また新しいのが来たのか」

「ええ」

「弱そうな奴だな」

「そうですね。あなたが相手をする価値はありませんよ」

「つまらん。ああ、つまらん。退屈だ。早く扉が開かないものか」

「ケルボルクは何と言っていましたか?」

「知らん。あいつとは話が合わんのでな」


 獣頭の者は不機嫌そうな態度を隠そうともせず、何度も舌打ちをしながら、首を振って去っていった。

 彼女は失礼な人だと心の中で憤り、イスセンスダに問う。


「何なんですか、あの人は」

「あれは『獣』のアイアシアド。最も若い貴種です」

「貴種?」

「大きな力を持つ命のことです」

「大きな力……」

「はい。そこらの命とは存在そのものが違うと言っても良いでしょう。私もまた貴種の一つです。アイアシアドよりは古いですが、それでもまだ新しい方ではあります」


 変わった習わしのある世界なのだなと、彼女は理解が及ばない状態で、漠然と受け止めた。そして思考をアイアシアドという存在に戻す。


「それにしても危なそうな人ですね、あのアイアシアドとかいう人は」

「常に暴力を振るえる相手を探しているのです。それもこれも退屈だからですね」

「闘戯場で戦ったりしてるんですか?」

「時々……ですね。もう弱い命の相手は飽きたと言っています」


 もう関わりたくない相手だと彼女は率直に思った。


「さあ、行きましょう」

「あ、はい」


 イスセンスダは再び再生炉に向かって歩きはじめ、彼女はその後について歩く。

 しばらく歩いていると、行く先に小高い丘のようなものが見えた。

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