第5話

何か分からないけど、最近、俺の後ろから視線を感じる。

いつもは、目を合わせようとすらしない、避けて通る人たちの群れの中を通っているから視線を感じると逆にこんなにも分かるものなのか。

ここ一週間位はずっと感じている気がする。

何故だろうか。「黒魔術の伝道師」で通っている俺を見つめる理由はなんだ?

色々と思考を巡らして考えてみる。

考えた結果、噂を信じた闇の組織(謎)が俺を観察し、見張っているという極論についた。

仮にそれが答えだとしたら、俺の命が危ない。警戒せねば。


今日は、5月の平日。朝から学校である。

いつも通り、生徒から距離を取られながら登校している。

兄である和麻は毎朝生徒会室に用事があり先に登校している。

中学の時は一緒に登校していたが、1人での登校にも慣れてきたなぁと思っていると、横から「あの!」と言う声がした。けれども気のせいだろうと声を通り過ぎようとすると、今度は肩をツンツンとつつかれ「あの!!」とさっきよりも大きな声で呼びとめられた。


他人から声をかけられるのが久しぶりすぎて「えぇ・・・?」と内心戸惑った。

声のする方に向いてみると、ロングの髪にカチューシャをつけている見るからに美少女が横にいた。

なんの用だこの美少女・・・とおもっていると美少女は俺にこう話しかけてきた。


「先日は、助けてくださり、ありがとうございました。偶然同じ学校だったことを知り、お礼がしたいと思い、話しかけました!・・・これ、お礼です。受け取ってください!」


元気良く話す彼女だが、何の事か全く分からない。お礼・・・?助けた・・・?俺には身に覚えがなかった。それより

この子は俺が怖くないのだろうか・・・?

平然と話しかけてくるし・・・


「あのさ、人違いじゃ・・・」


「忘れてしまっているのですね!一週間も経っていますし、しょうがないことですね・・・あっ!よろしければお名前をお聞きしても良いですか?」


話を都合良い方に持っていかれてしまった。


ってか、この子、俺を知らないのか?

噂とか聞かない子なのか・・・?


「美園友麻だけど・・・」


「友麻さんと言う名前なのですね!教えてくださりありがとうございます。またまた、よろしければお友達になりたいのですが!」


訳の分からないうちに友達になりたいと言ってくる美少女。何でこんな美少女が俺と友達に・・・?

・・・!まさかこれは闇の組織(謎)がらみか・・・?

そうだ!そうでなければこんな美少女が俺と友達になりたいなんて言ってくる訳がない。

ここは逃げよう。

でも、俺に話しかけてくれたことには一応・・・


「ありがとう」


「・・・!」


そう言って俺はそそくさと美少女から離れていった。






そう、あの日、和麻は友麻の変装をしていたのだ。

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