まどろみに包まれていた。

どのくらい寝たかは定かでない。横になると、やはり寝不足だったのか、直ぐに寝息を立ていた。暫くして、どやどやと部屋に入ってくる足音に、ふと目が覚める。村越が起き上がり屈伸をしだした。すると、佐久間も目を覚ます。

「村越、起きたのか?」

「ああ、少し寝たんですっきりしたぜ」

「俺もだ」

「そろそろ阿部を起こして打ち合わせでもするか」

佐久間が腕時計を見た。村越が肩を揺する。

「阿部、起きろ!」

「う、ううん・・・」

目を擦り起きた。

「ああ、よく寝た。おかげで疲れが取れたぜ」

背伸びと伴に欠伸をした。そんな阿部の様子を見つつ、佐久間が五万分の一の地図を広げる。

「それじゃ、再確認するか」

そこには赤鉛筆でルートが詳細に記されていた。三人の視線が、そのルートに注がれる。

「よっし、明日が本番だからな。頑張らなくっちゃよ!」

村越が張り切る。それに反応し、阿部が口を挟む。

「明日のアタックから、本格的な冬山登山に入るんだ。今日の鉱泉小屋までの道程は、準備運動みたいなもんだぜ」

「たしかに、美濃戸口からこの小屋までは、登山道というよりは林道という山道だものな。道路の雪は、我々が歩き始めた朝方は凍っていたが、踏み固められていたんで、難なく来られたからよ」と村越。

「今日のところは順調に来たけど、前日に新雪でも降っていればそうはいかなかったぞ。雪が深けりゃワッパを履かなくちゃならないし、もっと凍っていればアイゼンを着けねばならなかった。そうなれば四時間どころでなく、六時間から場合によっては、倍の八時間ぐらい要したかもしれん・・・」と佐久間。

三人の目が、地図上で登って来た道を追いかけていた。

「そうだよな。いくら林道といえど、結構登っているんだ。万が一、雪でも降り積もっていたら、それこそ一筋縄ではいかない難所になるところだったぜ」

登ってきたルートを振り返り危惧した。

思いは、皆、同じだった。

「それじゃ、見てくれ!」

佐久間が促し改めて地図を囲み、車座になって視線をやる。

「明日は、この赤岳鉱泉小屋から、中山峠を越え行者小屋を経由して、阿弥陀岳へと向かう。途中の尾根の稜線に出る前に、広いスロープがあったよな。ここ、これだ。このところが中岳コル手前の急斜面だ」

佐久間が赤鉛筆で印のついた箇所を指で示す。

「ここが、前回訓練したスロープだ」

「うむうむ・・・・、そうだったな。そこだ。前回来た時滑落停止の訓練をしたんだ。思い出すぜ」

村越が口を挟むが、構わず続ける。

「そうだな、ここで一時間ぐらい訓練するか。万が一のことを考えたら、あれ以来ピッケルを使った滑落停止なんかやっていない。思い起こすと言うか、再度身体に染み込ませておかねえと、いざという時役に立たんからな」

「そうしようぜ。さもないと、俺なんか忘れちまっていて、初心に帰ってピッケルを使い如何身につけるかを、うる覚えでしか覚えてない。一時間ぐらいみっちりやらなきゃ思い出せんよ」

阿部が同意した。

「それじゃ、一時間念入りにやるか?」佐久間が提案する。

「ああ、それがいい。万が一、稜線で吹かれた時役立つからよ。村越がこれで助かったんだ。俺らだって同じ目に遭うかもしれねえ、手抜きはご法度だぜ」

阿部が真顔になった。

「そうだな。まあ、先の工程時間と擦り合わせながら調整しよう」

阿部の決意に相槌を打ち、指で赤線をなぞり注意を促す。

「斜面での訓練を終えた後、そのコル部へと登り稜線に出る。中岳のコルだ。そこから稜線沿いに阿弥陀岳へと取り付いて行く。まあ、コルからおおよそ三十分程で山頂に辿り着く。玉ねぎ状構造の急勾配の岩場道になっているんで、足元には充分注意が必要だ。山頂に着いたら、登り来た岩道を下山するが、中岳のコルまで下り、さらに中岳を通って赤岳へと向かう。そうだ。阿弥陀の頂上で、素早く記念写真を撮って・・・」

地図の赤線に指をなぞり確認した。その指先に両名も黙って頷く。

「それで、赤岳には稜線を歩くんだが、両側の谷底から粉雪が混ざった冷たい風が吹き上げてくる。村越がバランス崩して落ちかけた稜線を踏破する。最も注意を要するところだ」

「そうだ、二度と過ちは犯さねえぞ。あん時きゃ。油断していたわけじゃない。風には注意していた。用心して歩いている時の、ちょっとした間だった。粉雪が目に入って、そちらに気を取られた瞬間に、突風にあおられていた。身体がふわっと浮き、慌てて体勢を立て直そうとしたが、身体が横に傾き稜線を踏み外していたんだ。

考える余裕などなかった。とにかく一瞬の出来事だったもんな。身体が浮き稜線から離れていった。恐ろしいとか怖いとか。如何しようなんて考えている暇などなかった。無我夢中でピッケルを身体に寄せ爪を立てていた。どれくらいの力を入れたか分からない。ずずっと滑ったが、何とか脇を締め踏ん張ったら、滑落を止めることが出来たんだ。止ってよかったと安堵する余裕などなかった。それこそ頭の中が真っ白で、必死に稜線まで這い上がっていたよ」

村越が生々しく、その時の状況を蘇らせていた。

すると、佐久間の話が熱を帯びる。

「しかし、あの時は命拾いしたもんだ。目の前にいる村越が急に傾きかけたと思ったら、稜線から離れていった。一瞬、なにが起きたのか分からなかった。俺自身、なにも出来ず唖然としていたよ。ただ、視線が追っかけていただけだったもん。本当にピッケルで滑落を止められてよかったと思っている」

「そうだよな。今回は絶対に落ちないように、充分注意して歩かないと。二度とご免だぜ」

真剣な眼差しに、さらに阿部が慎重になった。そして佐久間が話を変える。

「とにかく、細心の注意を払うということでな。それで、赤岳の山頂に着いたら記念写真だ。主峰赤岳登頂成功の記念にするんだ。カメラを忘れるな、佐久間。登った証に撮るんだからよ」

「ああ、決まってら。登攀用ザックに入れておく、忘れてなるものか!」

村越が応じると、阿部が続く。

「それはまあ、山頂も風が強いし狭い、長くはいられねえぞ。登頂の記念写真を撮ったら直ぐに退散しなけりゃ」

「おお、その通りだ。それで、多分山頂からちょい離れたところの赤岳の山頂小屋はクローズされているだろうから、素通りして赤岳展望荘、地蔵仏、三十三夜峰を経由して横岳へと向かう。まあ、その間に昼飯を食うことになるが、手際よく食わにゃならん。そして、横岳から、ここのところだ」

佐久間が地図に指を落とし、マークして二人に理解を求める。

「ここだ。分かるよな」

「ああ、了解した。それに小型コッフェルと、固形燃料を忘れないようにせんと。凍った握り飯だし、紅茶ぐらい沸かさんとよ」

応じる阿部にさらに促す。

「うん、そうだ。忘れたら冷たい握り飯を食うことになる。多分、凍っているだろう。とても食えたもんじゃないぞ。温かい紅茶で流し込まなけりゃ食えねえから。阿部、明日は忘れないように、再点検してくれ」

「分かった。念を入れてやるよ」

阿部は忘れまいと、頭に叩き込んだ。

「そして、横岳の三又峰、大権現、奥の院から硫黄岳へと向かい、そして大ダルミから赤岩の頭を通って下山して、鉱泉小屋へと戻ってくる」

概略を説明し、佐久間が顔を上げる。

「如何だ。大まかに言うと、このような行程だ。まあ、昨年も挑戦しているし、入る前に何度か打ち合わせてるんで熟知しているが、いよいよ明日登る。そう思うと胸がわくわくするぜ。この小屋をベースにして縦走を試みる。幸い天気の方もいいみたいだ」

すると、村越が尋ねる。

「それで、如何なんだ、時間的なことは。決めた割で登るには、朝は何時に出発したらいいんだ?」

阿部が口を挟む。

「そうだよ。それによっちゃ、起床時間が違ってくるからな。朝飯を作り、食う時間も見なくちゃならんし、ここに戻ってくる時間も、あまり遅くには出来ねえ。何しろ日が落ちるのが早い。この季節だ、出来れば日のあるうちに戻って来たいよな。それに幾度か打ち合わせた時には、結構日没ぎりぎりだったし、ゆとりを持たせるには、どこかで時間調整しなきゃなるまい」

「ああ、そうだな。たしかに目一杯だった。それじゃ。コースの方はいいとして、各箇所の所要時間がどれくらいか再確認してみようや」

佐久間が言いつつ、赤線の横に記してある所要時間に指を這わせる。

「ここに書かれている時間で見て、この小屋を出発して帰ってくる全体の所要時間が約七時間程だ。これに休息時間を一時間おきに一〇分取るとし、さらに阿弥陀岳前のコルでの滑落停止訓練に一時間を費やす。そうすると、合計九時間になるか・・・。それに昼飯の時間を一時間として、締めて総所要時間が十時間ということになる」

先刻承知しているのか、二人は黙って頷いた。

「ただ、この五万分の一の地図に入れた所要時間は、何時も使っているガイドブックから拾って書き写したものだ。冬山時間でないことを考慮すれば、プラス一時間を加えるとして、総計で十一時間かかることになる。とすれば、明朝は日の出と伴に出発した方がいいな。いや、それではちょっと遅いか。となると、それより前に出発する必要があるな」

「日没までに戻ってくるとすりゃ、そう言うことになるな」

佐久間の結論に阿部が応えた。また佐久間が問う。

「すると、今頃の日の出と言うと何時だ?」

阿部が応える。

「そうさな、今は真冬だぜ。一番日が短いんじゃねえか。だとすれば、日の出は午前六時過ぎじゃねえか。まあ、そうだな。そのころ出発するとなれば、十一時間かかるとしても、戻ってくるのが午後五時になる。日没が四時過ぎだから、小屋に着く頃は真っ暗になっている勘定だ」

「そう言うことになるな。遅く出れば出るほど帰りが遅くなるな。まあ、出発と同時にヘッドランプを装着すれば歩けないこともない。朝はこの時間に出ても、行者小屋に着くころには明るくなる。問題は帰りだ。おそらく、日没としては硫黄岳の下山途中ぐらいから陽が沈み始めるだろう」

佐久間が推測した。

「それじゃ、明日は日の出と伴に出発するか。さもなくば、日の出前の空が白みかけてきた頃に出発した方がいいかも知れんな」

すかさず村越が提案した。阿部が付け加える。

「そうだな。それじゃ、とりあえず午前六時出発とするか。それで計算すると、七時に行者小屋、八時に中岳コル手前で、九時滑落停止の訓練終了・・・伝々、ということで所要時間十一時間とすれば、順調に行って帰還は夕方五時だ」

「そうだな。夕方と言うより、日没と言った方がいい。まあ、明朝の準備次第で、なるべく早めに出掛けようぜ。午前六時出発というのは目安ということにして、ヘッドランプ使用し陽の出前出発としておこう」

佐久間がコース順に所要時間を列挙説明し、さらに付け加え、鉱泉小屋に戻る頃の時間と早朝の出発時間を整理し結論づけた。

すると、村越が推測する。

「山の陽の落ちるのは早いから、ここに帰ってくる頃には、日が沈んで暗くなっているぞ。ヘッドランプを使うというが、おそらく赤岩の頭を過ぎた辺りから陽が落ちて暗くなる。樹林帯のジグザグ登降だ。そいつはちょっと危険だな。万が一、途中で見通しが悪く木の古株に足をとられ捻挫して動けなくなり、時間でも食ったひにゃえらいことになる。如何する・・・?」

「そうだな。たしかに、予備時間を持っていない。途中でのアクシデントは計算に入れてないな。冬山だ、何があるか分からん。稜線で強風にあったら、それこそ所要時間どころではなくなる。大幅に時間を食う縦走となれば、稜線行程が結構あるから、雪風との戦いになる。この前のこともあるし、焦りは禁物だ。だとすれば、ここのところは、もう一度行程と所要時間との組み合わせを再検討せねばなるまい」

佐久間が真顔で応えた。すると、阿部が応じる。

「そうだ。それじゃ、中岳コル近くの斜面での滑落停止訓練を短縮して三十分ぐらいにしよう。それと、昼飯の時間も三十分短縮だ。そうすれば、一応、午後四時には帰れるんじゃないか?」

簡単に結ぶと、佐久間が疑問を呈する。

「ううん・・・、そうなるか。でも、斜面での訓練を短縮するのはな・・・。やはり、村越のこともあるし。削るわけには行かないんじゃねえか。俺らだって最近というか、あん時以来やってないんだぜ」

「たしかに俺だって、万が一、落ちた場合、ピッケルを上手く使って、咄嗟に出来るか自信がねえな」

阿部が不安を漏らした。

「おい、おい、俺だって。よしてくれ、前のように落ちるわけにはいかねえ。いくら経験したといえど、もう身体が忘れちまってるよ!」

弁解するように村越が慌てた。

「そうだな。それじゃ、コル手前での訓練は納得するまでやろう。ただ、だらだらやるんじゃなくて、一回一回真剣に取り組もうぜ。それで各自が納得できた時点で終了する。それで如何だ。但し、最長一時間だ。

そしてさらに、昼飯の時間を手早く食って三十分繰り上げる。それに出来れば、訓練を中身の濃いものとし短めにする。そして各所での休憩を幾分ちぢめる。それらによって一時間ぐらいは余裕を持たせる。こんなもんで如何だ?」

佐久間が賛同を求めた。

「ああ、そう言うことにしようや」

二人が納得し応えた。更に佐久間が説明する。

「それに、出発の午前六時は目安ということで、出発準備を短時間で終わらせ、陽が昇る前でも出られたら出ようぜ。早く出ればそれだけ繰り上げて行ける。そのためには今夜のうちに、大方の準備を整えておく」

「おお、分かった。それがいい。そうしておけば早く出発できるしな。そうなれば時間的に若干の余裕が生まれるぜ。とにかく朝暗くてもヘッドランプ使えばいいんだから。幸い行者小屋までの行程は、岩道といっても比較的安全なところだし、暗くてもヘッドランプと雪明りで大丈夫だ」

村越が応じ、佐久間が続ける。

「まあ、いずれにしても。時間ばかり気にせず、充分注意して焦らないことだ。それによ、天候の状態だってあるし、崩れるようであれば縦走は無理だ。それが朝からの場合もあるし、途中であってもその時は諦めるしかないぜ」

「ああ、その辺は何時ものことだ。分かってら。決して欲張ってはいけないことぐらい、俺らは随分経験しているからな」

阿部が了解した。佐久間が念を押す。

「今のところ、明日の天気予報では晴れるから、その点は心配ない。だけど晴れたら晴れたで、稜線は吹き上げる風が強くなる。それだけは、しっかり頭に叩き込んでおかねえとよ」

「そうだ、前回のような轍を踏みたくねえからな」

村越が慎重な顔で頷いた。そして総括するように注意する。

「明日の行程としては、大体こんなところだ。それで後は、装備の点検だ。忘れ物はないか、今一度、チェックしておこうぜ」

佐久間が自分のキスリングザックを手繰り寄せ促した。すると、村越がそれに反応する。

「その辺は大丈夫だ。何時ものように、揃えてきたからよ。大体、この期に及んで忘れて来たじゃすまねえ。厳冬期の冬山だぜ、そんな手抜かりはないはずだ」

「まあ、それもそうだ。夏山と違って、それこそ忘れ物すればものによっては命取りになりかねねえ。皆、自宅を出る前に慎重に点検してきたよ。俺なんかリストを作り、何度も確認したから。その辺は間違いない」

阿部が、これまた自信有り気にほざいた。

「そうか、それなら、手抜かりないな。そういう俺も、忘れ物しちゃいけねえと何度も点検したけどな。万が一、忘れ物してみろ、お前らに何ていわれるか知れたもんじゃねえぜ。ここぞとばかりに、けちょんけちょんに貶される」

佐久間が笑い嘯いた。

「それじゃ、もう一度、明日必要な装備を見直しておこうぜ。各自、ザックから取り出しやろう」

自身に聞かせるように、佐久間がキスリングの中身を点検し出した。両名も同時に確認する。

「ええと、ヘッドランプあるな。それと、アイゼンは今日の朝美濃戸口で確認したし、ロングスパッツの替えは大丈夫だ。あとなんだっけな・・・、そうだ、忘れちゃならねえ。予備乾電池があったっけかな。それとだ、これとこれとこれ。うむ、よしっ、これでいい。点検終わり!」

村越が独り言のように発した。そして、まだ点検中の阿部を、覗き込むようにして尋ねる。

「如何だ、阿部。忘れ物ないか?」

するとちょうど終わったのか、顔を上げ答える。

「おお、大丈夫だ。完璧だぜ。まあ、多少要らぬものまで持って来たが、必要になるかも知れんし、よしとするか。さて、俺も登攀ザックに入れておこう。明日の朝やるんじゃ手間がかかるし、慌てて忘れ物したら大変だ」

「俺の方も大丈夫だ」

続いて佐久間が告げた。

「それじゃ、三人とも装備の方は揃っているな。やっぱり、俺らって大したもんだ。すべてのことに段取りよくやるし、手馴れているもんな」

村越が誇張した。

「それじゃ、明日の縦走行程と所要時間、それに装備の方も確認出来た。まあ、時間の方も、決して余裕があるわけじゃないが、そうかと言って無理は禁物だ。山の天気は逐一変わる。その時々の状況によっては、途中で縦走を断念せにゃならん時もある。それに、我々の体調だ。これは明日にならなきゃ分からんが、今のところは皆、すこぶる元気なんで大丈夫と思うが、もし、途中で具合が悪くなったら遠慮せず、早い段階で相談しようじゃないか」

「そうだな、この点は互いに共通認識としようぜ。要所によって下山ルートがあるから、決して無理しないことだ。万が一、体調不良者が出たら、その時はスパッと切り上げて、また後日、チャレンジすりゃいいんだからよ」

阿部が添えた。

「そうだな、そうしようぜ。未練たらしくしない。どんなところであろうと縦走を止め、即、下山する。我ら仲間内では、遠慮は御法度だ!」

佐久間が結ぶ。すると、

「そうだ。一緒の山行は、今回が初めてじゃない。何度も登った山仲間だ。互いに遠慮はよそうぜ!」

幾分興奮気味に告げた。すると、

「村越、お前がそんなこと言うのは珍しいな。何時も、気ままに自分本位な行動しているくせに。こりゃ、明日の天気危ねえな!」

戯言のように阿部が茶化す。

「なにを言う。俺は何時も陰日向から、お前らのことを思いやって行動してるんだ。それをなんだ。俺のことが羨ましいもんだから、そうやって妬むんだからよ」

村越が反論した。

「おお、そうか。それは他の誰かと間違えたかな?」

阿部が惚けた。

「そうだろう、今回の山行仲間じゃなくて、そんな協調性のねえことをするのは、他人に決まってら!」

村越が息巻いた。

佐久間も阿部も村越の言い回しに、にたつき軽く受け流していた。





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