おっとそれは禁句だぜっ
今日の夕食に何本かの焼き鳥がでてきた。
噛みしめるとタレの香りとちょっと焦げた香ばしさが鼻に抜ける。そのあと口の中に広がるジューシーな肉汁がボクの口腔内に幸福をばら撒いた。
この幸せな一口に誘われて、学生の頃に友だちといった焼き鳥屋さんでの事件を思い出した。
その日は、煩わしい授業も一通り終わって、もうまもなく夏休みという頃であった。
雑事のからの解放を
今思えばイタリアンとかでウェーイしたり、創作料理とかでシャレオツかましたり、もっと若者ムーブかませばいいのにとは思うが、逆に身の丈にあっていたのかもしれない。
最初は定番のモモやねぎま、かわ、レバーなどをつまみにビールや焼酎を飲んでいたのだ。これがとても美味しいお店だったこともあって、凄い進むのだ。
ぱくぱく、ごくごく。ぱくぱく、ごくごく。ぱくぱく、ごくごく。
うん、欲望のままに気の向くままに、いただいたわけです。うん、若かったし、まぁあるあるだよね。
基本的にボクはストッパーだったりツッコミに回る側ではあるので、飲んでいても俯瞰している傾向がつよいのだけれど、この日はそうそうにブレーキが壊れていた。
いい感じでアルコールに脳幹をやられつつあったメンバーは、注文を取りに来た店員さんにこういったのだ。
「この焼鳥のメニューの左側のやつを上から下まで全部を人数分」
くっ、大人なら一度はやってみたい暴挙だ。場は一瞬で沸騰した。しかも左側は定番のものが並んでいて、もうすでに美味しいというのが実証されていたゾーンだから尚更だ。
実際に、焼き上がるたびに運ばれてくる焼き鳥たちは吸い込まれるようにボクたちのお腹の中に収まっていった。もちろん、更にアルコールを浴びながらだ。
最後の品を持ってきた店員さんを捕まえて、別の誰かがいったのだ。もちろん止めるやつはいない。
「この右側のやつを上から下まで全部を人数分」
こ、こいつやりやがった! そこにシビれる憧れぬ。でもこの後に起こる事態をだれも想像していなかったのだ。でてくるわでてくるわ。トンデモ系というかちょっとマニアックすぎる焼き鳥が。
マツバ。鳥の鎖骨。
縁側。砂肝のはしっこ。
てっぽう。雄鶏の生殖器。
きんかん。卵巣。
背肝。腎臓。
でも、残すのは鳥にも調理してくれた人にも申し訳ないので食べましたとも。
最後に出てきたのは、ひなという、小さな鳥の形をしたなにか。
ということで、上から全部はやってはいけない。禁止ワードとなりました。
ちなみに、会計はワリカンで一人1万5千円という、安めのコース料理も食えるような値段だったことも印象深い。何食ったんだ僕たち。
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