チャリって危ないんだよ?

 自転車。ケッタ。ちゃり、ちゃりんこ。


 なんで、ちゃりんこというのかに付いては諸説あるみたいで、判然としないので説明は避けるけど。なんか響きが可愛いとだけは言える。すき。


 そんな生活していく上であると便利な乗り物。たぶん多くの人が触ったこともあるので、エピソードはみんな持っていそうである。


 この不安定でいて便利で爽快な乗り物の自転車について、毎度バカバカしい話ですが一席いかがだろうか。


 そう、あれは……十年ほどまえじゃったろうか。仕事も終わり家路を急いでいたときじゃった。


 その時のボクはスポーツサイクルにハマっていて、約二〇キロメートルを自転車で往復するのに勤しんでいたのだ。


 その日はなぜか疲れが抜けなくていつもよりゆっくり目でペダルをシャカシャカ回していたんだ。広い幹線道路の路肩をせっせとね。


 そして、その時は不意に訪れた。右足がつったのだ。言いようのない痛みに襲われたボクはガードレールや植え込みの切れ目を探すが、それは遥か彼方だ。


 ないものは仕方ないので、苦悶の表情を浮かべながら左足だけでなんとか前進しつつ退避を図ろうとしたのだった。


 しかして破綻はすぐに訪れた。……反対の脚もつるという愉快なカタチで。ぼくは植え込みの草のない地面を見つけ、そこにそっと倒れ込んだのだ。


 土と夜の匂いがした。

 夏の暑い日。

 もうすぐテッペンだった。


 脚は車で言うところのエンジンにあたるので、使えなくては走れない。つまりポンコツってことだよね。


 路肩に座り込んで、回復するのを待つこと二時間ほど、客観的に自分を観察すると面白い以外の言葉がでてこず、夜半に路肩で肩を揺すって嗤う人が目撃されたことでしょう。おまわりさーん。


 そうそう、おまわりさんで思い出した。また別の話になるけれども。借りた電動アシスト付き自転車にのった時のあの感動と屈辱も忘れない。


 電アシちゃりは基本凄い重い。その重量がゆえに走りが安定するのだけれど、駐輪場をだしたりするときは押して移動させるわけで、乗った直後に立ち転けしました。てへっ。


 転んだ拍子に鉄の門扉に頭から突っ込んで流血沙汰になって人生初の救急車での搬送をくらったまでがワンセット。救急車に通報されたときに警察官もくるんだね。知らなかったよ。


 おまわりさんに立ち転けの経緯を説明する情けなさは筆舌に尽くしがたいよ。


「どうしましたか?」

「乗ったらコケました」

「誰かに押されたとかはないですか?」

「見事な立ち転けです」


 このように、自転車というのは羞恥心への刺激を伴うことがままあるので、ご注意されたしということで結ばせてもらおう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る