震える一文
何気なく手にとった書籍の書き出しの一文に魂まで持っていかれそうになるときがある。
そこから作品世界に没入の果てに奥付にたどりついてよくやく、本日やらなくてはならないものに、なにひとつ手を付けてないことに気がつくといったことがある。たまにある。夕日の中で困惑する。
たった一行、されど一行。
作品の文中に凄い好きな表現を見つけてしまうことがある。
ほんの一部分、非常に短いセンテンスに撃沈させられる瞬間だ。こうゆうものに会えると、ほんとに読んでよかったと思える。
ちなみに最近ではそのページをスマホで撮影してこっそりとたまに眺めてはニヤニヤしてしまうまでがセットになっている。
直喩、暗喩に限らず比喩表現と情景描写に心を震わせられることがおおい。
その言葉の羅列を目にしたとき。窒息寸前、まるで水の中から這い上がるために腕をかき続けてしまうような、どうしようもない焦燥、なにかをやらずには居られない衝動に呼吸さえ忘れてしまう瞬間が確かにあるのだ。
面白い作品を知った時のありようもそうだ。それが僕の中に沈殿していく泥のように沁みこんできて離れない。
ぱっと見は澄んでいるようでいて限りなく濁っている、言いようもなく嬉しいのに気持ち悪さを抱く。
でも幾つになっても落としどころを見つけることができない。
薄暗い部屋の中でなんとなく立ち上がってちょっとぼんやりして、軽いため息と共に再び椅子に腰をおろす。
このザワザワとして落ち着かない心持と逸っているそれに、浮かび上がらないメンタルを、さしてクッションも利かない椅子が受け止めてくれるはずもないとわかっているのにだ。
ため息ばかりがでるのだ。
ボクにだって伝えたい気持ちはあるのに、それが上手く表現できないもどかしさみたいなものがいつだってある。
だからこそ、そう、だからこそ他人の作り出す小説の一文だったり音楽の歌詞に撃ちぬかれる。
そこには確かに求めていた言葉が呆気ないほどに完全にあって、悔しくなる、それに焦がれる。焼け死にそうになる。
でもそんな、一文に出会えるかもって思うといても立っていられなくなって、本に会いに行ってしまうのだ。
家にある多くの本たちも大好きだけど、まだ見ぬ君たちに会いに行きたのだ!
すごい浮気がちな人の発言のようだが言い訳はすまい。ボクは震える一文に会いたいのだ。
「ねぇ、気がついてる? いま、あなたの後ろから見てるから……ねっ」
誰もいないはずの部屋。振り返った先には。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます