ミイラになれないミイラ取り

 ミイラは生まれたときからミイラだったわけではないのですよ。


 たぶん生前はしっかりと保湿されてしっとり潤いお肌の美人さんだったかもなんですからね。


 また、そもそもの話になってしまうのですが、ミイラを取りに行こうなんて酔狂な人は、ほとんどサイコパスだから。


 大体あの全身を隙間なく巻いているちょっと黄色っぽく薄汚れた包帯は、誰が巻くの?


 包帯は持参するのかな。ということでミイラになれないということは雑に証明したいわけです……暴論。


 余談だけど、漢字だと木乃伊ミイラなんて書いたりもするよね。


 漢字にすると日本のホラーのように陰湿で昏い印象になり、また恐ろしさの方向が変わる気もする。


 さて、話は変わりましてランチタイムである。


 ボクの通っている仕事先の休憩室では、お昼時になると自宅より持参した愛情のこもったお弁当を食べたり、コンビニ関係者の金銭を介した愛情のこもったお弁当を食べたり、カップラーメンに熱く乾いたお湯を注ぐ人たちなどを観測することができる。


 どれが良いとか悪いとかはないのだけれども、ある日のことであった。


 窓際のカウンター席に腰を落ち着けた女性が暴力的な香りを漂わせてカレーめんを食していた。


 ひと席の間隔をあけてその隣に腰を落ち着けたちょっとお腹のでたおじさんは、やはりカレーめんを食していた。


 まぁふたりならそんなこともたまにはあるのかなと思わなくもないけれどその隣でもカレーめんを食べる人物が確かにいた。


 おい、そこに並ぶテロリストどもめ! お前らの罪を数えろ! いいか、三だ、三連鎖なのだぞ。


 もうカレーの口になっちゃうんだよ! いい匂いだから。


 もう嗅覚を介して魔改造されちゃったボクは足早に会社の売店に脚を運ぶしかないじゃないか。


 売店に近づくとペヤング作ってるヤツがいるじゃん……ここはテロ大国かよ。


 もうばよえーんってなるぐらい連鎖してるじゃん。


 ところで売店のカレーめん売り切れじゃん。


 テロリストも生まれつきテロリストだったわけではない。


 でもひとりのテロリストは多くの同胞を生んでしまう危険性を孕んでいるのだ。


 幸いにしてボクはミイラにもテロリストにもなれなかったのだが……その理由はつまり包帯かれーめん巻いて売ってくれる人がいなかっただけなのだ。


 ただまぁ、家に帰って、めっちゃカレーめんした。


 上記を踏まえたうえでの結論としてはカレーめんを食べたボクはテロリストでサイコパスってことになりそうな気がするんだけれど、気のせいかな、木乃せ伊かな?

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