第14話
あー、エスト・モリスねー有名だよねー。俺じゃん。まんま俺じゃん。俺って、そこまで有名になってたのか!? まさか授業に出る日が来るとは……。
「突然だが、あの大きな戦争には、五つの勢力が参戦したと言われている。」
ほうほう。確かにそうだったな。
「アルカナ王国、帝国ハルシオン、光の魔王そして、リーン・ブルー、またの名を勇者緋色のパーティ、
あー、思い出したら腹立ってきた。ラファーガめ、逃げおって〜。
「しかしおれは、もう一つの力が動いていたと読んでいる。」
なに!? まだいたのか! 全然そんな気はしなかったけどなぁ。
「話は変わるが、エスト・モリス、タキオン・ペネトレイト、マイム・アクアのパーティは、様々な事件を起こしているよな。何がある。」
「はーい。」
ミユが手を挙げた。お、なんだ。正解かどうか、俺が聞いてやろう。
「ラファーガ・アダマントとの大規模な戦闘や、第五級犯罪者との小競り合い!」
見事! でも、あれは小競り合いじゃないな。死ぬかと思ったもん。寧ろ一回死んだ気がするし。
「正解だ。しかし、それよりも大きな事件を起こしている。だが、知らないのも無理はない。それは仕事上の都合で言えないことになっていたが、今日解禁された。」
ん? 仕事上の都合? 他になんかあったっけ……。
「エスト達は、魔王の一角を倒した。」
それだ! やっぱり居たことはバレてたのか。辺りが騒がしくなる。そりゃそうだ。俺みたいなのが魔王を倒したんだもんな。
「その際、護国軍は約五万の兵をその場に派遣していた。戦争に参戦する意志を示していた魔王に、危機感を感じたのだろう。」
止めようとしていただけなんだけどな……。可哀想に。
「そして五万の兵は全滅、魔王は死んだ。いいか、歴史は暗記ではない。歴史という、自らの知らない暗闇を模索することで、見えてくる事実もある。さぁ、お前らは何を考える。どうする。では、時間を取ろう。立ち上がって話してもいい。」
痺れた。めっちゃいいこと言うじゃん。辺りが騒々しくなる。
「ねぇ、アオちゃんはどう思うの?」
アヤカが話しかけてきた。うん……。正体がバレないように……難しいぞ。
「えっと……。」
「あたしはね。喧嘩しちゃったと思う。」
その発想いいな。俺の心が救われるよ、うん。
「終わりだ。」
早! もうちょっと時間とれよ。
「偶然にも目があったアオに問おう。お前はどう考える。」
なっ……。よりによって俺に当ておって……!
「え、えと……。偶然戦うことになってしまって、倒した結果、魔王の意志を継いだと思います。」
やべー! 事実をそのまま言ってしまったー!
しかし、彼の反応は俺の予想と違った。
「ふっ、かなりおれの好きなパターンだ。ちなみにおれは、戦争に参戦しようとしていた勢力を潰すことで、アルカナ王国に宣戦布告した。……と考えた。」
あれれれれれれれ? むしろ好印象だぞ? というより、この教師から見る俺ってどんな悪者だよ。
「そこから考えると、エスト達はその戦争に陰ながら参戦していたかもしれない。」
それは間違ってないな。やっぱりすごいや。
「しかし、魔王を討伐する少し前から、奴らは消息を断っていた。ここばかりは謎だ。」
教師はトランプの束を取り出し、教卓の上に広げる。その中から一枚を取った。
「唯一言えることは、奴らはこの日常にも紛れ込んでいるかもしれないということだ。」
その一枚は、『
怖。的を得ているじゃねぇか! いつかバレそうでめっちゃ怖い。
「今日はここまで、次の授業は体育館で特別講演だ。遅れるなよ。」
その教師は、教室を出ていった。途端に同級生達が立ち上がり、廊下に出る。
「おお、
「今日は、アルカナ王国の王家直属の道化師が来るんだよ。今日来るなんて、ラッキーだね。」
ふえ〜。中学生が興味を持つってことは、よっぽどなんだろうな〜。
俺も、案内してもらいながら体育館に向かった。
体育館に入る。既に大勢の生徒が待機していた。俺も必死に見ようとするが、やはり中学生の身長は高い。背伸びをしてもさっぱり見えない。
「さぁ、アルカナ王国よりはるばるお越しいただいた、フェラットさんです!」
始まってしまったー! ま、まあいい。俺は大人だからな、うん。
歓声が聞こえてきた。やっぱり気になる。ジャンプをしても見えない。くっそー、気になるー! うっすらと、トランプが宙を舞っているのが見えた。スキルかもしれない。そしたら、なぜこんなに興奮しているのだろうか。
一瞬立ち眩みがした。ガスのような、見えないものが空気中にある気がする。しかし、立ち眩みを起こしたのは俺だけのようであった。
丁度その時、音を立て、体育館の扉が大きく開く。そこには、武装した集団がいた。
「アルカナ王国、反対!」
うおっ、過激派的なやつか? 残念、最後尾―――――お前らのすぐ近くには俺がいる。雑魚ばかりだと思うんじゃねぇぞ。
退屈してたんだ。
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