第5話
おっ、タキオンだ。そして戦っているのは確か……剣豪なんとかだな。やっている事が次元違いすぎる。
俺は戦場の中でも最も激しい場所に付き、様子を見ている。それより、さっきから背中がなんか暑い。
「グルルル。」
ん? 俺とハーミットはほぼ同時に振り返る。え、これって……。
「「ドラゴンだぁぁぁ!」」
「グァァァ!」
俺とハーミットは全速力で逃げ回る。こんなデカイドラゴン! しかも数体! 勝てっこないだろぉぉぉ。
「ハ、ハーミット! ど、どうするこれ!」
「どうしようも何も! 君が倒してよ!」
いや無理無理無理無理! 確かに大分強くなったけど! こんなんまで倒せるとは言ってないからな!
あ、でも待てよ。なんか言われたらできるような気がしてきたかも。それに、ハーミットにはあそこにいる変な科学者を倒してもらえればいいか。
「よーし、ハーミット! お前はあそこのよくわからん科学者を頼んだ! 俺はこっちやるから!」
「え、あ、分かった!」
流石、物分りが良くて助かる。
「悪いけど、君が思うほどナメられる相手じゃないと思うよ、ぼくは。」
大量に湧いているドラゴンの内の一体から、人影が飛び降りた。
まさに魔法使いのような帽子とローブを着こなした少女が現れる。手には虹色に輝く宝石が上につけられている、杖を持っていた。
「よく考えたら、ただの大きなトカゲを出しているだけじゃないか。すぐに切り裂いてやるよ。」
「ナメ過ぎだよ。召喚系スキルには他のスキルには無い、強みがあるのにさ。」
強み? 強みってなんだ? あのマイムがやってた装備みたいなやつか?
すると、その魔法使いみたいな少女は、こう言った。
「教えてあげるよ。《キングアーマー》」
次の瞬間、少女だけでなく、ドラゴン達までもが、鎧に包まれた。なるほど、召喚したやつにも効果が出るのか。
「やっとわかったでしょ。降参なら今のうちだよ。」
俺は剣に結界を纏わせる。もう、迷わない。
「あまり頭が良くないもんで、見ただけじゃわからないな。」
「そう、じゃあ身体にも叩き込んであげる。」
ドラゴンが次々に此方へ切り裂いてくる。それをバックステップで躱し、すかさず少女へと突っ込む。
しかし、躱された。
「ふーん、強いね。名乗る価値ぐらいありそう。ラーリア・ルピナス、覚えといてね。」
俺が振るう剣を全て杖で受け止められる。杖には結界が纏わされていた。
「反結界物質に結界を纏わせてるのかぁ。ちょっと厄介だなぁ。」
背後にドラゴンの爪が迫り、間一髪でそれを躱す。
くそっ、こいつ……めっちゃ余裕じゃねぇか! ここまで迫って攻撃しているのに……緊張の一つも見えない!
「君にはさ、『夢』ってあるの?」
「夢?」
急によくわからんこと言い出したぞ。宗教の話に行かなければいいけど。
「そっか、護国軍でも大将以上じゃなきゃ分からないか。」
ドラゴンの猛攻を躱す。炎とか、冷気まで吐いてきやがる。厄介だ。
「ぼくたちは、いろんなところを冒険しているからね。色んなことを知っているんだ。全部を教えるとつまらないし……一つ教えてあげるよ。秘密だからね。」
ラーリアは目にも止まらぬ速さで、俺に近づき、囁いた。
「――――――。」
しっかりと聴き取れた。直ぐに、激しい頭痛が俺を襲う。何か大切な事を忘れているような、そんな気がした。
「まさか……そんなわけ、無いよね?」
膝を叩く。こんな痛みに負けている場合じゃない!
『駄目だ。今はまだ、その時じゃない。』
剣を今持てる全ての力で振るう。今度は素手で止められた。
「やめておいたほうがいいよ。僕と君じゃあ、強さの格が天と地の様に違う。」
素早い身のこなしで押さえつけられた。ここまでか。
一方、ハーミットは、非常に苦戦していた。
「ふぁっふぃっふぇっ、新しい薬はどうだ。身体が鈍くて動きづらいだろう。」
「効果てきめんだよ。それと笑い方面白いね。」
ハーミットは弓を引絞る。この老科学者の薬は足をふらつかせ、矢を当てづらくさせてくる。それでもハーミットの弓の腕は半端ではなかったが、避けられてしまう。
「丁度暇なので、一つ話をしよう。申し遅れた、ヒストラー・ドタキャだ。」
ハーミットは油断も臆も見せず、矢を放ち続ける。
「儂は科学者であるが、歴史も科学している。」
難なくハーミットの矢を躱し、机の上で薬を作りながら話している。
「様々な土地を旅し、様々なことを知った。その旅した土地には、必ず一つの書物があった。」
ヒストラーはフラスコに液体を一粒垂らした。たちまち、フラスコの色が紫色へと変わる。
「その書物は一つに繋がっていた。そして、ここからは飽くまでも仮説であるが……。」
紫色に変色したフラスコに一滴、水を垂らした。すると、フラスコの色は元の透明に戻り、代わりにフラスコの中に紙が現れた。
ヒストラーはそれに呪文の様なものを書き込む。
「勇者、そして魔王。この称号は、『生命の目的地』に辿り着く為の条件となる。そうであろう? ハーミット君――――いや、ハーミット様。」
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