第3話

 まるで会社の上司、いや社長に睨まれている様な恐怖を感じ、直ぐに俺は立ち上がる。


「なかなかやるね。」


 催眠術か……。そういうのも仕込んで来るとはな。かなり厄介かもしれない。

 というか第四軍はどうした!? 城を守っているんじゃないのか!


「ああそうだ、ここを囲んでた兵士達は、今、国の中だよ。霧を消して、ツタで中に入ったら、向こうも中に入ってった。大将はさっき国を出たから、順調に進んでいる。」


 なるほど、ペラペラと話してはいるが、向こうではマイム達が戦っているというわけか。


「では、話しはここらにして、続きをしよう。」


 矢のように飛んできたツタを避ける。速く、終わらせろ!


「【変幻自在】ディープドラゴン!」


 背中に龍の翼が生える。上を取って、倒す! 俺は弓を引き絞った。するとツタが高速で伸びてくる。このツタ、こんな伸びるのか!

 しょうがない。俺は翼を折りたたみ、急降下する。力は重さと、速さ。


「鬼神の拳!」


 俺の拳と、ラファーガの結界を纏ったツタがぶつかり―――――俺の結界は破れた。まずい! 折りたたんでいた翼を広げ、再び上空へ向かう。


「こんな作業を、いつまでも続けるつもりか?」


 くっそー、下から蜜柑食べながら見物しやがって。俺もビームとか撃てたらなぁ。

 ツタを避けながら作戦を練る。すると辺りが眩く光った。




 その頃王国では、『正義セイギツドヤカタ』の信者たちで溢れかえっていた。


「腐れきった王国に、本物の正義を見せてやるんだ!」


 そんなスローガンのもと、アルカナ王国の国民は次々に捕縛されていく。この現状、第四軍では――――。


「あともう少し……あともう少し……。」


 信者達に、捕縛されていた。兵士達は必死に縄を解こうとする中で、一人、余裕すぎる兵士が居た。


「隊長、起きてください。隊長!」


 マイムは、寝ていた。もう既に一部の兵士は呆れている。その時、兵士達が座らされていた地面が隆起した。


「な、なんだ!?」


 そしてそのまま突き上げられ、地面からは大勢の、重い甲冑かっちゅうを来た兵士達が現れる。

 流石にマイムは―――――起きなかった。甲冑を来た兵士達は、爆薬を四方八方に投げ始める。空中に放り出された護国軍の兵士達は、震え上がった。


「あ、あれは帝国ハルシオンの軍! 地面を掘り進めてきたのか!?」


 予想を遥かに超えた策戦。これこそが、帝国ハルシオンの恐ろしさであった。




「攻め続けろ!」


 第三軍は急遽、第一軍と共に戦火を交わしたていた。

 冒険者の中で最強と云われる勇者のパーティ。それはとてつもない強さであった。

 怪光線を放つ勇者、最強と名高い剣豪、ドラゴンを生み出す召喚士、常に場を狂わせる研究者。たった四人、そのたった四人がここまで護国軍を困らせている。加えて帝国ハルシオン。もうなす術がなかった。


「第一級犯罪者四人……。ここまでとは。」


 圧倒的劣勢。流石のタキオンも覚悟を決め、戦場に出ようとしたその時。


「下がってて……下さい。。」


 聞き覚えのある声にタキオンは振り向く、背後の医療所には、怪我を負い、手当てを受けているフェローチェの姿があった。


「隊長が……やられたら、ここも総崩れ。」


 医者の静止も聞かず、フェローチェは震えながら立ち上がる。


「私達の頼みの綱が居なくなったら、何を掴んでいけばいいんですか!」


 フェローチェは倒れた。タキオンはすっと立ち上がる。


「悪いな。だが俺には、お前が……」


 タキオンは槍を持ち、強く握りしめる。右足を前に出した。


「死なない程度に、行く!」




 サーマルは、本気を出していなかった。それでもリーンとは互角だった。リーンは剣、サーマルは素手。それでもサーマルは状況を崩さず、リーンの意識を他へ向けないように戦い続けた。


「なんで、本気を出さない?」

「簡単な事だ。本気を出したら、敵も味方も見境無し。何より、あんたを傷つける訳にはいかなくなってな。」


 リーンの目が更に開く。剣捌きが更に鋭くなった。


「なめられたものだ! ここで倒してやる!」

「それは困るなぁ。なんにせよ、どっちが傷ついても、はいずれ悲しむ。」


 リーンの剣が止まった。サーマルはニヤリと笑う。


「知っているのか……というより、居るのか!? この世界に。」

「あぁ、居る。俺は心が読めるからな。」




 その頃、第四軍は、超上空にいた。


「ちょっと、どうするんですか!? 隊長!」


 マイムはやっと起きた、気持ちよく。


「よーし。この状況から脱却する方法を説明する!」


 兵士達は驚いた。たった今まで寝てた子供が、脱却とか言い出したからだ。

 マイムは、その策戦を兵士たちに伝える。驚いていた声は歓声に変わった。


「流石! 寝てたと思ったら、策戦を練っていたなんて! 隊長なら何処までもついていけます!」


 マイムは誇らしげに頷く。実際、これは適当に考えた策戦だったのだが、褒められたので気分は良かった。


「じゃあ、策戦を開始する! 《霊兵召喚》!」


 霊兵は――――地上に現れた。

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