第33話
入口……どこ? 大量の兵士に隠れ、入口が見えない。
こりゃ参ったな、入れない。
「何をしている。」
昨日見たローブのおっさんが近づいてくる。タキオンが答える。
「いやぁ、審査に来たんですけど、入口が分からなくって。」
ローブの男は建物に指を指した。
「あそこだ。今は人手不足だから面接審査のみとなっている。実力は不問だ。」
まじで? やったぁ。俺たちは人混みを掻き分けて建物の中に入った。
タキオンとマイムは会場が違うのでここで別れ、俺は長い廊下を渡って会場の前まで来た。スッと
「どうぞ、お座りください。」
椅子に座る。凄く緊張するなぁ。
「あなたはこのアルカナ王国をどう思いますか?」
いきなり質問された。
「とても……広く、防衛体制を怠らない国です。」
面接官は頷いて紙に何かを書き込んだ。
「護国軍をどう思いますか?」
「屈強な者が多く、冒険者を捕縛するには充分かと。」
ひえー、怖。これで落ちたらどーしよ。
「最後に、ここの国民をどう思いますか?」
え、もう最後?早すぎないか? まだ三問目だぞ?でも真面目に答えなければ。
「一人一人の力は弱く、脆いですが、それを護らなければならないと思っています。」
面接官は深く頷いた。そして帽子を取る。その顔は笑顔に包まれていた。
「合格です。長年やってきて、貴方のような方を見たことがあります。その方は現在大佐。期待していますよ。」
よし! 合格!
面接室を出て、大広間のソファに座っていると、タキオンとマイムが出てきた。
「無事入れたみたいだな。」
「当然だ。」
そんな会話を交わしていると、声がかかった。
「新入り! 早速だが、近くの森へ向かい、魔物をできるだけ倒してきてくれ!」
早速? もう少し休憩させろよ。内容も曖昧だし……。
だけどまぁ……仕方がないか。
「「「了解!」」」
アルカナ王国を出て、近くの森へ向かう。魔物をできるだけと言ってたから腕試し的な要素もあるのだろうか。というより、先程から森の中から魔物っぽいのがちらちら見えてるけど、こっちには飛び出してこない。
森の外から弓でチクチクやるのもアリだな。
そんなことを思っていると、マイムが森の中に突っ込んでいった。タキオンも。
「ちょ、ちょっと待てよー!」
こういうことに関しては足が速い二人である。息ぴったり。
魔物が二人の方に行って魔物が散ったようで、姿が見えないからどうしようもない、結局俺も森の中に入っていった。
もう少し苦戦すると思っていたが、魔物の弱いこと弱いこと。群れをなして襲ってきたり、罠などもあったが、大抵考えていることが同じなので楽に対処できた。
こんな楽なんだから向こうで終わらせればいいのに。すると目の前にでかいカニがのそっと出てきた。
約三メートル。
カニかぁ……そういえば二十歳になってから食べてないなぁ。て違う!
これは魔物だ! 騙しやがって!俺は剣で斬りかかった。
ガキン!
え、硬っっっっった!こんなカニばさみで切れそうな見た目してるのに硬い! カニがハサミを振り上げる!
しまっ――――
硬いカニのハサミで俺は吹っ飛ばされた。地面に叩きつけられる。
「このカニィ〜。」
この硬さとパンチ、とてもカニとは思えない。立ち上がり、剣を構え直す。
このカニをどうやって食べ……いや、どうやって倒すか。一つあるとすれば目潰しぐらいか?
でも感づかれてまた殴り飛ばされる可能性もある。どうする?
カニは襲ってくる様子がない。どうやらある程度の範囲に入らないと襲ってこないようだ。
なら範囲外から弓で?しかし、この方法は高確率で弾かれる。
なら剣で目潰しが得策か。
なら一つだけアテがある。このサイズの奴の気を反らせるスキルが。
「旨そうなカニだけど、倒さないと怒られるから倒す!」
俺は走り出した。その助走で高く飛び上がる。
「喰らえ! 《
カニは少しだけ身体をのけぞらせた。一瞬でもスキを作れた!
空中で剣を構え、カニの上に降り立つ。素早く目を斬った。
「嘘だろぉ。」
目も硬かった。何そのずるいやつ。他に何処を攻撃しろと?
と、思っていたらカニは俺を振り落として猛スピードで逃げ出した。あ、効いてたんだ。一応。
決して、決して食べたいなどと思ってはいない。俺はスライムが食べられるからあれも食べられるのかなーなんて思っていない。
森を進みながらゴブリンを次々と斬り裂く。こうやって見てみるとちょっと可愛く思えるのだが、向こうから攻撃してくるのだからしょうがない。
途中、宝箱が走ってたり、スライムがタワー状になっているものとか見たが、流石に驚かなかった。
もう何が来ても驚かないぞー! と、思ってたりもしたが、流石にうるうるしている目がついているスライムには流石に躊躇した。
ごめんようるうるスライム……。やばい夢に出そう。
これが夢に出たら間違いなくおかしくなるな。どーしよ。
王国からの終了の合図の鐘の音が、森中に響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます