第32話
靴を脱いで中に上がる。見れば見るほどそっくりだな。
どう考えても偶然じゃないとしか思えない。玄関のすぐ横の見慣れた階段を上がる。
階段を上がった先は、2つの扉があり、俺は左の方へ入った。部屋の中を見渡す。うん、ここは確かに俺の部屋だ。
本棚に内容こそ違うものの、図鑑が詰まっている。公務員試験前のときも、よく寝ずにここで勉強してたっけ。
俺の部屋を出た。右の扉を開ける。やっぱりだ。
ここは確か妹の部屋である。俺がこの家を出たあとでも、あいつは此処にずっといたいっていってたなぁ。
ベッドの周りにぬいぐるみが敷き詰められている。俺が死んだとき、あいつは確か十五歳の中三だったっけ。
俺と違って頭いいから中高一貫大附属に通ってたんだよなぁ。高校受験は心配ないが、寂しい思いをさせているかもしれない。部屋を出て、階段を降りた。
居間ではマイムがすり果実を食べている。
タキオンは台所で何かを炒めていた。
あのタキオンまさか料理もできるのかよ。俺なんかカレー作って、それを食べた試験前の妹が腹壊して怒られたっけ。
それ以来簡単な料理しかしていない。居間にある扉を開き、中へ入った。
ここは確か父さんの書斎だ。父さんは、妹が産まれてからすぐ死んだからあまり親子らしい関係を築けていない。ベッドとデスクの周りをびっしりと本棚が囲っている。
俺の記憶だとよく、
「感情ではなく心を出せ。」
と、言っていた……気がする。意味は分からないけど。
この本の量だし、ある程度読めばこの世界のことも分かるかもしれない。部屋を出ると、タキオンに話しかけられた。
「リョウマメを買ってきてくれ。」
という事で俺はおつかいに行けと言われた。家を出て階段を降りる。
人通りは大分増えてきたな。ちなみに買うマメは青いらしい。
青い豆って……と思ったが美味しいのだろう、たぶん。階段を降りつつ思うことがあるかとすれば、街中に指名手配のポスターが貼ってあることだ。
兵士も国中を歩き回ってるし、万全の警備体制である。 こんなに警備の厳しい国でも早朝は素通りできるんだから、何処にも欠陥はあるもんだな。
そう思いつつ階段を下りていると、一番下の土地に出店のようなものが見えた。あれだな、きっと。階段を駆け下りる。そしてその勢いで店まで走った。
店の前に来る。えーと、青い豆、青い豆……これか!
店に並んでいる青い豆をふた莢取った。会計で代金の500ディムを支払う。
「ありがとうございましたー!」
さて、思ったより早く終わったから散歩でもするかな。当然見るのは町並み……ではなく護国軍の本拠地である。
駆け寄るまでもなく、すごく大きい。この国の建物の中では、宮殿に次ぐ大きさだ。
日本の城のような外観をしていて、辺りにはスーツが徘徊するというなんとも言えない光景になっている。
本部というくらいだから、とんでもない化け物が集っているのだろうか。タキオンより強いやつ……確かにいたけど、あれよりもっと強いのか?
だとしたら凄まじいな。そんな奴が反乱でも起こしたら国が吹き飛びそう。
そんなことを考えていると、本拠地から人が出てきた。慌てて身を潜める。
護国軍の兵士数人と、それらを率いる一人のおっさんが出てきた。おっさんは身の丈程あるローブを着ている。
「例の動きは?」
おっさんは護国軍の諜報部員らしき人と話していた。見つかったら多分捕まるな。にーげよっ。
その後、植物図鑑と魔物図鑑を買って帰宅した。明日には護国軍の入軍審査を受けに行くらしい。
こわ。兜はずせとか言われたらどうしよう。リビングまで来ると夕食が置いてあった。
カレーのような液体が皿に盛り付けてある。それをスプーンですくい、食べてみると……? けっこういける。
カレーみたいな見た目と、味がズレているから若干違和感を感じるけど。味と食感に関してはなんの問題もない。何より元気になった。
下手したらエナジードリンクより効果あるかもしれない。
「今日寝れるのか……?」
なんか……寝れる自信がない。結局全部食べて、なぜかもう食べた後らしい二人の皿も洗った。
とりあえず部屋に戻るか。そう思い、階段を上がる。
するとマイムの部屋が開いていた。そっと中を覗くと、マイムは寝ており、宙にふわふわと浮いていた。
「……。」
元気は出たけどかなり疲れてるな。寝よう、うん。
自分の部屋に戻り、ベッドに寝転んだ。あ、寝れないな、これ。
結局買った図鑑を開き、そのまま徹夜したのだった。
階段を下りる。すると玄関でもう二人が待っていた。
「早くしろ。入軍受付は長くないぞ。」
急いで変装用の服に着替える。そして外に出た。今日は何故か道端に護国軍の兵士が多い。それも強そうなやつ。結構怖い。
見られてるような気がする。今日は何か特別な日なのか?
なんでよりによって大事な日に余計緊張させられるんだよ。と思いつつも道を歩く。
すると本部の建物が見えてきた。あれか、緊張するなぁ。
そして入口も見えてきた。そこにはなんと、大量の兵士が出てきて入口前に並んでいた。
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