第31話
目が覚めた。こんなに気持ちのいい目覚めも久しぶりだ。
タキオンは既に布団から出ているらしく、姿が見当たらない。マイムの方を見ると、マイムはまたすごい寝相である。
頭だけベッドに乗っているが、体は落ちていた。とりあえず布団をかけてそっとしておくことにした。
宿を出る。まだ朝早くなので人通りもまばらだ。その中でも『流し湯』と書かれた場所へ入る。
ここは全身に湯をかけ、汚れを落とす場所らしい。脱衣所で服を脱ぎ、湯をかけた。
足元に流れる湯はかなりどす黒くなっている。
まともに体を綺麗にしてなかったしな。
足元の湯が透明になるまでかけた後、服を着て宿に戻った。するとベッドの横に、1つずつ箱が置かれている。
俺の名前が書かれた箱を開けてみると、一般的な市民が着てそうな服と、顔がすっぽり隠れる兜があった。へー。これで入るのか。
タキオンの箱の中は既に空になっている。俺も着替えておくか。と、着替えたのだが、結構着心地がよい。軽くて、肌触りがよく、動きやすい。変装用とは思えない質の良さだ。
マイムの服は、とりあえずベッドに置いておいた。流石に一人で着れる……ハズ。
タキオンが、なかなかいい眼鏡をかけて帰ってきた。色々必要なものを買ってきたらしい。
「もうすぐ出るぞ。」
「昼じゃないのか?」
確かタキオンは昼って言ってたハズだが……。
「早朝のほうが見張りが弱い。というか素通りできる。」
え、素通り!? 護国軍の本部がある国が、そんなガバガバでいいのか!? とりあえずマイムを起こした。眠い眠い言ってるマイムを着替えさせ、いざ王国。
ギルドを出て、馬宿を出る。草が分けられただけの簡易的な道を進むと、先にはまるで壁のように濃霧があった。そこへ向かって進む。
濃霧の前に来て、中に入った。あたり一面真っ白だ。
すごいな、気を抜くと迷いそう。濃霧のかかった平野を進む。魔物も何も居ないので、少し心細い。
マイムを右手に手を繋ぎ、道なき道を進んでいると、白い空間で輝きを放つ火が見えた。
「あれには近づくな。そばに魔物がいる。」
え! そんな小賢しい手も使うやついるの! 魔物も伊達じゃないな。更に霧の中を進む。
「この辺りは『無の領土』と言われていて、常に濃い霧で覆われている。一説には、冒険者を惑わす為に古代の者たちが作ったと言われているんだぞ。」
ふぇー。勉強になる。でもそんな効果あるのか? 今だってこう進めてるし。
バタッ。
右手が急に重くなった。まさか……。マイムが、寝ていた。
ぬおぉぉぉ。この歩いてる状況で寝るとは、やるなお主。しかしだな、こんなときの為に俺は果実の匂いを染み込ませたハリセンを持っているのだ。そのハリセンを取り出した。
「起きろー!」
マイムの頭に叩きつける。……起きなかった。しょうがないのでマイムを背負う。ちょっと重くなっ……た? 気がする?
成長の証かな。いずれにしても身長はあまり変わってないから運びにくいけど。
途中、「旅のお方ー!」とか、「道案内しますよー」とか声が聞こえたが、あれも魔物らしい。怖い怖い。
渡る濃霧は魔物だらけ、だな。
そうやって進んでいくと、小さな2つの白い光が見えた。そこへ向かう。
すると、石レンガで出来た門が見えた。その門へ向かう。あそこから入るのだろうか。しかし門の先にも霧は広がっていそうである。
門の前に来た。
見張りがいる。しかし、本当に素通りできるな。見張りはいる、が起きていないのだ。
すやすやと眠っている。
そんな門をタキオンは躊躇なく、くぐっていった。俺も続いた。すると霧が急に晴れ――――――そこには巨大な王宮を取り囲むようにして成る城下町があった。すげぇな……ここが、その王国か。
どれほど大きいのか想像もつかない。下手したら日本より大きいかもしれない。
そんな城下町の側には巨大な建物もあった。『護国軍本部』と上には書いてある。
確かにスーツの数も多いな。万全な警備体制というわけか。そして今から此処に潜入するのだ。
しかし、タキオンは全く別の方向へ向かっていた。
「本部には行かなくていいのか?」
タキオンに追いつき、そう尋ねる。
「先に用意されてる家へ向かう。そこに偽の戸籍があるらしいから、それを取りに行く。」
町もすごいけどギルドもすごいな。準備万端じゃねぇか。町の階段を登る。上に行けば行くほど城に近くなり、その分、裕福であるそうだ。
タキオン曰く、俺たちの家はごく一般的な家らしい。普通が一番、か。階段をしばらく登った先にはごく一般的なレンガの家が並んでいた。
そのうちの、階段から見てすぐの右側の家の前に来る。おそらくこれがしばらく住む家だろう。三人が寝泊まりするには充分すぎる大きさだ。
タキオンがどこからともなく取り出した鍵で扉を開け、中に入る。ずれ落ちかけていたマイムを背負い直し、俺も中へ入る。すると、そこには見たことあるような風景があった。……間違いない。
これは、俺が
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