第30話
あわわわ。このヤクザ、やっぱり近頃のヤンキーとかとはちょっと違うなぁ〜。
なんか怖いっていうより圧がすごい。何をしても負ける気がする。
ギルドの中でも、開けた場所で戦うことになった。周りからの圧もすごいけどね。リスットラは交差させた両手に鎌を握り、姿勢を低くしている。
「あのガキ、死んだな。」
「ああ、あの構えを食らって生きれるのは準五級以上ぐらいだろ。」
え、何?そんなやばいのコイツ。とりあえず剣を抜いて、なにかしてきたら受け止める、という戦法で行くか。
こういう時に結界が自由に使えたらいいんだけど、気まぐれなんだよなこれが。
「それでは始める。」
審判はリスットラの同伴者である。
「よーい、スタート!」
剣を構えた。まずは相手の様子を――――
「と言ったら始める。」
「「おい!」」
俺とリスットラと声が重なった。これ、よくあるアレじゃねぇか!
クッソー!リスットラも想定外みたいらしいし……。リスットラは審判の頭を大きく揺すっていた。
「すみません、すみません! では、位置へ。」
体勢を立て直す。調子狂うなぁ。
「よーい。」
リスットラは再び構えを取った。
「スタート!」
腕に力を込める。どんな攻撃でもうけとめる!しかし、リスットラは構えを取ったまま動きを見せなかった。
これは……? 一歩前へ出る。その時、リスットラが消えた。
「こいつも雑魚か。」
背後から声がした。まさか……!背中を切られる。
一瞬で背後に移動したのか……?
「勝者、リスッ――――」
倒れそうになりながらも、足で地を踏みしめる。
「俺はまだ……負けてない!」
辺りがざわついた。
「嘘だろ! あれに耐えたのか!?」
「や、やっぱり俺の見立てどおりだ。」
「こいつってもしかして!」
背後にいるリスットラに向き直る。リスットラは笑った。
「もういい、
騒がしいギルドに凛とした声がした。タキオンが近づき、俺を引きずり出す。
「……おい!」
「まともに休んでないお前が戦っても、負けは見えている。後は俺に任せろ。」
辺りが一層に騒がしくなる。
「あれって本物の級持ち!?」
「マジかよ!?」
「悔しいけど……俺より顔がいい!」
スライムを齧った。
「最初から自分で戦えよ。まぁ、俺はいいけどな。」
リスットラは再び位置についた。
「あそこまで強いと思ってなかったからな。それに先を急ぐんで。」
タキオンも位置につく。目はリスットラのみを捉えていた。獲物を狙う肉食動物のように。
「すぐに終わらせよう。」
ギルドが静かになった。
「そっ、それでは、よーい。」
リスットラが構えを取る中、タキオンはただ立っていた。
「スタート!」
リスットラはタキオンの背後に移動する。
「移動する俺の姿を捉えられないとは、大口を叩い――ッ!」
タキオンがリスットラを高く蹴り上げる。リスットラは空中で体勢を立て直した。
「少しは骨があるようだな! 《空斬》!」
空中から飛んできた斬撃を、タキオンは素手で弾いた。タキオンの手から黒い龍が現れ、リスットラを襲う。リスットラはそれを避け、地面に足をついた途端に、タキオンに腹を殴られていた。
リスットラは倒れ込む。気を失っていた。
タキオンはまっすぐクエスト受注所へ行き、
「これを頼む。」
と、驚く受付の人に笑顔で頼むのだった。
力が戻ってきたので受付へ向かった。周りの人はまだ驚いて動けないようだ。受付へ行くと、どこから来たのか、マイムが驚いたままの受付の人を揺すっていた。
「おい、どうした。早く動け〜。」
俺も突いてみる。時が止まったかのように反応がない。仕方がないので、いつ紛れ込んだかわからない鉄パイプを取り出した。……いや、やめておこう。
次は、マイム用の果物の匂いがついたハリセンを出した。それを振り上げ――――。
パチン!
思いっきり振り下ろした。受付は大きくよろめき、すぐに態勢を立て直す。
「し、失礼、こちらのクエストを受けるのですね?」
受付は、先程タキオンが見ていた張り紙を指した。そこには、
【緊急】アルカナ王国の護国軍本部に紛れ、王国の情報を集めよ!
レジェンド以上必須!
と、書いてあった。そんな無茶な。冒険者だというのに護国軍の本部に忍び込めって、半分捕まりに行くようなもんじゃないか。
まぁでも、報酬大きそうだしいっか。良くないけど。
「ああ、頼む。」
タキオンは快く返事をした。
さて、ギルドを出る前に、やっぱり少し休む必要がある。いつもだったらタキオンが強引に向かわせてくるのだが、今回は変装するための衣装を用意しなければならないようなので、やっと休める。
宿へ行き、荷物を降ろし、まだ幼いマイムを手伝い、ベッドに横になった。こんな風にベッドに横になるのもそこまで久しぶりではないのだが、最近の疲れのせいか一年ぶりにも感じる。
そしてそのまま、眠りへ落ちていった。
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