第27話
結界を剣に纏い、虹色に光らせる。あいつが結界を使えんのか知らないが、取りあえず戦うしかない!
「こんなときに限って……」
マイムは寝ていた。タキオンですらボロボロなのにまさかのノーダメージ。艶々の肌である。一体どうなってんだか。寝る子は育つというがマイムの場合、「寝る子は無敵」なのかもしれない。
「今、ここで、葬ってやろう。」
おっかねぇ〜! 老人は杖を取り出し、結界を纏わせた。老人は、老体とは思えない身のこなしで杖を振るう。
それをとにかく受け止める。
クソッ……! スキルを使うスキがない!
《チャージ》はストックしてあるものの、此処で使っても恐らく躱され無駄打ちに終わるだろうな。
このままだと勝てない! じゃあどうするか。
そう! 俺の勝率を上げるためには仲間が不可欠!タキオンはダウンしているが、薬でなんとか起こす。その前に! マイムを起こさなければ!
未だに無傷のマイムは、タキオンを復活させる為には必要だ。蹴っても殴っても起きないから、タキオンが持っているであろう果実を潰す!
そして匂いでマイムを起こしてやる。もし起きる条件がすり果実に限定されていた場合、ほぼ詰み……! 賭けるしかない!
俺は老人の杖を受け止めつつ、スキを伺う。チャンスは一瞬! 失敗すれば死ぬ! 老人は杖を振るった。来た! 横払い! 辺りの時間がゆっくりと流れるように感じる。絶対に、成功させる!
杖を縦剣で受け止め一歩踏み込んだ。
「おおっ!」
体勢が崩れた!俺は直ぐにタキオンの方へ行き、ポケットを確かめる。あった――――――ってもうこっちに来てるじゃないか!
老人が走り寄る。俺は果実を踏み潰して攻撃を躱した。
「儂の体勢を崩すとは、中々やるようだな。只者ではないと見た。そこの男と違い、実力ではない違う強さがある。」
老人がこちらに向き直る。マイムは起きないのか!?まさか―――――――
「此処でお主を倒し、儂は強くなるとしよう。」
「すり果実ーーーー!!」
老人がそう言ったのとマイムが飛び起きたのは、ほぼ同時であった。
「「!!」」
老人はマイムの方を向く。そりゃあ寝てた奴が無傷で飛び起きたら驚くよな。
だが、勝機が見えた!
「爺さんよ。生憎、俺は弱いからそういう一対一みたいなやつは苦手なんだ。卑怯だと思うかもしれないが、これが、俺の強さだ。」
老人はこちらを見る。そして、笑った。さて、次はマイムだな。
「マイム! この老人を倒したらすり果実を好きなだけやる! だからお前にやった薬の染みたスライムをタキオンに食わせて起こせ!」
マイムの無邪気で澄んだ瞳が更に光り輝く。単純で助かるな。そして再び老人を見る。
さて、タキオンが起きるまで二人を守るか。
「了解! 《霊兵召喚》!」
マイムの声が聞こえた。な、なんてこういう時に気の利くやつなんだ。餌は釣りだけではなく人使いにも大事だな。
霊兵たちが俺の周りを取り囲んだ。あれ、なんか違う。
「ふっふっふ。私はスキルにより寝ている間のレベルアップ効率は1.5倍となる。そして、《霊兵召喚》はレベルアップにより霊兵の戦闘能力の強化と知能が上昇する。つまり! 突っ込むだけの兵士から、少し考える兵士へとなったわけだ!」
なにそれ強い。霊兵たちは老人にゆっくりと近づいていく。
老人は近づいてくる霊兵の一体を叩き潰した。そして2体目を潰そうとしたが、躱された。確実に頭良くなってる!
これならタキオンが起きるまで時間を稼げるぞ!一方マイムはタキオンの腹の上を跳ね回るという奇行に走っていたが、それで起きるならいっか。
「この世は……声の大きい者が生き残り……小さい者は淘汰されてゆく……。」
老人の気配が強くなる。なんだ? これは……
「可笑しいとは、思わないか。《怒り》」
霊兵が崩れ落ちた。何が……起こったんだ?
「お前もだ……。」
老人が杖を振り上げる。まずい!
カキンッ
「そんな事されちゃ困るぜ。」
目の前にはタキオンが立っており、槍で攻撃を防いでいた。
「俺の優秀な仲間だからな。」
起きたのかぁ〜!
タキオンは連続で突きを放つ。老人はそれを避け、飛び上がり上から杖を振り下ろした。
槍の柄で受け流し、着地した老人を――――と、このように人間として明らかに可笑しい戦いが続いているのだ。
強すぎる。これから先こんなんが出てくると思うと俺は明らかに戦力不足……! 俺も置いていかれない程に、強くならなければ!
でも……強いスキルもないし、パワーもないし…… そうだ、俺のステータス!
エスト・モリス
レベル 300
攻撃 400
防御 325
移動 312
精神110
スキル
《チャージ》
・発動時、膝を曲げると1%の確率でパワーが一時2倍になる。(タイミング自由)
・この確率は他のスキルに左右されない。
《粘着性》
《
相変わらず貧弱だなぁ。このままだと勝てないが……
戦闘は工夫次第でいくらでも強くなれるからな。やっぱり抜け穴ってやつはどこにでもあるものだなぁ。
更に、いや、少しでも強くなってやる! これで、確実に、勝つ!
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