第23話

「面倒なことになったな。」

「全く、国の者の血を沢山流しおって次は荒すのか。」


 おお!タキオンとは心強い!

 てかマイム生きてたのか。とゆーかそういう余裕はなくて!白い自立式破壊兵? って言ってたっけ?

 それはどんどん近づいている。


「あれは俺とエストでなんとかする。王女様は霊兵であの水草を全部切れ。重大任務だ、できるか?」


 なるほど! そうすればあのやばい奴の動きも止まるのか! 剣はまだ輝いていた。

 俺はまだ……戦える!


「分かった。だが無理はするな。」


 マイムの問いかけにタキオンは笑う。


「無理するなはこちらが言いたい。」


 タキオンは素早く自立式破壊兵の群れへ向かっていった。俺も負けじと向かう。

 自立式破壊兵はタキオンの存在に気づいたようで、無数の斬撃を繰り出していた。それはタキオンへと真っ直ぐに迫る。

 これはまずい!


「あのラファーガとか言う奴には散々してやられたな。出し惜しみはしねぇぞ!」


 タキオンは今にも当たりそうな斬撃の前に手の平を広げる。

 手で防ぐつもりか!? 無茶だ!そしてタキオンの手に無数の斬撃が当たる。

――――――しかし、タキオンの手……いや、全身は全く傷ついていなかった。


「目的を果たすまでは死ぬわけに行かねぇ! 存分に喰らえ。」


 タキオンの手の平から黒い物質が滝のように出てくる。そしてそれはタキオンの手に繋がったまま、龍の頭の姿に変化した。

 その龍は口を広げる。その口から黒い棒が現れ、多くの自立式破壊兵を消し去った。違う! 棒じゃない!

 あれはあのドラゴンと同じ黒い物質を高速で放出しているのだ。速すぎて棒に見えた。


「ボケっとするな! 予定より早く終わりそうだからお前は王女を護れ!」


 やべ、驚きすぎた。俺は精神獣へ勇敢に向かうマイムの方を向く。

 するとマイムは上から降り注ぐ青い光線を必死に避けていた。マイムに急いで近づく。

 するとマイムは転び、上から降る光線が当たりそうだった。スピードを上げ、間一髪で光線を剣で防ぐ。


「あぶねぇな。急げ!」


 マイムは頷き、今度は真っ直ぐと精神獣の方へ走る。俺は降り注ぐ光線を何度も防いだ。

 そして精神獣の足元までたどり着く。

 すると光線は止み、別のところから光線の音が聞こえ始めた。王都だ!

 王女マイムは霊兵を召喚し、光線を止めるため必死に水草を切る。しかし全く動じず、王都を更地にして遂には王宮をも攻撃し始めた。


「やめろ! やめろ!」


 必死の抵抗、しかし攻撃はやまない。これは本体を叩くしかないか。

 俺は上へと上がっていった。水草でびっしりと覆われた甲羅の上に立つ。


「勘がいいな。」


 ラファーガの足元を中心に水草は生えていた。ここから操っていたのか。

 そうこうしている間も王宮は壊されている。あの国が更地になるのも遠くはない。

 怯えるな。前を向け。

 俺は口を開いた。


「お前みたいな奴は建物だって、命だって壊したいときに好きなだけ壊せる。」

「ほう、何が言いたい。」


 ラファーガは少し興味があるかのように目を細めた。


「お前はあの王国をあっと言う間に直す気も、お前のせいで死んだ人間を生き返らせる気もないだろう。」

「私に出来るわけがない。そもそも出来てもしないな。」


 と、ラファーガは当たり前かのように答える。


「教えてやるよ。」

「……?」


 今、ここで、倒す!

 俺は決意を固め、剣を構えた。


「壊すのが簡単でも、直すのが難しいものがあるんだ!」


 素早く近づき、剣を振り下ろした。ラファーガはそれを知っていたかのように受け止める。


「そうか、ならばこうしよう。私のスキル《植物操作》は使用者のレベルが上がる毎に強くなる。互いに万全の状態で決着をつけよう。」


 そう言うとラファーガは周りに溶け込むように薄くなっていく。駄目だ、今ここで―――


「そうか、そこに居たのか。やっと逢えたね。」


 そうラファーガは言って優しく微笑んだ。予想外の反応に動きが止まる。そして消えた。




 その後ラファーガが消えた時点で精神獣の動きは停まっており、被害は甚大なものとなっている。国民の表情も沈んでいた。そんな中、俺達は王宮に呼び出された。


「私は冒険者を絶対的な悪と考えていたが、少し見直せたな。」


 国王の表情は何処か明るく、暗かった。


「ニ度も助けてもらっておるが、無礼ながら一つ頼み事がある。」


 国王は声を潜め、俺達に近づいてこう囁いた。


「私の娘、マイムを仲間にしてはくれんか?」


 タキオンは笑った。それを求めていたというような表情だ。


「勿論でございます!」

「頼もしいな、あれからも言われたのだ『国民は私を嫌っている。だからあの冒険者と一緒に旅立ちたい。』とな。」


 国王は微笑んだ。とても、嬉しそうに。


「来なさい。マイム。」

「はい!」


 その声と共に階段を駆け下りる音が聞こえたかと思うと、力いっぱいにドアが開いた。

そこには白いシャツにボムトスといういかにも動きやすそうな格好のマイムがいた。


「今日からお前等の仲間となる。よろしく頼むぞ。」


 その表情はどこか無邪気で、嬉しそうだった。

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