第14話
村の人たちを起こさないようにそっと馬から降り、馬を隠した。すると、タキオンが声を潜めて囁いた。
「いいか、もうここからはどこに目があるか分からない。物音を立てるなよ。」
「ああ、分かった。」
姿勢を屈め、タキオンにそっとついていく、この村は俵で家を作っていて、ドアがなかった。ヒヤヒヤするなぁ。
村の中心部らしきところについた。岩レンガを積まれて作られた噴水がある。
「この噴水の水は疲労回復の効果がある。飲みたいが、今は我慢だ。」
噴水を中心に道が4つに分かれていた。1つは今通ってきた道。前にあるそして大きめの家につながる道、右にある通ってきた道と同じような道、そして洞窟につながる道。
洞窟につながる道には穴の上にマークらしきものがあった。丸の中に旗と盾が描かれている。
「あれは護国軍の軍賞だ。あの中に入るぞ。」
いやー緊張するなー。捕まらないといいんだけど。と、中に入る。
すると下へ続く階段があった。ここで護国軍の人と会ったら詰むじゃん。いや、タキオンがいるから大丈夫か。
そっと階段を降り、ドアのない入り口を抜けると、そこは鉄の壁で覆われた途轍もない程の広い空間が広がっていた。
コンテナのような箱があり、無数の護国軍の兵士たち。凄いな、壁に扉が付いてある。
上の方の扉には、独立した階段がついているようだ。俺がいるここはかなり高く、床から10メートル程上にある。
だが、隠れるようなところではない。むしろ丸見えだ。
するとタキオンが引き返しだした。なにか策があるのかとついていくとタキオンはサッと着替え、護国軍の者と同じスーツ姿になった。そして目出し帽を被る。
「これで俺は護国軍密告隊のメンバーと同じ姿になった。お前も被っとけ。」
と、俺も被された。暑苦しい。
だが、タキオンによるとこれだけで堂々と入っていけるようだ。
再び入り、階段を降りる。やっぱり広いなー。コンテナのような箱には格子がついていた。暗くてよく見えないが中を覗く。んー? なんかいるなー?
『ガシャン!』
「うわっ!」
中にいる大柄の男が飛びかかってきた。護国軍の一人が近づいてくる。
「こいつは懸賞金3億のバルストってやつだ。2000人は軽く殺してる。まったく、こんなんが級持ちにならなくて良かったよ。」
ひゃー! おっかねー! そういや級と懸賞金って何が違うんだ? するとタキオンが突いてきた。
「あまり目立つな。」
「悪い悪い。ところで懸賞金と級って何が違うんだ?」
タキオンは屈んで俺に拳骨を入れた。ひどいなぁ。
「ここで聞くなバカ。懸賞金をかけると国が破産するような奴が級だ。」
あ、その割にはちゃんと教えてくれるんだ。タキオンって意外と単純?
するとタキオンはズカズカと進んでいく。もう護国軍の人とは関わりたくないらしい。
コンテナをいくつか通り過ぎ、重々しい扉の前についた。『厳重注意』と書かれたその扉をタキオンは開けようとした。しかし、なかなか開かないようだ。
「おいおい、密告隊の一人がこんなとこで何してんだよ。」
大柄の男が近づいてきた。まずい! 逃げよっ! と思い、走り出した矢先に足を捕まれ転んだ。引きずられる。
「なんだぁ?逃げようってか?そんなの甘――。」
大柄の男と目があった。あれ? 目出し帽取れてる?
「エストだー! エストが侵入したぞー!」
あ、バレた。するとタキオンが大柄の男から俺を強引に引き剥がし、抱えて走り出した。
「追えー!」
護国軍の兵士達がぞろぞろと追いかけてきた。タキオンは重々しい扉を蹴破って、中に入った。いくつもの分岐があるくねくねした細い道を、素早く進んでいく。うっ…。酔いそう。
護国軍の騒がしい声も聞こえなくなっていった。タキオンが俺を降ろす。
「ふぅ、もう大丈夫だ。」
目が回る〜。としばらく目を回したあとにあたりを見てみると、凄い閉鎖的な空間だな。
「これから機密17を取りに行く。」
「機密? なんだそれは。」
「護国軍の中将以上しか見られない極秘の文書だ。俺が冒険者を続けていくためにはなんとしてもあれが必要。」
ふーん、まぁいいや。俺もタキオンがいないと捕まるわけだし。ちょっとふらつきながらタキオンについていく。
……長い。何キロ進んだと思ってるんだよ。新宿から横浜まで行けそうな距離だぞ。
すると、俺は急に止まったタキオンにぶつかった。
「急に止まるなよ〜。」
「これは…結界だな。レベル3の。」
ケッカイ? そういやそんな言葉がフェローチェの時に出てたな。タキオンの目の前には、透明な青い板がある。
「なんだ? そのケッカイってのは。」
「魔法を先祖がより最適化させたものだ。結界は結界で分解しない限りは破れない。結界を衝突させると、より洗練された結界が残る。これは俺と同じレベル3だ。これを張るってことはかなりの代物だな。」
よくわからんがバリアなのかな。タキオンは自らの掌から青い光を出した。それが結界なのだろう。
目の前の結界にそれをそっと当てると、双方の結界は分解され消えていった。俺もできるかなぁ。
「あ、魔物は扱えないらしいぞ。」
くっ…! 言わないでほしかったっ…! 心に大きな傷を負いながらも進む。
すると広い空間に出た。中心には砂岩でできた井戸大の遺跡のようなものがあり、一冊の書物が置かれていた。
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