第15話

 タキオンはゆっくりと書物に近づいていく。 一体何が書かれているのか知りたい!―――が、俺の身長では見れないのである。

この体を呪いたい。

 タキオンがそっと書物に触れ、開く。タキオンは自然と、こう読み上げた。


「この書を必要とせん者よ、汝に力を示せ。」


 その時、書物から神々しい幾多もの小さな光が飛び出した。その光はタキオンの真後ろで形を成し、巨大な人形へと成った。

 と言っても、全身は白く、顔に青い目が1つだけついている。手には大剣と盾があった。

 は剣を振り上げた―――――まずい! タキオンに当たる!

 俺は剣を抜き、振り下ろされる大剣を受け止めた。腕が震え、片膝をつく。なんつー力だよ。

 タキオンはやっと背後に気づき、動き出した。


「悪いな!そのまま耐えてろ!」


 鬼かよ。


「いくぜ!【和光同塵】!」


 ルーン文字にタキオンは囲まれ、に連撃を入れた。

パリン。

 という音がしたと同時に俺は吹き飛ばされた。


「おいおい、嘘だろ。レベル4だと…。」


 痛ってー。レベル4? 結界のことだよな。えーーと。たしかタキオンはレベル3だからタキオンは破れませんと。あれ、まずくね?

 その時、矢が真横に飛んてきた。


「うおっ!!」


 やばいやばいやばいやばい! 逃げなければー!! と振り返る。

 あれ? 入り口は? 入り口がない。俺は目をそらす。いや、疲れてるんだな。最近あまり休めてないし。

 再び見た。やっぱり無い!! あーあーあーあー! 死ぬー! 俺は剣を抜いた。


「死ぬまでの時間延ばしてやる!」


 と言っても勝つ保証はないので、頑張るしかない。タキオンが巨剣に吹き飛ばされる。

 俺は結界を破れない…! だがやってみるしかない!

 俺はタキオンを踏み台にして飛び上がり、頭めがけて斬りかかった。剣を青い結界が受け止める。

 しかしその時、剣を中心に水の波紋のように結界が波たち、結界を破らないまま少しだけ傷をつけれた。なんだこれ。

 もしかしてこの剣凄かったりするのか?と思った矢先、盾で弾かれた。

 クーッ! キクなぁ!

 だけどちょっとだけダメージがあるのは分かった。


「あとは根性あるのみだな。《粘着性》!」


 くっついて壁を素早く登る。そのまま天井を歩いた。弓を構える。

 今はの真上だから当てやすい。矢の代わりに剣を使う。

 そして限界まで引絞り……離した!


「喰らえ!」


 放たれた剣は重く、速く落ちていき、の頭上の結界に触れ、大きな衝撃を与えた。


「よし!」


 だが、まだピンピンである。俺は《粘着質》を解除して剣を回収した。バレないように背後に近づく。

 不意打ち? そんなことはしない。正当な攻撃をするだけだ。

 《粘着質》を発動して結界をよじ登る。

バレないように気をつけつつ頭まで到達した。そして剣を突き立てる。何度も、何度も。

 それに気づいたは、俺を振り落とした。


「一筋縄には行かないな。」


 ―――矢が飛んできた、背後から。その矢は結界に刺さると青く光り、結界を破った。

 振り向くとそこには弓を構えたタキオンがいた。


「レベル4結界……黄昏の矢により破れたり!」


 あれがあったか! さすがタキオンだ!


「このまま押し切るぞ!」


 これはタキオンについていくしかないな!


「おう!」


 俺とタキオンはの方へ駆け出す。その時、息が詰まった。

 そしてすぐに息ができるようになった。なんなんだ?


「くっ!」


 腰に激痛が走る。腰のあたりを見ると綺麗に腰が切られていた。


「なんだこれは!」


 タキオンも同じようだ。スキルか…? 空間に斬撃を発生させる的な…? すぐににが〜い回復薬を取り出し、飲む。傷が癒えるのを感じた。


「タネがさっぱりわかんねぇな! どうする? エスト。」


 タキオンはまだ生き生きしている。


「このまま攻めるっきゃないだろ、タキオン!」


 剣と盾を構えた。やっぱり片手だと重いなー。


「いたぞ!」


 ゾロゾロと音を立ててたくさんのスーツ人間が現れた。

―――――護国軍だ。

 一体どこから入ってきたんだよ。


「マジかよ、ややこしくなるな。」

 

 その時――再び斬撃が繰り出された。「ガハッ」とか「なんだぁ!?」とか言いながら護国軍の兵士たちが倒れていく。

 どうやらこれは全方範囲攻撃のようで、護国軍から離れたところにいる俺たちも攻撃を食らっている。


「クッソ…! 強い!」


 タキオンですら戸惑うような敵だ。こんなの野生でいたら、土地神みたいな感じで崇められていたかもしれない。


「おい護国軍! このままだと準5級ぐらいの奴が来ないと倒せない! ここは俺たちが食い止めてるから上を呼べ! 邪魔だ!」


 タキオンの凄まじい剣幕に押され、護国軍の兵士は「お前らのことなんか信じてないからなー!」とか言いつつ出ていった。ツンデレが多いのかもしれない。


「さーてと、結界は破れたものの、斬撃を滑らせることはできないし、弱ったな〜。」


 カツ、カツ、カツ、カツ。歩く音が聞こえてきた。その音は段々と大きくなっていく。

と、同時に斬撃が繰り出された。

 でも、だんだん仕組みが分かってきたぞ。


「ふーむ。私がここに来ることになるとは。やはり直轄本部の人員を入れるべきだろうか。」


 声がした方へ振り返ると、そこにはスーツをビシッと着込んだ、近所の人から嫌われてそうなおっさんが佇んでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る