第10話
まずい、溶ける。と、この火山灰の地面に入ってから何度思っただろうか。
あの薬を飲まないとこの時点で焼け死ぬらしいが、もう少し和らげる薬はないのか?
くっそー、蛇みたいな緑色の魔物まで追いかけてきやがってー!
あー、なんかないかなー岩陰とか。と、探しているともっと良いものがあるじゃないか!
「池だ!あそこ寄ろうぜタキオン!」
やっとこの暑さから暫し開放される…。ああ。助かった……。
「だめだ。我慢しろ。」
はぁぁぁぁ!?
わけわからないんだが! こんなに汗ぐっしょりで死にそうなのに池見つけて寄らない人間がいるかよこんにゃろう!
「頼むよー。」
「駄目だ。魔物がいる可能性がある。ここで無駄に体力を消耗するのは避けたい。」
えー。倒せばいいじゃんかー!タキオンのケチー!
「一番避けたいのはナーガが水の中に隠れているケースだ。やつの体の鱗は緑の色をしている割によく水に溶け込む。」
なにか見覚えがあるぞ? 俺は後ろを指した。
「あんなのか?」
タキオンは振り向き、すぐに前を向いた。
「そうそう、あれがナーガ。あれは強いんだぜ。あんなんでも。ってはぁぁぁ!?」
タキオンは途中まで意気揚々と解説していたが、ナーガがいることに気づき驚いたらしく、危うく馬から落ちそうになった。
「振り切れ!」
馬の手綱を掴み、最高時速(たぶん)で馬を走らせた。
スライムがいくつか飛んでいったがタキオンは取らせてくれないだろう。残念。
馬は競走馬並みに速かったが、ナーガはそれ以上の速さを出し―――あたりが暗くなった。暗い?いや、黒いのか。タキオンの姿が見える。でも光なくない?
「やられた!
なーがぞーん? 食べられたんだよな? よくわからんが涼しいのでオッケー!
『私から逃げようとは。なかなかの度胸を持っているな。』
目線の先に緑色の鱗を持つ蛇が現れた。
「蛇が喋ったぁぁぁ!」
喋る蛇なんて! ひょっとしてツチノコか!?
『落ち着け。焼き払われたいのか。』
『ピッシャーンゴロゴロゴロ』
という音と共に雷が足元に落ちてきた。
「ぎゃぁぁぁ!」
これはやばい。雷使えるやつって大抵漫画とかでは最強格だったりするからなぁ。
『ドクン、ドクン』
と心臓の音まで聞こえてきやがった。
『交渉をしよう。お前らのうち一人を
文系できないから何言ってるのかわからんが、とにかく死ぬのはわかった。
こういうときは…これだ! 俺は正座し、頭を地面につける。
「誠に、申し訳ございませんでした。」
『謝って済むと思うか!』
あれ? 怒らせた? 日本国では最強の反省と言われる土下座様で? この世界では失礼に値するかもしれない。覚えておこう。
『そんなお前には回避不可能な電流を与えよう。』
上から雨のように水が降り注いだ。何が起こるんだ? この水が電気を帯びている訳じゃあるまいし。
『ゴロゴロゴロ』
あたりが光る。え、これって…。
『ピッシャーン!』
「グッ…!」
痺れる。体が思い通りに動かない。
『終わりだ。』
雹のような氷が降ってくる! 避けきれない!
その時――氷は砕け散り、キラキラと光る氷の欠片と共にタキオンが目の前に現れた。
『しぶといな。』
「ここで死ぬ訳にはいかねぇ。」
タキオンは拳を前に出す。
「お前に死を譲ってやるよ。【和光同塵】」
タキオンの周りをバリアのようにルーン文字(?)が取り囲んだ。
その瞬間タキオンはものすごい速さで敵に近づき、強烈な一撃を入れる。
「お前の技にはタメがあるからそのスキに攻撃を入れれば問題ねぇ。」
タキオンは一瞬のスキもなく打撃を入れ続け、ナーガが動かなくなると蹴りを入れて攻撃をやめた。
……。タキオンやば過ぎだろ…。
すると暗い空間は溶けるようにして消え、あっつーい火山灰の地面に戻った。
「手間取ったな。行くぞ!」
と、タキオンが言ったは良いものの馬が見当たらない。
「しまったぁぁぁ!」
と言ってもどうしようもないので歩くことにした。
「あ…あともう少しだ。」
二人ともヘロヘロで歩いていく。暑い。馬ないと死ぬ!
「それ何回目だよ…。」
俺はバタリと倒れ込んだ。ああ、もうだめ…。
「お前らすげぇなーメラ。」
遂に幻聴まで…。
「なんだ。死にそうじゃないかメラ。俺の家まで連れてくメラ。」
頭に水がかけられた。ああ、最高……
「おい、乗れ。」
目の前にはラクダっぽいヒレのついた生き物に乗ったタキオンと丸い
「乗せてくれぇぇぇ!」
このチャンスを逃すわけにはいかない!
「だから乗れよ。」
あれ? 乗っていいのか? と、俺がラクダっぽいヒレのついた生き物に乗るとその生き物はヒレで風を受けるようにして全速力で進んだ。
涼しい。最高。
「ついたメラ。」
そこは岩を積んだ家で、簡素的なものであった。
「サーマルー! 客メラ!」
中から丸く、日に焼けまくっているおっさんが出てきた。
「わかったメラ。」
タキオンが驚いて、サーマルと呼ばれたおっさんを指差した。
「あんたが鬼のサーマルか!?」
おっさんは頷き、威厳のある目つきでこういった。
「いかにも、俺がサーマルだメラ。」
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