第8話
目的地であるマイムの丘へ馬に乗って向かっている。当然俺は馬になんか乗れないのでタキオンの後ろだ。
道中にはゴブリンやスライムもいたが、馬の速さにはついてこれないらしい。
すると、いつの間にか目の前にあからさまにやばそうな森があるではないか!
「あとはこのヴォルテックス大森林を抜ければつく。しっかり捕まってろよ!」
馬が速度を上げ、ものすごい速さで駆けていく。
枝が何本か飛んてきて体に当たる。痛い、これは。目を閉じた。
「抜けたぞ。」
馬が速度を緩めたのを見計らって目を開く。
森を抜けた先に広がるのはのどかな草原と、これから行く上半分だけ木に覆われている山があった。
「あの山の頂にヤツはいる。馬はおいていこう。気を抜くなよ。」
馬から降りると、タキオンがブーツを渡してきた。
「山に登るときだけ移動速度が2.5倍になるブーツだ。履いとけ。」
何これ面白い。言われるがままに履き、登山をスタートした。
もうすぐ頂上だろうかというところで森に差し掛かった。このブーツのお陰でサクサク登れる。
「ここからは気を引き締めろ。やつの土地だ。」
剣を手に持ち、左右を確認しながら森へと突入した。
「グルォォォォ!」
雄叫びが聞こえる。もうそろそろ近いのだろう。タキオンが物陰に隠れた。俺もそれに合わせて隠れると、
『ズシン、ズシン』
という音が聞こえ、巨大な足が見えた。
「まず俺が囮になる。ヤツが気を取られているうちに背後から攻撃しろ。」
そう俺に伝えたあと、アルゴスの前にタキオンは姿を表した。
「俺を殺れるもんならやってみな!《
アルゴスはタキオンを殴り潰そうとするが、『ぬるん』と滑ってダメージが入らない。
アルゴスはヤケになって何発も打ち込む。今しかチャンスはない。
だがアルゴスは全身に目がある。背後からでも気づかれる可能性があるため慎重に行かなければならない。
俺は剣を投げ、アルゴスの目に突き刺した。
「ギュォォォ!」
そして近いて剣を抜き、別の目に突き刺す。だが同じ手でヤツは怯まなかった。すぐさま俺を掴み取り、握りしめる。
「ぐっ……!」
なんて力なのだろうか。身動きすら取れない。
するとタキオンが弓を構える姿が見えた。それに気づいたアルゴスは防ごうとする。
「これは高いから取っておきたかったが、使うしかねぇな!」
タキオンの手にある弓から矢が放たれる。その矢は青く光り、5本に増えた。
その5本の矢は瞬く間にアルゴスに突き刺さり――――何も起きなかった。
「グラァゥ??」
いや何か起こる雰囲気だったろ。と思ったのもつかの間、アルゴスの手から俺は落ちた。
「ん?」
アルゴスは悶えるように動いている。その体は青く光り、光の明るさが収束していくとともに体が薄くなり――――消えた。
「思い知ったか!黄昏の矢を!」
すげぇ。あんな奥の手があるなら早く使ってくれよ。
そして、足元には美味しそ〜な果実が落ちている。
食べても…いいよな。毒なさそうだし。俺は手のひらほどの果実を取り、齧りついた。
……いける。口に入れた瞬間甘みとともに果実がホロリと溶けていく……。
そのままバクバクと食べ、俺が食べきったのと、タキオンがそれに気づいたのが同時だった。
「バカヤロー!吐け!それは魂の果実だ!食えばアルゴスに体を乗っ取られるぞ!」
タキオンがすぐさま俺の腹を叩き出した。吐けと言われても吐くのなんて難しい。
「くっ…! 遅かったか!」
俺の体が白く光りだした。なんだこれ? 乗っ取られるのか?
「お前は俺が必ず助けるから待ってろ!」
そして光が―――収まった。あれ? 何も起きないぞ?
「おい。いつになったら乗っ取られるんだ?」
タキオンは首を傾げた。
「おかしいな…あれを食べて乗っ取られないのは魔物だけなはず…?」
「あ!俺ってふろんてぃあってやつだった!」
タキオンは納得したように頷いた。
「そっか!そっか!
タキオンはどこからか図鑑を出し、めくり始めた。
「えーなになに? 魂の果実を食べた魔物は乗っ取られずに加護を得る……? お前のステータス見せろ!」
言われるがままにステータスを出した。
エスト・モリス
レベル 52
攻撃 152
防御 126
移動 110
精神 100
スキル
《チャージ》《粘着性》
《
・2分間ステータスが微量に上昇する。
次回使用には1時間のクールダウンが必要
増えてる。ていうか、本当に加護受けてるってことは俺が人間じゃないのを認めなければならないのか。
嬉しいような悲しいような。そもそもなんでこんな弱いのしかゲットできないんだろう。
「まぁ結局アルゴスは倒したんだ!賞金を貰えるぞ! それに、俺はお前が魔物でも気にしないぜ。」
そうだな、賞金は貰えるんだ。
そして俺たちはギルドへワープし、タキオンと2万ディムを山分けした。
アルカナ王国の8人の老人―――八大宿老は頭を抱えていた。
「報告が入った、エストとその仲間がアルゴスを倒したと。」
「ああ、倒したことに問題はない。だか…」
「うむ。加護は不味い。あれを知恵を持った者が手にしてはならない。」
「とりあえず保留にしましょう。皆さんお疲れのようですから。」
と、紳士めいた老人は言う。
「すまない、セブンス。」
会議は閉じた。
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