第7話

「急にどしたんだよ。」


 みんながこっちを見てる。


「上がなんか知らんが焼け野原だ!守衛隊も動いてる!」


 と言うとみんな一斉に慌てだした。「逃げろー!」とか「護国軍が来るぞー!」とか。

てか、護国軍ってなんだ?


「おい!お前国民登録したのか?」


 カヤパが荷物をまとめながら聞いてきた。


「しようとしたら、ふろんてぃあだの魔物だの出ていけだの言われるからしてねぇよ。」


 するとカヤパは青い板を取出し俺に見せつけた。


「じゃあなんだよこれは!何やらかしたらこうなるんだ。」


 その板には俺の顔(と思わしきもの)と第七級犯罪者、そして『エスト・モリス』と書いてあった。

 ははは、犯罪者!?

 心当たりがあるとすれば、道端に落ちていた百円玉を拾って水を買ったことぐらいしかないんだが!? いや……落ち着け俺。名前が違うしそれに俺は転生している。じゃあこっちで何かやらかしたのか!?


「えーと、『罪状は諸事情により非公開とする。』はあ? なんだこれ。級付でこんなんありかよ。」


 くそっ!知りたかった…!


「とりあえず逃げるぞ! 荷物は整ったな?捕まってろよ。」


 そしてお馴染。体が青く光った。次の瞬間には草原にいた。


「どこだ? ここ。」


 俺が聞くとカヤパはニヤリと笑い、こう言った。


「5000年前に滅びた黄昏の門の跡地―――の近くだ。ここなら誰も来れない!」


 ふーん。よくわからんが凄いのは理解できた。でもよ。


「なんでそこに直接行かないんだ?」


 カヤパはとんでもねぇとでも言うように


「あそこは化物だらけだからな。宝を見つけるぐらいにはこれぐらいがいいんだ。」


 と言った。聞くところによると化物は球に足が8本ついた姿だそうだ。

 まんま蜘蛛じゃん。カヤパが『蜘蛛』という表現を使ってこなかったあたり、蜘蛛はいないのだろうか。

 ちなみに、転生前の俺の世界には蜘蛛が嫌いな人がいたらしいが、俺にとっては訳がわからない。

 すると近くの森の奥に、木より少し小さい位の蜘蛛っぽい機械がぬるぬる動いているのが見えた。お、あれか?化物って。


「あれか?」


 と指を指した先をカヤパが見た刹那、


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」


 と、ものすごい速さで逃げていった。ありゃ?

 ビビりすぎだろ。と、じーっと見ているとその機械がこっちを向いた。青く光ってるな、何してんだろ。食あたり?


「避けろぉぉぉぉ! 狙われてるぞぉぉぉ!」


 と、カヤパの声が聞こえたときにはもう遅く、俺に正確に向かっているレーザーがあった。


「危ない! 《超滑ちょうすべり》!」


 と言う声と同時に目の前に人が立ちはだかった。

 そして『ぬるん』という音を出しレーザーが曲がった。いや何これ、ギャグバトル漫画かよ。

 曲がったレーザは木に当たり、木の当たったところだけが消えた。こわ。当たってたら死んでたかもな。


「だいじょうぶか!?」


 その男は二十行くか行かないかの感じの男で、悔しいが――イケメンだった。

 恋愛ドラマの彼氏役位のイケメンだった。

くそぉぉぉぉぉ!

 絶対告白の経験とかあるやつだろこいつぅぅぅ! 俺なんかさっぱりモテないのにぃ!


「おい待て! そいつは第九級犯罪者のタキオン・ペネトレイトじゃないか!」


 まだカヤパいたのか。そしてタキオンか。

第九級ってことは俺よりは低いのか。いや、あれは手違いかもしれない。


「確かに俺がタキオンだが、」


 ふーん。何でカヤパはあんな驚いてるんだろ。


「お! これはこれは、巷で話題のエストさんじゃないか。確か第七級犯罪者……。」


 有名だな。でもなにかした気はないんだけどね。


「よし、俺の仲間になってくれ。」


 タキオンは俺に向けて手を伸ばした。そっかー仲間ねー仲間仲間。え?


「いや、でも俺は何もやった記憶はないし……。戦力にもなんないぞ。」


 あー無駄だな。もう目がおもちゃほしがる子供ガキだもん。こうなったら無理、諦めるしかない。


「護国軍が間違うハズがない! もしかしたら自らは知らない秘められた力とかあるかもしれないじゃないか!」


 くそっ! イケメン強い! 顔が……眩しい…!


「お、お、俺のことはいいから仲間になっとけ。だ、だ、大丈夫だ! きっとつ、つ、強くなれる!」


 カヤパ動揺しまくり。

 まあ、カヤパのことは最初から気にかけてないんだけど。でもなぁ。


「頼むよ!な!な!」


 くっ…! ここまでかっ! 是非に及ばず!



 こうして、俺はタキオンの仲間になったのだった。


「いやー助かったよ。ギルドのミッションが物足りなくなってきててさ。強いやつが仲間にいるとより難しいところにも行けるだろ?」


 それが魂胆かよちくしょう。と思いつつも仲間になって良かったとも思っている。


「でも俺はギルドに入ってないぞ。」

「そんなんお前の顔見たら一発で通るさ。」


 そんなことを話しているとギルドについた。

 受け付けに行き、登録したいといったら顔パスでカードを作ってくれた。


「な? 顔でいけただろう?」


 そういう問題ではなく、俺の顔が広まっているのが問題なのだ。これじゃあ外出もまともにできやしない。


「で、今回やるミッションだが……。」


 近くにある張り紙を指した。

そこには…


       討伐求む!!

ゴールド2ランク以上会員必須ミッション!(神獣種巨人目)アルゴス!

     伝説の百目の巨人

   討伐者には2万ディム進呈!


 うわ…やばそう…神とか書いてるし。


「あのー? タキオン君? これはまた今度にやろうと―――。」

「今から行くぞ!」


 人の話聞けよ! こうして地獄の討伐が幕を開けた。

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