第5話
爺さんの店を出て、右に進んでいくと本当に井戸があった。本当にこれでワープできるのだろうか? と見ていたが、怪しまれてもアレなので夜になるまで町の中を歩くことにした。
服屋に雑貨屋、食料品店に武器屋……ん?武器屋? 丁度良かった。金があるから武器を買うか。と、店に入るなり店主っぽい人が出てきて、
「ガキが来る場所じゃねぇ。帰りな!」
と追い出された。
「でも…お父さんに頼まれて…。」
「父親だかなんだか知らねえが自分で来いって伝えとけ!」
とピシャリとドアを閉めてしまった。
「連れないなぁ。」
トボトボ歩いていると薬屋があった。寄ってみるか。
中にはあからさまに不健康な若者がいた。
「いらっしゃい……ベージ薬局へようこそ…。」
目の下にクマがくっきりある。店の物を見てみたが以外と高い。一番安いのが『カチカチ薬』2020ディムだ。それ以外は買えないし……半分ぐらい削られるから…いいかな。
「また…いらしてください……。」
店を出たがまだ太陽は上だ。どうしようかと思っていたらあの店の隣に宿屋があった。
入って店員さんに聞いてみると20ディムでベッドで寝れて、起きたい時間に起こしてくれるらしい。このままでもつまらないので夜まで寝ることにした。
夜になった。
俺は起こされ、井戸へ向かう。今日は満月で月が赤い…ん? 赤い…?
「赤い!」
なんと月が赤い!!
天文学では皆既月食のときに起こる現象で通称ブラッドムーンとか言うらしいがそれだろうか?
なんて月を見ている場合ではない。今は人っ子一人いない絶好のタイミングだ。店も閉まってるし。と、駆出そうとしたその矢先。
『ドシン、ドシン』と言う音が聞こえた。
身に危機を感じ、閉まっている店の
「グルルルルル。」
町の角から影が見えた。
そのままじっとしていると機械の音が強くなり、角から虎のような形の巨大な機械が現れた。
「なんだよあれ…。」
大きさは家より一回り大きい。
機械と言ってもハイテクなロボットな感じではなく、虎を模った鉄骨に歯車などをつけた感じだ。
『ズシン、ズシン。』
機械は角を曲がり、こちらに近づいてくる。そして見つかりそのままバクン!! ……なんてことはなく、そのまま機械は去っていった。
…あいつに見つかる前に井戸に入ろう。俺は走り、そのまま躊躇なく井戸へ飛び込んだのだった……。
「おい!おい!」
誰かの呼ぶ声がする。
「ん……。」
俺は起きた。あれ…俺は確か井戸に…
「気がついたか! 俺だよ! カヤパだよ!」
男の顔が見えた。カヤパだ。
「にしてもお前! 紅月の日に外にいるとは余程の度胸があるなぁ。」
紅月の日? よくわからないがとりあえずここはどこだ?
俺の目の前には商店街のような街並みが広がっている。
「ここは…?」
「ギルドだ。」
ギルド!? なんかこう…ディスコみたいな感じだと思ってたがこうも違うとは。
「こんな日に何しに来たんだ?」
「ギルドに入会しようと…。」
カヤパは眉を上げた。
「入会?登録のことか。名前はあんのか?」
名前…名前…
「ない!」
「名前がないと登録はできないんだ。帰れ。」
なにぃぃぃぃぃ!
「じ、じゃあ名前はどこでもらえるんだ?」
カヤパは少し考えたあとこう言った。
「国民登録するか…いい意味で活躍するかだな。いずれにしても冒険者になったら指名手配は免れないな。」
そうか…まあいいや!
「じゃあ国民登録してく―――」
カヤパが俺の前に立ちふさがった。
「馬鹿野郎!今日は紅月の日だ!外に出てみろ!死ぬぞ!」
あーそうだ。あの機械が
「外にいたあの機械はなんだ?」
「はぁぁぁぁぁ!?」
カヤパはかなり驚いたあと、
「そんなことも知らねぇのか! あれは9000年前に造られた対冒険者用の精神獣。今や紅月の日のみ現れる殺戮兵器だ!」
と続けた。
なるほど、だからみんないなかったのか。まあ、俺にとっては大量の人を電車で殺す集団の方が怖いけどね。
そんなこんなあって俺は今日、ここに泊まることになった。俺が
翌日
俺は他の人にバレないように明方にギルドから出て、役場に来た。
役場は昔の銀行みたいな感じでかなり広い。
「えーと、カヤパが言うには受付に申し出て、書類に色々書くのか。」
ざっくりした説明でよくわからないが、やればわかるらしいし行ってみるか。
俺は役場に入った。『受付』と書いた大きな目印のある方へ向かう。
ちょうど空いているようだ。
「すみませーん。」
受付のお姉さんに話しかける。
「はい。ご用件は何でしょうか?」
「国民登録したいんですけど。」
と言うと受付のお姉さんは黒いスマートフォンのような形のものを取り出した。
「では、こちらに触れてください。」
ちょんと触れると一瞬青く光った。
「では、少々お待ちください。」
と、お姉さんは奥に下がっていった。しばらくぼーっと待っているとまるで焦っているようにお姉さんが出てきて
「すみません。もうしばらくお待ちください。」
と、下がっていった。故障だろうか?
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