第2話

 今日はちょっと休憩。腹が減っては戦はできぬ(?)である。

 ひょこひょこ出てきたうるわしくいとしいスライムを今日も―――――殴り潰す。

 罪悪感? あるけど旨いのに変わりはない。人間は所詮そんなものだ。え、そ、そうだろう、な、な!

 今日はそこらへんに生えてる植物を食べれるか調べようと思っている。スライムは旨いし飽きないが、ほ、ほら!な、なんかス、スパイスが欲しいだろう! け、決してざ、罪悪感なんかな、ないからなっ!

 と、一人呟いた。寂しい。




 こうしていろいろ探してみたが、結構種類が豊富だ。

 赤くて丸い実や、透き通るように青い実。緑色で、近くにいるだけでスッキリする草とかとにかくいっぱいある。

 たくさん取ってきて料理したいのは山々だが、鍋がないからそういうのはまだ先かな。だが、変に毒味して毒に当たるのもそれはそれでキツい。


「まあチャレンジ精神といこう。」


 そう言って青く透き通る実をかじろうとしたその瞬間! 矢が青い実に当たる。驚いて手の力が緩むと、矢は貫いた実を粉砕してしまった。


「ぎゃー!!」


 そのまま燃えた。普通矢の威力ってここまであるか!?

 どこぞのチート野郎だよ。


「危ないよ。それ、人間には毒だから。」

「その合成音声みたいなふざけた声のやつはどいつだ!」

「ここだよ。」


 は俺の真正面の木の上にいた。

 なんというか…こう…大きさは六十センチちょっとで、白い枠で囲われた体は黒くて、顔と体型は子供が描いた感じ? よく説明できないがほんとにこうだ。なんか不思議と怖くない。


「僕はハーミットっていうんだ。そしてなんだい?合成音声ってのは。」

「ふっ、貴様は知らなくて良いことさ。」


 と、厨二ちゅうにっぽく返すと


「へー。」


 と一番悲しい返事が来た。


「で、なんで君は隠蔽の森ステルスフォレストで毒草を取ってるんだい?」

「ゑ?」

「それ全部毒草だよ。」

「マジカー!!」


 俺はすぐにとびのき、毒草を捨てた。


「で、なんで??」


 痛い。その純真なまなこ(?)が痛い!


「そ、それは…」

「貴様は知らなくて良いことさ。って?」


 うわ、俺の真似しやがった。顔まで似せてるし。恥ずかしいというか悲しいというか。

ん? 顔?


「な、なんだこの顔は〜!」

「自分の顔見て何驚いているんだい?」


 子供だ。6〜7歳ぐらいだろうか。いや〜、20代後半の公務員がまさか子供からやり直しとは。世の中厳しい。


「いや、なんでもない。」

「そっか。で、名前は?」

「ない!」

「そっか、そっか。」


 そ~なんだよー。ってなんで平然としてんだコイツァ。


「驚かないのか?」

「いや〜名前がない人間なんていっぱいいるから。」

「へ〜。」


 となると文明はそこまで進んでいないのかもしれない。


「村に連れて行ってあげようか? 事情ありそうだし。」


 察しのいい生き物(?)だ。


「ああ、頼む。」

「捕まって。」


 そう言って肩を差し出したハーミットに捕まると、ものすごい速さで木と木の上をはねていた。


「ついた。」


 速い。数十秒しか立ってないのに何キロもありそうな距離をここまで……。


「じゃあね。」


 忍者かよ。と、突っ込む前に行ってしまった。

 肝心の村だが、正直言って日本の縄文時代の竪穴たてあな住居のほうがマシだ。木枠の上に俵を適当に積み重ねている感じで、今にも崩れそうだ。


「おーい。誰か居ますかー」


 誰もいない。もしかしたらもうここは廃村なのかもしれないな。そしたらこの家も説明がつく。

 なーんて言ってると血腥ちなまぐさい匂いがした。


『ヤーレンヤーレン。』

「なんだこの声?」

「ヤーレンヤーレン。」


 声が近づいてくる。


「ヤーレンヤーレン! ハーッ!」


 村の森に繋がる獣道のような所から、角が3本生えた豚のような生き物を、沢山串刺しにして運んでいる人たちの姿が見えた。


「火の用意ーッ!」


 村人がそそくさと家に入り、薪を持ってきて火をつけた。


「生命の神レクイエムに祈りを捧げ、魔物を我らのものにーッ!」


 村人たちが豚(?)を火炙りにしだした。


「ややっ! お前は誰だ。」


 背後にはそこの住民らしき人がいた。うわ、背後にいたのか。


「いやー俺はそんな悪――」

「槍、構えー!!」


ジャキン


「ゑ?」

「待て待て、じいちゃん、この子はまだ子供だ。皆の者! 槍を捨てよ!」


 ああ、子供扱い……悲しい。だが助けてくれたからな。助けてくれた20代前半の若者に指示を出していた爺さんが近寄った。


「じゃが侵入者は排除せよと先代が…」

「それとこれは別だろ。」


 爺さんは悔しそうだ。しばらくは夜道に気をつけたほうがいいかもしれない。


「君、何処から来たんだい?」


 俺は森を指した。


「あそこかぁ。武器無しでよく無傷でこれたな。」

「どゆこと?」

「そんな事も知らずにいたのか!いやぁ、あそこは魔物が大量発生するから危ないんだよ。」


 そうか? 俺はスライムとゴブリンしかみなかったけど。運がいいのかな。


「へー。ところであの豚っぽいの何?」


 あの豚(?)はもうこんがり焼けている。香ばしい匂いが漂ってきた。


「あれは角豚ホーンポークだ。強いけど栄養がある。」


 角煮……じゃないか。そんなものまでいたのか、毒草取りをしていた俺とは大違いだ。


「まあ今日はこいつが取れたから祭りだ!お前も入れ!」


 こうしてよくわかんない騒ぎが始まった。

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