ハイヒールのバレリーナ


次の部屋は何かの舞台の装置の様だった。

照明だけが煌々と明るく照っており、骸骨がバレエの衣装を着て回っている。

そちらにばかり気を取られていると、何かに躓いた。

下を覗くと大量の体重計があちらこちらに7ずつマス目においてある。全てバラバラの体重を指している。

そのまま、壁の方へとルウに追随して歩くと、沢山のポスターが貼ってあった。


「可愛いの作り方」


つぎはぎだらけの人形の絵と説明が書いてある。

どれどれ。①可愛くないを切り取る②可愛いを注入する③可愛いを比べる④可愛いをもっと可愛いにする


「私もこれで可愛いになるの」

私はイーと歯を見せ笑顔の練習をした。

「ただの人形でしかないけどね」

ルウはそばにあった着せ変え人形をポーンと足で蹴飛ばした。


その横には三面鏡の鏡がたくさんある。沢山の私がかわるがうつる。

ここにいることすら息のつまりそうな私。私。わたし。

「どれが本当の私かしら」

「どこにも本当の自分なんてこの世界には存在しない」

「あら、じゃあ、あなたは一体誰なの?」

「……」

ルウは何も答えなかった。


洗面台の近くから一つの手紙が出てきた。


「どこまで行ったって観念でしかないんだ。私が経験していることは本当に存在するの?この世界は本当に存在するの?あなたはずっと止まれの標識」


……何これ。と考えあぐねていると、軽快なリズムが響き始め、先ほどの舞台上で色々な動物たちが、音楽を歌い始めた。ダンスに見惚れていると、段々と禍々しい踊りに変容していった。


「この世界にはルールがただ一つある。

その輪の中に入れないものは、異端者だ。

火炙り!火炙り!火炙り!」


急に静まり返り、背景が変わったかと思うと、謎の劇団がバレリーナを取り囲み、そのバレリーナを燃やし始めた。

 既に骨になってしまっているのに、これ以上焼いて一体何の意味があるのだろうか。


「痛々しい」

「でも、悪者は成敗されるべきなんじゃないの?」


驚き目を見開く私を見たかと思うと、にんまりと気持ちの悪い笑みを浮かべた。


「限度があるわ」

「でも、君たちはそれがお好みだろう?」


私は好きではない。君たちは一体だれを指すのだろう。

私は、燃やされた後のバレリーナを確認した。

すると、崩れた灰の中から、心が落ちた。

正確には心臓のようなかたいダイヤモンドのようなもの。


「これは何だろう」

「僕もわからない。でも、彼女の一部だろうね」


私はその心臓の一部を持って帰ることにした。

心臓を持ち上げると、そこには美穂と名前が書いてあった。


「美穂……。さっきの女の子と同じ名前よ」

「そうだね。同一人物なのかな」

「み、みほ。みほ」


何度も口に含んで呼応すると、私はそれに聞き覚えがある気がした。

すると突然頭痛が襲い、ふつっと意識がブラックアウトした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る