第6話 赤い瞳

黒髪で赤い瞳のジークに抱きしめられながら、クロエは言った。

「ジーク?本当に?」


ジークは言う。

「そうだよ。クロエ。ずっと会いたかった。」


ジークは、クロエを抱きしめてキスをしてきた。


クロエは思わず顔を背ける。


ジークは、言った。

「クロエ?俺の事が嫌いになった?」


クロエは混乱していた。


さっき幻影だと思っていたジークはなんと言った?


そうルルージュア王子、、、


そして俺たちの息子と、、、、




クロエは、ジークから少しでも離れようとするが、クロエを片手で抱きしめているとは思えない程ジークは力強くビクともしない。



「私は、、、、」



ドキドキと胸が高鳴る。どうして居場所が分かったのだろう。皇帝は茶髪の娘を探しているはずではなかったのか?クロエは髪色を金髪へ戻している。だれもクロエの事を、皇帝が探している娘だと疑っていた者はいないはずだった。



ジークは少し悲しそうに言った。

「クロエでもルルーでもいいさ。ルルージュアでもね。俺の事を恨んでいるのか?」



クロエはジークの事が大好きだ。そのジークが辛そうにしている。



あんな家族の事なんてどうでもいい。クロエを冷遇してきた人達だ。疎遠だった親族より、愛するジークと、息子ザックの事が何よりも大事だった。


クロエはジークへ言った。

「恨んでいるかだなんて。そんな事ないわ。」


ジークに抱きかかえられている息子のザックも、父親と同じ色の瞳を細めて嬉しそうに声を出す。


「あーーーい。」




ザックはご機嫌で笑っている。いつもより高い目線が気に入ったみたいだった。


「「ふふふふ。」」


クロエとジークの笑い声が重なった。ザックも一緒に笑いだす。




(そうよ。今の私には何もない。王子だった痕跡だって全部消してきたはずだわ。幾ら疑われても大丈夫よ。ただの娘が帝国の正妃になれるはずが無いのだもの)



クロエは、笑いながら言った。

「ジーク。ごめんなさい。驚いてしまって。よかったら家にお招きするわ。」

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