第4話『虎子の誕生日』
「沙絵に可愛い服でご奉仕されたい!」
『ああんっ!』
「うわあ、すごいエロい声♪」
『いや、どう考えても切れてる声でしょうが! 何でいきなり嬌声上げてるとか解釈するのよ、私はヘンタイか、アホ虎!』
「へへ、いちいち律儀な返しありがとうございま~す!」
『……何か電話遠くなってきたみたいだから、切るわ』
「わぁ、ちょ待てって、沙絵! 悪かったって!!」
9月下旬、ようやく夏の熱気が落ち着いてきて通学時間の風が心地よくなり始めた頃、虎子の誕生日が迫ってきていた。
こんなアホな虎でも、まあ一応…彼女だし?
誕生日にちょっとくらいなら、リクエストに応えて喜んで貰おうかなーとか、思ったわけ。
そんな、私なりのささやかな思いに対して、アホ虎の言い放ったのが、さっきのセリフだった。
まったくもって、とんでもないセクハラ彼女だった。
『というか、一応聞いておくけど、具体的にどうご奉仕するのよ?』
「お、沙絵ちゃん興味津々だね♪」
『興味無いわ! 自分の都合良く解釈するな!』
「ちぇー、何だー」
『まあ、話を聞いて私が出来る範囲でならやってみるからさ…』
「ほ、本当か?」
『あ、あんまり、期待しないでよね!』
「うんうん! 私のために精一杯応えようとしてくれるその気持ちが嬉しいよ。ありがとな! 沙絵」
だから、何でそんな恥ずかしいセリフを臆面もなく言えるかな。
私が言おうものなら、きっとカミカミのぶつ切りになりそうだ。
でも、そうやってストレートに気持ちをぶつけてくるところが虎子の魅力であり、私の胸をきゅんとさせるのだった。
「おーい、沙絵どうかした?」
『え? あ、べ、別に何でもない!』
「そう? あ、リクエストはやっぱり当日またお願いさせてもらうよ」
『そ、そう? ま、へ、ヘンなのじゃなきゃいいけど…』
「……」
『このタイミングで黙るとか、意味深すぎなんだけど!』
「お、おやすみ~♪」
って、聞かなかった事にしてるし。ま、いいや、とんでもないヤツなら当日却下すれば。
『お、おやすみ…』
ため息をついて、電源を切ろうとした時。
「愛してるぜ」
いきなり耳元で甘く囁かれて、一瞬息が止まりそうになる。
『は、はぁ? ば、バカじゃないの! アホ虎!』
「へへ、それって、‘‘私も愛してるよ虎子、ちゅ❤️’’って意味だろ?」
『な……あ、あんたの読解力バグってるんじゃないのっ?!』
「あはは、じゃあな!」
『もう……またね、アホ虎』
通話が終わると、布団に横になる。
明日から月曜日、次に虎子に会うのは土曜日かぁ……。
スマホの写真フォルダから隠しファイルを開くと虎子専用の写真データが出てくる。
今日はこれにしよう。
夏祭りの時に撮った1枚。
かき氷のスプーンをくわえてこちらにニッと笑う1枚。
思えば、虎子の写真は笑顔のものばかりだった。
八重歯を覗かせる――その幼い笑みは、昔から変わらない、優しさに満ちていて、私の気持ちをほっこりとさせてくれる。
『……』
私は横向きに寝転がり、布団を頭から被ると、虎子の写真を見つめながら、もう失われてしまった夏祭りの跡があった所をそっと擦るのだった。
◇◆
ある日のお昼休み時間。ふと、いたずらを思い付いて沙絵に画像を送信した。
しばらくして、遠目に見る沙絵がスマホの通知に気付いて画像を開く――と、顔を赤面させていた。
心配する友達に手で大丈夫と伝えて愛想笑いでなんとか応えた後で、めっちゃ睨まれた!
うははっ、ウケる。
「お? 虎、どした? 何か楽しいことでもあったん?」
隣に立つ
こら、プライバシーが人外だぞ、リカコ!
よくわからない言葉で内心批判しながら愛想笑いを浮かべスマホの画面を抱き寄せる形で隠す。
『いやぁ大したことではないんだけどね』
「いやいや、じゅーぶん大したことある顔だった……ぞ!」
『ちょ、急に後ろから抱き付くな……って、あははは! く、くすぐるなってぇ』
私たちが2人でじゃれ合う姿をリカコの男とその友人がやや頬を染めながら、コソコソ耳打ちして合掌していた。
何このキモい生物、引くわ。
◇◆
金曜日――放課後図書室にて
「よーし、今日の宿題おーわりっ!!」
クラスの友達、
「沙絵先生、今日も丁寧なご指導ありがとうございます! ささ、柚子の買ってきたMAXコーヒーをどうぞ!」
すかさず柚子の隣にいた、
『それ甘過ぎだし、飲みかけじゃん!』
「ふふ、缶チューしちゃうね♪」
莉湖が頬に手を当てながらニヨニヨしている。
『いや、いらないし』
「じゃ、じゃあ莉子のゴーヤジュースいる?」
『丁重にお断り致します! ていうか、何それ? 苦味成分100%とか、なんでハチミツとかの甘味と混ぜないで単独で販売しちゃったの? 商品開発者は何を意図してこんな商品作ってるのよ?!』
「ええとね、パーティーグッズらしいよ? 飲み物でパーティーグッズとか、斬新だね! ていうか、罰ゲーム用だねこれ、めっちゃ不味い……ゾンビ声が出ちゃいそう……う
ぇぇ」
莉湖が眉間にしわを寄せて、涙目でうっすらと緑色に染まるベロを出していた。
『買う前に気付こうよ』
私は苦笑しながら、彼女に自分のミネラルウォーターを差し出すとくぴくぴと大人しく飲んでいた。
「まったく、莉湖はすぐ変な冒険するから…私みたいに一日一善みたいに、毎日マッ缶飲んでりゃ安定の幸せをゲット出来るというのに」
「そこには糖尿病の未来しか見えないからヤダ」
「なんだとぅ! そんなこと言うと世界のマッ缶ファンに闇討ちされるぞ!」
「ところで、今日莉湖たち買い物に行くんだけど、沙絵も一緒に行かない?」
「て、スルーかよ!」
『いいけど、何を買うの?』
「沙絵もかい!」
「ふふふ、今日は百合マンガの新刊の発売日なんだよ~♪」
莉湖が嬉しそうに頬を染めている。
『百合マンガ?』
首を傾げる私に、柚子がやや拗ねた表情で説明してくれた。
「あー、沙絵はそういうの興味なさそうだもんね。百合っていうのは、マンガのジャンルの1つで、主に女性同士の恋愛や友情等を扱った作品のことだよ」
『はぁ……』
「まあ、実際読んでみた方が早いんじゃない? ほら」
莉湖が鞄の中から、青い花のカバーがされた本を差し出して来る。
『……』
何か出てくる女の子たちがいちいち可愛い子ばかりで、手を握ったり、ハグしたり、時にはキスとかをナチュラルにしている。
「どう? てえてえだよね?」
莉子が両手をグーにして瞳を
ちょ、顔近いって。
『てえてえ?』
「えーと、尊いって意味で…あー、尊いっていうのは……というか、めんどいから後でググッといて」
柚子が面倒がってすぐにさじを投げる。まあ、もともとそういうキャラじゃないしね。
天然な莉湖とは違い、さっぱりした性格の柚子は基本適当ガールだ。
服装とか買う時も、家にある服との組合せを考えずに直感で選ぶタイプ。
『えーと、尊いとは…』
「て、もうググるのかよ?! 興味あるの?」
柚子が驚いていた。
「いいね♪ 沙絵も私と一緒に沼っちゃお☆」
莉湖が招き猫みたいに手をにゃんこにして招く仕草をする。
女性同士の恋愛模様に興味がある。
彼女との付き合い方について考える時に何かヒントになるかもだし……あと、なんかこのマンガの女の子、虎子にちょっと似てるんだよね……。
他意はないけどね、うん。他意はない。
『ね、ねぇ…莉湖、このマンガちょっと借りてもいいかな?』
「えへへ、もちろんだよ。じゃ、買い物行こっか!」
莉湖が私の手を取って歩き出す。
のんびりな莉湖がいつになく積極的な態度に驚く。
柚子と目が合うとクスリと笑い合った。
◇◆
土曜日の朝、私は10時前に家を出る。
自転車に乗り、走ること15分。オープン時間になって間もない駐輪場にはまだ車はなく、店内にお客さんの姿もなかった。
ドアを開けると、カランカランとドアの上にあるベルが来客を知らせ、作業中の店員がこちらを向いた。
「いらっしゃいませ……って、あら沙絵ちゃんじゃない」
『おばさん、おはようございます』
「おはよう、今日はどうしたの?」
『その…友達の誕生日祝いで…』
「そうかい、友達の大事なケーキをうちの店で選んでくれてありがとうね」
『いえ、その子、このお店のチーズケーキのファンなんで』
「それは嬉しいねぇ。あ、莉湖呼ぼうか? そろそろ起きてくると思うんだけどねぇ。ったく、あの子は休みの日はいつもお昼過ぎまで寝てるんだから」
『いえ、安眠を妨げると後が怖いので止めておきます』
「そうかい? おっと、それより今日は何が入り用かな?」
『このケーキとこれと、それと……この前お願いしていたの、出来てますか?』
「はい、こんなんでいいかね?」
『わあ、可愛い♪ ありがとうございます! えっとこちらのお代は…』
「いいよ」
『いえ、そういう訳には……』
「いいからいいから、いつもごひいきにしてくれてるからさ」
『で、でも…』
「それじゃあわかった。その友達との誕生日会を楽しむ事。それがお代の代わりだよ」
『わかりました。ありがとうございます』
店を後にすると声をかけられた。
驚いて声のしたほうを見上げると、莉湖がお店の2階からひらひらと手を振っていた。
「沙絵~、おはよ~」
『莉湖。今起きたの?』
「うん、まだ眠いけどねぇ」
言いながらあくびをしている。
すっぴんで、寝癖もそのままに話しかけたようだった。
私なら恥ずかしくて顔を出せないけど、そういうのに
眠たげな緩い目元には、うっすらと涙が浮かび、寝癖のもさもさ具合も相まってゆるキャラみたいな空気をまとっていた。
右目にある小さな泣きぼくろに浮かんだ涙を拭いながら口を開く。
「今日はケーキ買いに来てくれたんだぁ、いつもごひいきにしてくれてありがとね~♪」
『ここのお店が一番おいしいから』
「そう言ってもらえるとうれしいねぇ……ところで、沙絵?」
『何?』
「ふふふ、な~んか今日の沙絵ちゃんはカワユイですにゃあ」
莉湖が、頬杖をついてニヨニヨしながら見つめてくる。
『そ、そうかしら…』
ぎくりとして愛想笑いを浮かべる。
莉湖は、ぼーっとしているように見えて、意外に視ている所がある。
それがあるからさっきおばさんの申し出を断ったのに……。
「うん、まずコンタクトしてるの、初めて見たし、髪の毛先も少しゆるふわに巻いてる? 白いニットに黒のプリーツスカート可愛い。何て言うかね~、女子力高めって感じ? 普段の服装がおからクッキーとすると、今は安納芋のモンブランくらい?」
何かよくわからない例えをされた。えーと、女子力=甘味が強いってことかな?
『ごめん、よくわからない』
「あはは、ごめんごめん。つまり、いつもより甘めな服装というか、これから彼氏に会う女の子? そんな感じかな」
かなりのニアミスじゃない!
というか、改めて他人から指摘されると私が虎子との誕生日をすごく楽しみにしてるみたいで恥ずかしい。
いや、まあ、楽しみではあるんですけどね、うん。ほんのちょこっと……いや、少し? いやいや、大分少し?……うーん、ま、まあ楽しみですね、はい。
だって好きな人だし、普通でしょ?
「沙絵、急にもじもじしてどしたの……てか、なんか頬がショートケーキの上に乗るイチゴみたいに赤いよ、大丈夫?」
『あはは、だいじょぶ、だいじょぶ! それじゃ、私次の予定あるから行くね~!』
私は逃げるように自転車へ乗ると振り返らずに走り出した。
◇◆
一度家に帰ると部屋にある荷物を持って虎子の家に向かった。
チャイムを鳴らそうとして、ふと髪型が乱れていないか気になり、手鏡を取り出して確認する。
そうして再度チャイムに手を伸ばしたとき、視線を感じた気がした。
振り返るが誰もいない。
向かい側にある家の塀の上には黒猫が一匹、香箱座りをして、気持ち良さそうに目を閉じていた。
可愛い♪ モフモフしたいなぁ。
私はなるべく足音を立てないようにして、そっと猫に近付くとスマホを構える。
「よう沙絵、時間通りに来たな」
『きゃ!』
いきなり後ろから肩を強く叩かれ、よろけた。
その拍子に猫の方へ押し出されてしまい、猫がびくりとして目を開くと私の存在に気付いてササッと逃げてしまった。
あぁ、もうすぐで写真が撮れたのに……。
「ありゃ、悪い」
私は振り返ると虎子を睨み付けた。
『ていうか、何で家で大人しく待ってないのよ? クラスの人に見られたら噂が立つじゃないの!』
「おー! いいじゃん、そしたらガッコに毎日一緒に通えるじゃん!」
うれしそうにニヤニヤする虎子に軽い頭痛を覚え、頭を抑えながら言った。
『もう! このアホ虎は、ほんと能天気なんだから、前に言ったでしょうに』
「つーかさ、沙絵」
『何よ!』
「さっきの手鏡可愛いデザインだな」
『え? あ……』
ついさっきの仕草を見られていたことに気付き、頬が熱くなる。
『…そ、そういうのは見なかった事にするのが優しさってものでしょう?』
「えー何で? いいじゃん。だってさ、沙絵は私の前に立つ時に、少しでも可愛く見られるために、会う直前まで身だしなみのチェックをしていてくれたって事だろ? めっちゃうれしいんだけど」
『だ…から、そ、そーいうの、本当にいいから! 恥ずかしいでしょうが…。言われるこちらの身にもなりなさいよ、アホ虎ぁ!』
私が赤面しながら怒鳴るも、虎子はどこ吹く風。きょとんとした後に、不思議そうな顔をして言った。
「ん? あー、大丈夫だって、恥じらう沙絵とか、私めっちゃ大好物だし!」
いえぃっ! と八重歯を光らせてとサムズアップされる。
あー、ダメだこのアホ虎は、こうなると話通じない。
「ほら、早く入ろうぜ!」
虎子が玄関の鍵を開けて手招きする。
私はため息をつくと虎子の後に続いた。
◇◆
ケーキを渡すと虎子は冷蔵庫にしまってくるから部屋で先に待っててくれと言われた。
時計はまだお昼前を差している。
今日両親はバス旅行に出かけていて、夕方まで戻らないとの事だった。
私は机から椅子を取り出して座る。
改めてよくよく見てみると、机にある本棚には教科書の代わりにマンガ本やゲームソフト、ゲームの画集のようなものが沢山置いてある。
いやいや、教科書は置いてないのかい。
あーでも、確か虎子の机に教科書がぎゅうぎゅうに詰まってるのを以前見かけた気がする。
呆れながら、ふと中学の卒業アルバムを見付けた。
そういえば、虎子とは中学時代はほとんど会話らしい会話をしなかったな。
始めの入学当初はまだしも、部活が別々になってからは自然に会話は失われていった。
まともに会話をしたのは、高校受験の勉強に追い込みをかけ始めた3年生の夏頃だった。
ろくすっぽ勉強をしてこなかった虎子は夏期講習に通っても全然ついて行けずに、たまたま同じ夏期講習に通っていた私に泣きついたのだった。
アルバムを開くと自然、彼女の写っているのを目で追っていた。
部活動紹介のページで陸上部の虎子の写真を見る。
そこには黒髪にポニーテールの虎子が人懐っこそうな笑顔でピースをしていた。
まさに元気娘と言った感じだ。
『……』
うん。久しぶりに見たけど、これはこれでいいな……。
いや、今の茶髪にちょこんと後ろ髪を短いポニテにしてる彼女もボーイッシュでカッコ良くて好きだけどね。
自然に緩んでいた頬に気付き、ハッとして緩んだ頬を押し上げる。
『…ん?』
ふと彼女の隣に立つ女子に目が行った。
同じ青いジャージを着ているところから同学年である事がわかる。
その子は集合写真だというのに、面倒臭そうな、無愛想な顔でこちらを見つめていた。
こんな子いたっけ?
でも……何か、嫌だな…。
無意識に湧いた感情に驚き、同時に自己嫌悪に陥る。
「おーい、ドアを開けてくれ。お菓子のお盆持っていて手が塞がってるんだ」
『あ、はーい』
私はアルバムを机に戻すとドアへ向かった。
◇◆
「ねぇ、虎子?」
『ん?』
「このマンガの3巻は?」
『あー、確かここにあったな、ほい』
「ありがとう」
『……お、イベント限定キャラゲットした♪ よっしゃ!』
「そう、良かったわね」
『おう!』
「……」
『…………う』
「ん?」
『違う! 何かこれ、違うだろ!』
「何が?」
『いや、だからさ、今日は私の誕生日なわけよ』
「うん」
『なのに、何でいつもと同じように過ごしてるのさ』
「…はあ、別にいいんじゃない? それに、いつもなら私が虎子のゲーム時間とか1日1時間にしてるけど、今日は何も言ってないでしょ?」
『う…それはまあ、うれしいんだけどさ』
というか、沙絵って時々私のおかんみたいだよな……とは言わない。
以前そう言ったら、拗ねてしまってその日はキス出来なかったのだ。
‘’おかあさんとキスなんてしないでしょ?‘’と言われた。
「お互いが好きな時間をのびのびと過ごしてるんだから良くない?」
『ま、まあな……』
「何よ? ちゃんと言いなさいよ」
『わ、わかった。い、言うからな! こ、後悔するなよ?』
「はいはい」
沙絵がマンガに視線を落としたまま、手元にあるポッキーを食べ始める。
『わ、私は! いつも以上に沙絵とイチャイチャしたい!』
「……んぐっ! ゴホッゴホッ!!」
ポッキーを喉につまらせて沙絵が咳き込む。
私は急いで手元にあるオレンジジュースを渡すと、沙絵はゆっくりと飲んだ。
『ご、ごめん』
「…そ、そういえば、この前電話で話してた事って具体的にどういう内容なの?」
『ああ、沙絵がご奉仕したいな、キャッ❤️って話か?』
「何記憶をカイザンしてるのよ。したいなんて言ってない! というか、あの時に言ってた可愛い服って何なのよ……」
『あー、それな。本当は沙絵に何かコスプレして貰おうかなと思ったんだけど、やめとくよ』
「コスプレ?! 何それ? 聞いてないけど?!」
『いや、会ったときに話すって言っただろ。でも、それは必要なくなった』
「そうなの?」
『うん! だって、今日の沙絵の服装めっちゃ可愛いし』
「ちょ…何でこのタイミングなのよ」
『いやー、何か照れくさくてすぐに言えなかった』
たはは、と頭をかきながら笑った。
「あ、あり…がと…。でも、もう少し早く言って欲しかったな……ずっと、似合ってるか心配だったんだからね」
沙絵が頬を膨らませながら、抗議してくる。
『そっか、ごめんな』
沙絵の髪をゆっくりと擦る。
沙絵が私の腰に手を回してぎゅっと抱きついてくる。
沙絵の前髪をかき上げると、そのまま小さな額にキスした。
「ねぇ…ポッキー、食べたいな…」
『ポッキー? 何で急に?』
「いいから、早くちょうだい」
沙絵が子供みたいに甘えた声を出す。
『わかったわかった』
体を離すと、沙絵も半歩身を引いた。
ポッキーを手に取ると、沙絵の口元にそっと差し出す。
「はむ…」
沙絵がポッキーを咥えるとポリポリと食べ始める。
ゆっくりとその口が近付いてくる。
なんというか、動物園とかでウサギに、ニンジンを与えている気分になってくる。
これはこれで可愛いかも…。
そんなことをぼんやりと考えていると、指先の辺りまで沙絵の口元が来ていた。
そうしてポッキーを食べ終えると、そのまま私の差し出していた親指を口に含んだ。
『え? ちょっ!』
驚く私に構わず沙絵が私の親指をぺろりと舐める。
指の腹から爪の指の間、爪の表面へと熱く、ぬるりとした感触がうごめく。
目を閉じた沙絵が、そのまま親指に強く吸い付き、第一関節が口の中に包まれる。
「…ん…」
沙絵のくぐもった声がして、親指を前後に何度かしごくと、ようやく解放された。
『その……さ、沙絵…さん?』
沙絵は顔を伏せたまま、耳まで真っ赤にして呟いた。
「こ、これで、い、いかがですか? ご主人さま?」
『……うあ……』
思わず口元を手でおさえる。
ヤバい、何これ? え? ご奉仕って事?
私の想像してたのと違う。
膝枕とか、もっとライトなのを考えていたのに……とは今さら言えない。
「…ちょ、だ、黙ってないで何とか言いなさいよ。は、恥ずかしいんだけど…」
『あ、ああ…そ、その、すごくエロくて、気持ち良かった……』
「ば……な、何恥ずかしい事言ってるのよ、アホ虎ぁっ!」
『いてっ!』
頬を叩かれた。
自分から聞いてきて、この仕打ちはなくね?
理不尽だ!
「その……言い方とか、あるでしょ…バカ…」
沙絵が私を横目でちらりと見て、もじもじする。
その瞳と囁く声は、私のスイッチを入れるのに充分だった。
ごくんっ……生唾を飲み込み、僅かに震える指先で俯いている彼女の首からのあご下へ――つつつと滑らせてる。
くすぐったそうに身をよじる沙絵の顔が上を向いた隙を逃さずに、唇を奪った。
「…ぁ……んむっ……」
1度、2度、3度目のキスで下唇を唇でついばむようにして舐める。
彼女の唇がそっと開くと、舌を入れて口内を
「ん……は、あっ……」
肩を押すと沙絵が力なく倒れ込む。
荒い息を吐きながら、私の名前を呟く唇からは涎が糸を引いていた。
私は床に片手をついて、彼女を見下ろす。
『沙絵、可愛い…』
「虎子……」
そのまま覆い被さるようにして唇を再度奪おうとして――くぅぅぅぅ。
何か可愛い声が聞こえた。
驚いて沙絵を見ると頬を染めたまま、黙り込んでいる。
『…えー、ごほん。うん、あれだ。か、可愛い子犬ちゃんを飼ってますね、沙絵ちゃん♪』
「う、うううるさい、アホ虎ぁっ!!」
『いてぇ!』
頬を思い切り張られた!
「いい? 私が呼ぶまで虎子は部屋で大人しくしていること」
自宅から持参したエプロンをした沙絵はそれだけ言い残して一階のリビングに降りていった。
私がリクエストした昼食を作ってくれるとの事だった。
沙絵から呼ばれてリビングに入ると、キッチンの奥でナベを煮込みながらシーチキン缶のプルタブを開けるのに苦戦していた。
急速モードの炊飯器からはすでに、湯気が出始めている。
「虎子、シーチキン缶開けてくれる? あと、冷蔵庫にあったカニカマとレタスを少し貰うね」
プルタブを立てるとパキュッという音がしてシーチキン缶が開き、沙絵に渡す。
『いいよ、ほら開いた』
私は普段まったく料理をしないので、沙絵の邪魔にならないようにダイニングの食卓に腰掛けて彼女を見守った。
ふむ、沙絵と同棲するとこんな光景を見られたりするのか……いいね!
しばらくして、沙絵が食卓に配膳を始める。
私もそれにならって一緒に準備をした。
食卓には、ごはんとカニカマとシーチキンのサラダ、そして私がリクエストした肉じゃがが並んだ。
『おおー、肉じゃが、うまそう! そうだ写真を撮っておこう』
私がスマホを取り出すと沙絵が苦笑した。
「何やってんのよアホ虎」
私は料理の写真を撮った後、そのまま向かい側に座る沙絵も撮影した。
「ちょ……無断撮影しないでよ!」
『あはは、ごめんごめん。沙絵のエプロン姿とかレアだし』
「あ、取るの忘れてた」
沙絵がエプロンを取ろうとするのを手で制止する。
『いーじゃんそのままで、エプロン姿も可愛いよ』
「……アホ虎、そういう不意討ちとか止めてって言ってる…」
沙絵が頬を染めながら抗議してくる。
はい、今日何度目かの沙絵ちゃん可愛いポイントいただきました♪
もうそろそろポイント交換できそうなんだけどなー。ポイントで欲しいのが、もっと沙絵の可愛い一面を見たいとか……何それエンドレスじゃん!
そうか、私はもうとっくに沙絵というの迷宮にハマってるんだなぁ…えへへ。
「何? 頬が緩んでて、ちょっとキモいんだけど?」
『へへ、気にするなって。ほら食べようぜ。いただきます!』
「いただきます」
湯気の立つ肉じゃがに息を吹きかけてから口に運ぶ。
舌の上にトロトロのあんで包まれた甘い味付けのじゃがいもとそぼろの味が広がる。
温かくて優しい味付けに、口元が自然に緩む。
沙絵は緊張した面持ちで私の顔色を伺っていたが、ホッと息をつき、ご飯を食べ始めた。
『うん、美味しいよ沙絵! というか、沙絵の作るご飯、世界一美味しい♪』
「大げさにも程があるわよ!」
『いやー、でもさ、私、世界一沙絵の事好きじゃん? そんな沙絵が私の誕生日のために、一生懸命作ってくれた料理ってことは=世界一美味しい料理と言っても過言ではない!』
「過言でしょ! ……はあ、なんかアホ虎の頭ってお花畑みたいに幸せそうだよね」
沙絵にやれやれという感じで呆れられる。
『え? そりゃ沙絵と一緒にいるんだから当たり前だろ?』
「……」
『沙絵? どーしたん? 紅葉みたいに耳を真っ赤にして?』
「…は、恥ずか死いわ! ほら、早く食べないと冷めるわよ、アホ虎!」
かろうじてそれだけ言い返してうつむきがちにもそもそと食事を再開する。
そんな様子を微笑ましく思いながら私も食べ始め、あることを思い出した。
『あ、そうだ! なあ沙絵』
「な、何よ?」
『はい、あーん❤️ て、やってよ』
「あんならもう付いてるでしょ」
『は?』
「ごめん、忘れて」
『あ、肉じゃがのあんと私の言ったはい、あーんをかけてるのね。うまい!あ、これもご飯にかかってる』
「…だから、恥の上塗りやめて!」
『し、仕方ない、なら私が』
「え?」
私はスプーンで肉じゃがを取ると、そっと息を吹き掛けてから沙絵の口元に持っていく。
『ほ、ほら、あ、あーん…』
うぐ、意外にやってみると恥ずかしいもんだな。頬が熱くなってくる。
しかも言いよどんだせいで、ちょっとえっちな発音になってしまった。
沙絵は沙絵で、私のスプーンを見つめたまま黙り込んでいるし。
「……」
おーい、沙絵? 頼むから何か言ってくれ。
沙絵が僅かに頬を染めながらじっとしている。
私は諦めてスプーンを引こうとすると――ガッ! 沙絵に腕を捕まれた。うおっ!
沙絵は、小さく息を吹きかけると、垂れている髪をそっとかき上げて目を閉じ、口を開いてあむっとスプーンを咥えた。
僅かにグロスを引いた唇が光り、口を開いた時に暗闇の中、ちらりと見えた赤い舌が艶っぽくてドキリとした。
「ん…おいし。そ、それじゃあ、わ、私も……は、はい…あ、あーん」
頬を染めたまま、ふぅっと肉じゃがに息を吹きかけてからおずおずとスプーンを差し出してくる。
『……』
私が黙って見つめていると、沙絵は少し不機嫌そうにむっとし始める。
「な、何よ? 私からあーん、されるの嫌だった?」
『いや、嬉しいんだけど、さっきはやってくれなかったじゃん?』
「う……そ、そりゃあ、は、恥ずかしいからね。で、でも……と、虎子も恥ずかしがりながらもやってくれたじゃない。なら、私だってしないとフェアじゃないわ」
『フェア? マンガとかゲームのイベントのか?』
沙絵が少し残念な子を見る視線を向ける。
「ま、つまりはお互い様って事よ」
『はあ…なんつーか、そういうところ沙絵って頭固いよなぁ』
「そういう性格ですから」
『あはは、でもさ、沙絵のそういう性格も含めて好きだよ』
「ちょ…もう、今日の虎子は私を誉め過ぎだから! そんなに誉めてどうするつもり?」
『どうして欲しい?』
頬杖をついてじっと見つめると、沙絵は顔を反らして髪を撫でつけながら言った。
「ば、バカ! ご飯が冷めちゃうからさっさと食べるわよ」
『沙絵』
「な、何よ?」
『耳、綺麗なピンク色してるね』
「うぐ……ほ、ほら、さっさとご飯たべなさいよ、アホ虎ぁっ!」
うがあっと叫ぶ沙絵も可愛いなと思いながら、はーいと素直に返事をすると人肌くらいの暖かさになったご飯をもくもく食べるのだった。
◇◆
昼食後、一緒に洗い物をするとリビングで映画を一緒に観た。
主人公は子供の頃に母親に見捨てられたショックから、世界の色をモノトーンにしか認識出来なくなる。
ある日、立ち寄った図書館で学園祭のポスターを見付ける。
そのポスターだけは、少女の目に色鮮やかに映っていた。
少女はその原因を見付けるべく、学園祭に赴きポスターの作者に会いに行くという話だった。
「はあ――面白かった」
『うん、ラストシーンで世界に色が増えていくシーンとかすごく綺麗で素敵だったね――ところで、虎子?』
「んー?」
『何で観てる途中から私を後ろからハグして来るの?』
「あー、私テレビとか観る時クッションとかよく抱いてるからさ」
『て、クッション扱いかーい』
「いやぉ、へへ。沙絵の体柔らかいし、あったかいし、いい匂いするしで、いい抱き心地だったよ♪」
『いい方ぁっ!!』
「ぐはっ!!」
思い切りあごに頭突きをした。
冷蔵庫から誕生日祝いのケーキと飲み物を取り出すと虎子の自室に向かった。
ドアをノックすると、虎子が瞳を輝かせて現れた。
その視線の先にはチーズケーキがあった。
ふと、虎子と同棲したら、こんなことが日常になるんだなぁと思う……いい。
「沙絵? どした?」
『な、何でもないです』
机に虎子のチーズケーキを置く。
虎子が食べ始める前にお店で注文していたものを取り出した。
『これ……お願いして作って貰ったんだ』
私のケーキの影に隠していたのをそっと虎子のケーキに乗せた。
「おお?! か、可愛い……」
『チョコプレートにホワイトチョコで、
‘’Happy Birthday☆Torako☆‘’
という文字と合わせて右下にデフォルメされたちび虎と肉球の絵が描かれていた』
「すげぇ、写真撮ろう! あ、沙絵! 私と一緒にこのケーキを! そうだ、沙絵も一緒に撮ろうぜ!!」
幼子のように落ち着きなくわたわたとスマホを用意する虎子にくすくすしながら『はーい、落ち着こうねー』と頭を擦って促した。
「ん~♪ うっま~♪」
虎子がチーズケーキを一口食べると頬を押さえながらぐねぐねしていた。
『ふふ、ほんと虎子はこの店のチーズケーキ好きだよね』
私は笑いながら、ひと口サイズに切り取ったミルクレープを食べる。
『うん、おいしい♪』
「沙絵、買い物ありがとな」
『別に、2人でお店に行くと莉湖に見つかるし、私も食べたかったから気にしないで』
「あはは、それはそれで面白そうだけどな」
まったく、隠す気がない彼女を持つのも困りものだ。
「ところで、沙絵のミルクレープ、ひと口貰ってもいいか?」
『ん? いいよ』
ミルクレープをひと口大に切ろうとすると、手首を捕まれた。
『ちょ……虎……んっ……』
いきなり唇を奪われた。
「うん、ミルクレープ味」
『ば、バカ…』
赤面して抗議するも虎子は笑うだけだった。
ケーキを食べ終えて、コーヒーを1口飲んだ虎子がほう……と息を吐いた。
「はぁぁぁぁ――うまかったぁ」
『うん、またそのうち一緒に食べよ』
「そうだな。沙絵、お腹はふくれた?」
そう言って、服の上からお腹を擦ってくる。
『ちょ! めいきなり何するのよアホ虎っ?!』
「お、動いた?」
『バカ』
頭を軽く叩くと虎子がニッと笑う。
口元から覗く八重歯が見える。
幼さを残す笑顔は、私の心を温めてくれる。
けれど、同時にそれは私の心を噛み砕く牙でもあった。
虎子の瞳が妖しく光った……気がした。
刹那――肩を押されてあっけなくじゅうたんに倒される。
両手を付いた虎子が私を見下ろしていた。
熱い視線、その口元には八重歯がきらりと光っていた。
そう、この笑顔だ。
この笑顔は、普段自分の気持ちを檻に入れて何重もの鍵と鎖で封じているものをあっさりと破壊して、私の心を晒してしまうのだ。
まるで彼女に身も心も丸裸にされているような感覚。
羞恥心と情愛による――気持ちの解放。
この感覚に、いつしか溺れていた。
私は彼女の背中に手を回して、自ら唇を差し出した。
彼女が強引に唇を押し分け、歯の表面や隙間を舌がうごめく。
口を開き、迎え入れる。
『あ……ふぁっ……』
思わず声が洩れてそのまま舌と舌を絡め合う。
先ほどまで食べていた濃厚なチーズの匂いと共にコーヒーの苦味が口内に広がる。
目を閉じると、頭の奥で白い光のようなものがゆっくりと明滅していた。
思考がぼんやりしているのに、彼女の舌ははっきりと熱を持って感じる、不思議な感覚だった。
キスが終わり、離れる唇をじっと見つめる。
あれほど濃厚に絡み合っていたのに、失われてしまうと、すぐにまた欲してしまう。
彼女の口付けは私にとって媚薬であり、麻薬でもあるらしかった。
『…虎子……あ、あのね……キスマーク、なくなっちゃったの……だから…』
「……わかった。じゃあ、ちょっと痛いけど、今日はちょっと強めにするぞ」
『…うん』
腰を浮かせると虎子がニットとキャミソールを脱がされる。
ブラをずらされて露出した右胸に彼女の唇がそっと触れる。
わずかな湿り気と熱に胸がとくとくと高鳴るのを感じる。
そのまま、胸を強く吸われた。
『……んっ、は……虎、子ぉ……』
肌がきゅうっと絞られる。その痛みすらも私は甘い快楽に感じてしまい、目を閉じて虎子の頭を抱き寄せていた。
「沙絵……」
涼やかな声音にそっと目を開くと、虎子が心配そうな顔をしていた。
『ありがと、虎子』
その頬にそっと口付けをした……。
◇◆
夜、自宅で月曜日から始まる授業の予習をしているとスマホが震える。
画面には案の定、彼女の名前。
『もしもし、虎子?』
「よっす! 今日は誕生日会ありがとな♪」
『ふふ、どういたしまして。虎子が喜んでくれたなら良かったわ』
「当たり前だろ! 沙絵と一緒なら私はいつでも幸せだし」
『もう…すぐそういう事を言う』
「へへ、沙絵の恥ずかしがる声聞きたいし♪」
むう。アホ虎のくせに、こういう知恵は無駄に働くんだから。
「誕生日プレゼントもありがとな。大事に使わせていただきます」
『ああ、ランニングシューズね。以前に時々走ってるって聞いてたからさ。ま、正直何がいいのかわからなかったから、ショップ店員のお任せだけどね』
「いやぁ、沙絵からプレゼント貰えるなら、何でも嬉しいけどな」
『じゃあ、100均のパンでも良かったかしら?』
「沙絵が私の事を思ってプレゼントしてくれるなら、それだけで充分幸せだよ」
『……へ、へー。ちょっと虎子はチョロ過ぎじゃない?』
「あはは、まーな。でも沙絵の事に関してはチョロくてもいいかな」
『ば、バカ!』
照れ隠しにイジワルや皮肉を言ったのに、全然通じないどころかストレートでカウンターを決められてしまった。
その後、他愛のない会話をして、通話を切ると想像以上に長話をしていた事に驚いた。
そんなに夢中におしゃべりをしていたのかと思うと、じんわりと恥ずかしくなってくる。
まったく、彼女と付き合い始めてからの私は普段出さない大声で叫んだり、何度も恥ずかしくなって赤面させられたり、恥をかかされたり、あと……その…え、えっちな気持ちになったりと、今までの生活では考えられないくらいに感情を揺さぶられていた。
灰色の中学時代。
私の日常は退屈な変化のない景色を静かに過ごすだけだった。
いつしか人生とは、それの積み重ねなのだと思っていた。
事前に準備をして、ミスをしないように。他人のミスを他山の石として、いつも冷静に目標を見据え、着実に一歩一歩を進むこと。
決して不幸せではなく、かといって幸せと言っていいのかもわからない。
そんな平穏は、中学3年生の3月――桜の花びらが舞い始めた頃、彼女の告白によって一変した。
私の灰色な心は、彼女の紡ぐ突飛な言葉や仕草、笑顔などで色鮮やかに彩られていった。
きっとこれからも私は彼女のせいでたくさん恥をかかされたり、バカみたいな大声で叫んだり、恥ずかしい事をされたりしちゃったりするのだろう。
でも、それらすべてのものを引っくるめて私は虎子と共に歩みたいと思っている。
胸にある彼女から貰った新たなキスマークにそっと触れながら。
今までもこれからも、ずっと……――――一緒に歩んで行けますように……。
―――――――――続く―――――――――
虎子とわたし その1 三毛猫マヤ @mikenekomaya
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