第08話「……貴殿の言うとおり。戦いは愚かである。人が戦うべき敵は環境破壊だ。今は地球が持続可能か否かの瀬戸際であり、人類は協力して多くの課題を解決しないといけない――が、今も人は人同士で争っている」

「このスライム……殺してやる!」


 熟女が魔法の詠唱を始めます。


「~虚ろと無限をたゆたいし、暴虐なりし闇の王~」


 熟女の詠唱が終われば、あなたは即死するでしょう。

 あなたはスライムらしく、勝てない敵から逃げ出します。


「待ちなさい!」


 洞窟の奥深くへと逃げるあなたを追って、エロババアが走ります。

 もう若くないので、すぐ息が上がっています。


 あなたは、とある場所に向かっていました。

 そこは、洞窟の生態系の頂点に君臨する捕食者の狩り場。


「なっ!? 落とし穴っ!?」


 人喰いワームの巣に誘導されたババアは、運動神経が鈍った高齢独身女性です。

 若い頃のようにはいかず、穴に落下します。


「嘘っ!? おちんちんみたいに太くて、大きい……ヴェ"ア"ア"――ッ!」


 穴から、熟女の汚い断末魔が聞こえます。

 あとはダンジョンの食物連鎖がババアを処理するでしょう。


「……いいわ。触手プレイも大好物よ」


 ババアの声音には、余裕と自信が満ちていました。

 短い呪文の詠唱が終わると、穴から血と肉片が混ざった霧が吹き上がります。


浮遊魔法レビテーション


 飛行魔法を詠唱した無傷のババアが、穴から出てきます。


「覚悟はいいかしら? アタシのどすけべスライムちゃん」


 あなたは覚悟を決めます。

 ここで戦って散るのも潔いでしょう……が、それでは夢が叶いません。


 あなたはゼリー状の保護膜を床に広げて、服従のポーズを取ります。

 それは、いわゆる命乞いと呼ばれるモノでした。


「おっほっほっほ~! ようやくアタシの服を溶かす気になったのね!」


 あなたは屈辱に震えます。

 しかし生きるためには……女の子の服を溶かす夢のためには耐えねばいけません。


 その時です。

 洞窟の暗がりから、ババアと異なる若々しい女の子の声が聞こえました。


「エリック! そんな女の言いなりになっちゃ駄目よ!」


 暗闇を閃光が穿ち、ババアの垂れた巨乳に突き刺さりました。


「グガァッ……誰だ、アタシの邪魔をする愚か者は!」


 奇襲で瀕死の重傷を負ったババアが見たのは、粘液に覆われた骸骨でした。

 骸骨の心臓があるべき肋骨の奥には、スライムの核が収まっています。


「聞かれたからには名乗らないとね。私はリズリー。偉大な黒魔術士にして有名エロ同人魔導書作家で知られるエリー・ハロルド――あんたに師事していたッ、死霊術を得意とする見習い魔女よッ!」

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