第十九話 呼び方。

「今日はですねえ〜………はいっ!!」

「なんだこの量!?」


テーブルの真ん中に置かれたのは、びっくりするくらいの卵焼き。


「こ、こんなに……!?すっごいな」

「今日の朝言ってた通り、甘めの卵焼きをい〜〜〜っぱい作っちゃいましたっ!!」


こ、ここは……天国??

この子の料理+好きな料理=バカ美味いっていう公式はこの前証明されてるからなあ。


「他にも肉じゃがとか〜さんまの塩焼きとかもありますよ!!!」

「和食!好きだから嬉しいよ!」

「ふへへ、喜んでくれて何よりです!ささっ、食べましょ!!」


「「いただきます」」


それじゃあ一口…………う、うめぇ!!!!泣くほどうめえ!!


「えぇ!?そんな泣くほどですかっ!?!?」


どうやら本当に泣いてたらしい。

いやにしても美味いんだけど何この子天才!?


「いやマジで美味しいよ……!」

「感銘すら受けてるんですけど………そ、そんなに美味しいですか?」

「毎回言ってるじゃん、美味すぎる!」

「あ、ありがとうございます…!どんどん食べてください!」


その後も俺でもびっくりするくらいの米の量を食べて、お腹もバカみたいに膨れた。


「ごちそうさまでした」

「お粗末さまでした」

「そういえばなんだけど、なんで君こんな料理上手なの?教えてもらってたり??」

「………秘密です。あと、その〜…………『君』って言い方、気に入りません!」

「えっ」


えぇ……?そうかな??逆に名前で呼ぶとかの方がよっぽどキモいと思うけど。

じゃあなんて呼んだら良いんだろうか。


「私のことは……えと、その〜『結菜』はだめですか…?」


え、いきなり呼び捨て!?


「えっと〜いきなり呼び捨てはちょっと……」

「あ、ご、ごめんなさい!引かないでくださいよぉ!」

「い、いや全然引いてるとかじゃないから!戸惑ってるだけ!!」

「本当ですか?」

「本当だよ。異性の人を名前で呼ぶことなんてなかったし」

「じゃあ私が初めて、ですね?」


(その言い方は怪しい、ってバカなんか俺は。)

「いや俺も最初から呼び捨てはハードル高いから……『結菜ちゃん』、とかどう?」

「〜〜〜〜〜〜っ。わ、っかりました。そ……れでいきましょ、う」


そっちが言い始めておいてめちゃくちゃ顔赤くするんかい。俺だって結構恥ずいぞこれ。


「でもなんで急に?」

「一ヶ月も一緒にいるのに、呼び方が親しい感じなかったので……」

「なるほど。じゃあ明日からは『結菜ちゃん』って呼べば良いんだね」

「明日からじゃなくて今日からです!!」

「お、おお…わかった」



…………名前呼びって、慣れてないとめちゃくちゃ心臓バクバクするね。

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