第十三話 意外な一面

あの店員さん、やっぱり…和田さんじゃないのか?

マスクとか色々してるけど、雰囲気で分かる。

あと、美女はどこ隠してても美女を隠しきれないんだな。

まあ、気づいたからと言って声をかけたりするわけでもないし良いんだけど。

隼はこの感じじゃ気づいてないっぽいな。


「きょうすけぇ〜……抱きしめてぇ……」

「何でだよ、意味がまっったく分からん」

「和田さんが無理なら梗介で我慢しようと」

「美女が無理までは分かる、そっから男に行くのは路線変更しすぎじゃね?」


こいつずーーーっと酔ってるわ。

どうやって帰らせたらいいんだ。

こいつの家知らんし、そもそもどうやって運ぶんだよこのお荷物。

と、呑みながら途方に暮れていると、


「あ、あの〜」

「はい?」

「やっぱり、今日私の迷子を救出してくれた方ですよね」

「……ふっ、救出ってそんな大袈裟な」


大袈裟な物言いに少し笑いつつ、今の話でこの店員さんが和田さんということがわかった。


「やっぱり和田さんだよね」

「よくわかったね」

「いや、今日迷子を助けた記憶は和田さんにしかないからね」

「あっ」


見かけによらずこのドジっぽい感じ、ギャップ萌えが好きな人にはたまらんだろうな。


「ていうか、ここでバイトしてるんだ」

「うん、自分でできる事はしないと。親に迷惑ばっかかけてちゃいけないからね」

「偉いね」

「そういう君はバイトしてないの?」

「俺も一応コンビニバイトはしてる」

「へーそうなんだ。あ、話し込みすぎちゃったね。怒られそうだからそろそろ仕事に戻るね」

「おう、頑張って」

「うっす」


なんか自然と会話してたな。

あの人、意外と聞き上手なんだな…(意外は余計)。



「きょうすけぇ〜?いまだれとしゃべってたのぉ〜??」

「あーくっつくな鬱陶しい!」

「ひどい!?ねー誰としゃべってたの〜?」

「あーもう和田さんだよ和田さん!」

「…………きょうすけ酔ってるの〜?」

「信じてねえな、まあいいや。ていうかもう大分呑んでるぞ。このままだとお前をおんぶして帰るとか言う鬼畜の所業をしかねないんだからそろそろ行くぞ」

「もうちょい優しくてもいいじゃんよぉ!分かった行くよ」


会計を済ませ、隼のだる絡みからも解放され、家に着く。


「ただいま」

「あ、おかえりなさい。結構早かったですね。私の予想だともう1時間くらい遅いと思ってました」

「まあ、めちゃくちゃだる絡みされてたからさっさと呑んで解散した」

「その友達、寂しかったりしません?」

「大丈夫大丈夫、あいつ呑みすぎて悪酔いしてたし、早めに解散して正解だよ」

「……ちなみに、その友達って男性ですか?」

「ん?何を当たり前のことを。そもそも女性の友達なんていないよ」

「なら良かったです」


……いや何が?????


「あ、私ももう夜ご飯は済ませてお風呂にも入ったので、後は寝るだけの状態にはしましたよ」

「じゃあ俺今から風呂入ってくるわ」

「りょーかいです」


今まで自分が先に風呂に入ってたからっていうのもあるけど、女子高生が入った湯船に浸かるのめっちゃ…………嫌ではないけど、なんか…ねえ(誰かわかって)。

結局、どこか遠慮してしまいシャワーだけで済ませる俺氏であった。




全然ゆっくり出来ない風呂を終え、髪を適当に乾かし、時刻は22:00。彼女が読者をしているため、電気を消してすぐ寝ることは無く、3週間後に控えているテストの勉強をして暇を潰す。

テスト範囲は、コミュ力お化けの隼が何故か知っていたので聞いておいた。勉強と言っても、レジュメや教科書を見てるだけだけど。


そうして小一時間ほど経ち、彼女も読書の疲れがで始めたのか、ジャーキング(眠い時に首がびくってなるやつ)を何度か繰り返していた。


「そろそろ寝よっか」

「……そ、うですね」

「だいぶおねむだね」

「……子供扱い、してます?」

「してないしてない」


もう限界に近いのか、返事が遅い。

それと、子供扱いされたと思って頰を膨らませてるの可愛いかよ。とか言うと拗ねそうなので、心の中に留めつつ眠りについた。

なんだかんだ自分もアルコールが入ってたせいか、珍しくすごい深い眠りにつけたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る