第六話 大学生の一日

今日は月曜日。

一番しんどい日が訪れてしまった……。


「おはようございます」

「ああ、おはよう。朝早いね」

「はい、今日は学校があるので」

「あ、そっか」


遡ること1日前———。


「あ、明日月曜日だけど……学校、とかは?」

「それなら大丈夫です。体操服も制服も衣服一式はあるので」

「そう、なら良かった。でもちゃんと学校には通うんだね、えらいえらい」

と自然と頭を撫でてしまった。

「あっ」

「あ、ありがとうございます……」

プシューと音を立てるように赤面する彼女。………彼女?

「そういえば、名前」

「名前?……あ、名乗ってなかった!?」

「俺は山本 梗介、よろしく」

「私は…坂柳 結ゆい菜なです。よろしくお願いします」

「……これ、絶対一番最初にやる奴だよね」

「ですね。今まで名前も名乗って無かったんですね……」

「まあ、名前で呼ぶことなんてないと思うけど」

「それもそうですね……名前呼び、かあ……」



と、こんな出来事があった。

俺たち今まで名前も知らなかったのかよ、と思ったが別に不便では無かったので気にしていなかっただけである。


「ここからどの方面に行けば良いとかわかる?」

「大丈夫です。私こっちです」

「あ、俺もそっちだ。じゃあ途中まで一緒にいくか」

そうして、途中の駅まで一緒に歩いて彼女は高校へ、俺は大学へ足を運んだ。




その道中、面倒な奴に目をつけられていた。


「誰だよさっきのかわい子ちゃんは!」

「あーえっと〜……」


こいつは俺の数少ない大学の友達、山中隼。

隼は俺とは結構近いところもあったり、違うところもある。

例えば、俺みたいに大学に来るのがそこまで好きじゃないところとか、実は好きなアニメが同じなところとかかな?

逆に、俺みたいに喋らないタイプかと思えばそうでもなかったり、めんどい授業は俺は渋々受けるがこいつはばっくれたり。


つまり、普通の友人だ。


「ただの親戚だよ(多分違うけど)」

「へー……それにしても可愛かったな!?今度紹介してくれよ!」

「お前のストライクゾーン広いな」

「10代から40代までならいけるわ」

「ひっろ……って10代は危険な香りしかしないが!?」


まあこんな感じで軽口を叩けるほどの仲。


「あ、前の授業サボったから小テストの範囲の内容わかんね……梗介!!」

「…………はあ、ほらよ」

「神様仏様梗介様!!」

「毎回授業でないとこの人の講義ついてけないぞ?」

「だって話つまんないし」

「まあそれは否定しない」




そうして90分授業を数個受け、昼食を挟み、今日は午後からは実験をして今日の授業の自習をして帰宅する。

大体これがいつもの俺のルーティーン。授業数は先を見越してちょっと多めに取っている。

だから帰宅するのは17:00〜18:00あたり。

バイトがあればそこからさらに遅くなるって感じだな。

………誰に説明してんだ、俺?


「おかえりなさい」

「ああ、ただいま」

「お風呂にします?ご飯にします?」

「………お風呂で」


ちょっとだけ、ほんのちょっとだけあの憧れのセリフに期待していた俺がいた。


風呂に入り、一日の疲れがなくなってくのを実感しつつ浴槽から上がり着替える。



「いい湯だった」

「良かったです、じゃあご飯にしましょうか。ご飯はどれくらいで?」

「ちょっと多めで」

「ありがとう」

「じゃあ———」

「「いただきます」」


だいぶこの彼女と過ごす日常にも慣れてき———


「風呂上がりのお兄さん、いつもより艶っぽいですね」

「ぶぶっ!?」


全然そんなことなかった。てかなんだ今の?俺に色気なんて真反対の言葉だろ。


「はっ!?口に出てました……?恥ずかしっ…」

「まあいいんだけど…」


どこが艶っぽいの?と聞こうとしたが、彼女がさらに恥ずかしくなる未来が見えたでやめておいた。


「今日のご飯も美味しいよ」

「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!!こうして自分が作ったものに美味しいって言ってくれるのはやっぱり嬉しいです♪」


その笑顔が見れるなら毎日言いますけどね。

やはり美少女というものには一生慣れなそうだと改めて思うのだった。


(自分が可愛いということに気づいてない無自覚系美少女か…反則すぎるだろ)

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