第七話 美少女の好きなもの

食事中、そういえば今日彼女も学校行ったんだよな、とふと思い、学校の事を少し聞いてみることにした。


「そういえば、学校での君ってどんな感じなの?」

「私ですか?んー別に普通ですね。友達とたまに喋ったり、本読んだり、暇な授業は内職したりですね」


友達はいるのか、とちょっと安堵した。

あと、内職もしてる辺り俺と近しいものを感じる。


「本ってどんなの読むの?」

「ちょっと取ってきましょうか」


と言い鞄をガサゴソして持ってきてくれた。


「まあ、本屋で好きな作家の新作とか買ったり、図書室から借りてきたりして、こんな感じのを」


と言って俺の目の前に数冊見せてくれた。


「推理小説が好きなのか」

「はい。飽きないし、また読み返した時でも楽しめるのが良いですね」


なるほど、と相槌を打つ。

饒舌に推理小説の良さを語るところを見て、今日も彼女の新たな一面を知れた気がした。



次の日の朝。


「はあ…」

「どうしたの?珍しくため息なんか漏らして」

「今日、体育があるんです……」

「体育嫌いなの?」

「はい……私、運動音痴なので……」

「ふっ」

「な、なんで笑うんですか!?」

「いや、君にも苦手な事があるんだ、と思って」


俺も運動はそこまで得意では無いため、彼女に親近感が湧いた。


「そりゃ誰だってありますよ……しかも飛び箱ですよ飛び箱!あんなの醜態晒し器具じゃないですか!!」

「わかる。あれは下手な人からしたら公開処刑」

「私の気持ちがわかる人でよかったです。……あ〜行きたく無い〜」


と、珍しく駄々を捏こねる彼女を見て、思わず「かわよ」と言いたくなったが、何とか堪えて、


「ほら、時間過ぎて遅刻しちゃうよ?早く家出ないと」

「お兄さんの鬼!」


暫くして、ようやくゴネも収まり家を出る。


「じゃあ、帰ってきたらご褒美ください」

「体育の授業出るだけで!?ま、まあいいけど」

「やった!」


珍しい彼女からの要求で、思わず承諾してしまった。

「そんなに体育嫌なのか」という気持ちと、「その笑顔を見せられると甘くなってしまう俺も悪いのか」という気持ちの二つが湧いてきた。

いやだって美少女の笑顔ですよ?そりゃあ仕方ないよね?

てかご褒美って…何したらいいの??

参考になるか分からんが、隼に聞いてみよう。


「なあ、女子って何あげたら喜ぶと思う?」

「それ俺に聞く?非リアの俺に聞く?聞くじゃなくて効くわ」

「同音意義語を使いこなすな。まあそうだよなー」

「まあそうだよなーもやめろ。地味にくる」

「お前に聞くのはお門違いだったか」

「火の玉ストレートすぎる。てか誰にあげんだよ。もしやあのかわい子ちゃんか!?」

「……違うが?」


急に鋭い質問するのやめい。


まあ今日のバイト終わりに小鳥遊さんにも聞いてみよう。



大学が終わり、バイト先に着く。


「今日も宜しく〜!」

今日も今日とて小鳥遊先輩のテンジャンが高い高い。

「なんでそんな元気なんすか」

「そりゃ、梗介とおんなじシフトだからな!!」

「はいはい、面白いジョークありがとうございます」

「……ジョークじゃないんだが」


何か言ってた気がするが聞こえなかった。


「あ、そういえば質問なんすけど、女性がもらって嬉しいものって何ですか?」

「き、急にどうした!?」

「いや、何となく聞いただけっすけど」

「そ、そうか…まあ、その人が好きなものとかじゃないか?」

「好きなもの、か。ありがとうございます。参考になりました」

「そうか。ならよかった」



……本屋、まだやってるかな。

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