もう1人の自分

俺の名前は、澤島 海斗(22)。

大学を卒業し、大手企業の営業で、働いている。

大学でお笑いサークルに、入ってたことから、普通の人よりは、スラスラと言葉が出てくる。

そのおかげで、それなりに、営業成績もなかなかの、上位にいる。

おじさん先輩からは、煙たがられる存在でもあるが、心の中では(俺より、成績上になってから文句言えよ。)と、毎回思っている。

そんなある日、営業エリアに、新しい家が建っていたので、訪問してみることにした。

(ピーンポーン)

「はーい!どちら様ですか?」

「こんにちはー、株式会社〇〇の澤島と申しますー。本日お客様に、お話がございまして、お伺いさせていただきました。」

「今行きますー。」

その時、旦那さんも一緒に出てきたが、その旦那が、まさかの同級生だった。

「え?海斗?おい!海斗じゃねえかぁー!元気してたかよ!お前、頑張ってんだって?」

「おお、信成、お前も元気そうで何よりだよ。可愛い奥さんと、赤ちゃんまで、幸せそうで良かったよ。」

奥さんは、俺の顔を見るなり、ニコッと笑って、「ごゆっくりどうぞ、お茶にします?コーヒーーにしますか?」

「よろしいんですか?では…お茶でお願いいたしますー。」

俺と信成は、幼稚園から高校まで一緒だった幼なじみの、親友だ。

ココ最近、お互い忙しくて、なかなか連絡を取る機会がなかったが、こうして再会できて、嬉しくなり、ついつい長く話してしまった。

「でさぁ、俺の会社が扱ってる商品なんだけどな?ハイパージェットっていう、高圧洗浄機なんだけど、強さと、弱さをこのボタン1つで、変更できて、ストレート、シャワー、色んな用途に使える商品なんだよ。奥さん、少し、デモンストレーションさせて頂いても…。」

「あ、どうぞ!庭に水道がありますから。使ってください。」

俺は、外に出て、実演して見せた、少し、汚れた庭のアスファルトは、綺麗になり、車の汚れも、スポンジで、傷つけずに洗える代物だ。

「で、これの値段なんだけど、今だけ、120,000のところ、半額の60,000で、購入できるんだよ。この60,000なんだけど、来月でキャンペーンが終わってしまうから、今がチャンスなんだよなぁ。」

信成と奥さんは、2人で話し合っている。

すると、上司から、1本の電話が入ってきた。

俺は、信成と奥さんに、すみませんと言って、電話に出させてもらった。

「はい、もしもし、澤島です。」

「澤島く〜ん、今うちの会社の上層部が、君を見たと言って、電話が来たんだが、いくら成績がいいからって、すき家でこの時間から休憩するのは、どうかと思うぞー?」

「あ、いえ、多分それは、私ではないと思いますが…。今、お客様の家に来ていまして、商品を売り込み中なんですが。」

「そうなのか?ちょっとお客様に変わってみなさい。」

俺は、保留を押し、信成に電話を代わってもらうように頼んだ。

電話で信成は、俺が何時に来て、どんな説明を受けたか、淡々と説明していた。

「はい、代わるよ。」

「あ、かわりました、澤島です。私じゃなかったでしょ?はい、失礼します。」

俺は、首を傾げながら電話を切ると、信成は心配そうに、俺に聞いてきた。

「なぁ、もしかしてだけどさぁ、お前の上司が言ってたのって、ドッペルゲンガーじゃねえの?」

俺は、ため息をついて、信成の肩を叩いて、呆れ口調で呟いた。

「ドッペルゲンガーって、想像上のものなんだよ、世界には自分に似てる人が3人いるって言うだろ?それが、たまたまこの地域にもいたってことだよ。」

だが信成は、俺にそれでも忠告してくる。

「いいか!ドッペルゲンガーにあったら、驚かずに、名前を聞いて、澤島って言った瞬間に、全速力で逃げろ、でないと、お前が消えちまうんだよ!!」

俺は、少し汗をかき、唾を飲んだ。

「気をつけるよ。それで、このハイパージェットの購入はどうする?」

信成は首を縦に振り、購入を決定した。

俺は、売れたことが嬉しくて、鼻歌を歌いながら帰社した。

今日の売上書を、課長の所へ持っていくと、「どうやったんだ。」

「はい?」

「どうやって、すき家に行きながらこんなに売上を出すんだと聞いているんだよ!!」

「何度も言いますが、私は、すき家に行っていません!」

「まぁ、こんなに売って来てるんだから、これ以上は言わないが。引き続きよろしく頼むぞ。」

俺はその後、課長に一礼し、自分のデスクで帰り支度をし、まっすぐ家に帰ることにした。

しかし、信成が言っていたドッペルゲンガーが、頭から離れなく、外も薄暗かったので、少し怖くなって、早歩きで家に向かった。

しかし、信号に捕まり、向かい側を見ると、若干俺に似た人が、信号待ちをしている。

(あれってもしかして…。)

俺は、横断歩道をダッシュで渡ったが、その似てる人が、折り返して来て、俺を追いかけだした。

俺は、その事に気付き必死に逃げる。

信成はこんなことも言っていた。

「いいか、海斗、逃げてる時は絶対に振り返るな。何があってもだ。」

俺は、信成の話を信じていなかったのもあり、なぜ振り向いてはダメなのか聞いていなかった。

とにかく、走って逃げる、それだけを考えていたが、つまづいてこけた時、少し後ろを振り返ってしまった。

俺に似てるやつは、後ろにはいなかった。

俺は、安堵のため息をつき、立ち上がったが、目の前には、俺がいた。

その時に、信成が言っていた、名前を聞いて、自分の名前だったとき、何も言わず全速力で逃げなければいけなかったが、あまりの恐怖に固まってしまっていた。

すると、目の前にいる俺が聞いてきた。

「お前の名前はなんだ?」

俺は、無意識で答えていた。

「澤島 海斗だ。お前は。」

「俺も、澤島 海斗だ。同じ人間は2人もいらない…。」

その後の事は、正直覚えてない。

俺は、澤島 海斗(22)大手企業で営業をしている。

好きな食べ物は、すき家の牛丼。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

真夏の涼しくなる話集 恋真 真 @minori1118

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ