臆病な威嚇音

藤泉都理

臆病な威嚇音




 大小様々な布のひまわりで飾られたカチューシャを頭に着けて、小声で呪文を唱えると人間は蛇に変身。

 すぐに蛇にとって快適な温度が保たれていて、かつ、必要な物が揃えられている強靭な硝子箱に入り蓋を閉めてもらうと即移動。




 熱を感知するピット器官、振動を感知する皮膚と内耳、嗅覚を感知する舌と鼻を活用して、遥か昔に世界中のあちらこちらの地下に放置されたままの武器を感知して知らせる事。


 先祖から受け継いだ能力を使って、或る組織に協力している人間は遥か昔の莫迦どもに殺意を覚えた。


 恐らく、否、確実に、武器の除去は自分の代では終わらない。

 次も次もその次も無理だろう。

 ではいつなら。

 問われても想像などできやしない。

 星の数ほどに多いのだ。


 ああ。

 憤怒で身体が燃え尽きそうだ。


 こんな、こんなものに人生を次世代の芽に費やしてほしくないのに。


 本当は。

 自分の人生だって、




「おーい、また弱気になってんのか?とぐろまいてんぞ」


 箱ごと自分を持ち運んでくれる相方のアンドロイドに、人間はシャーと威嚇音を発した。


「おーおー。威勢がいいじゃねえの。その調子で頼むぞ」


 人間はまた、シャーと威嚇音を発した。


 うるさいって怒りの気持ちと。

 弱音を吹き飛ばしてくれてありがとよって感謝の気持ちと。

 やっぱり、うるさいって怒りの気持ちと。


 自分で終わらせてやるよって意気込みを込めて。




 威嚇音が世界中で発せられたのであった。







(2022.8.13)



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臆病な威嚇音 藤泉都理 @fujitori

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