第12話「評判」
俺の名はテオ。
テオ・ルーベック。十八歳。B級の冒険者でポジションは魔術師だ。
魔術師と言うのはポジションとしての魔術師ではなく分類が魔術師と言った方がいいかもしれない。俺は前線で杖を振り回して戦う男だ。
今はまだB級だが、近々C級に落ちるだろうと言うのが周囲からの評判だし俺もそう思っている。
そんな俺とは対照的に元々俺が入っていたエルトのパーティは近々A級に上がる。
そう思っていたのだが。
「エルト達が五連続の任務失敗?」
俺はセシルさんにそう聞き返した。
「はい。連続と言っても間に挟んでいるCランクDランクの依頼は問題なく達成していますが本来のランクであるB級の依頼は五連続で失敗しています」
あの連中は人の事を追放しといて何をやっているのだろうか。
正直ざまあみろと思う。
思うのだがB級の依頼が達成できていないとはどういうことだろう。
「新しい魔術師を入れたんじゃなかったんですか?」
俺はセシルさんにそう尋ねた。
俺の代わりにちゃんとした魔術師を入れてA級に上がると思っていたのに。
「それが、新たに加わった魔術師はみんなB級ランクの依頼失敗した後にパーティを脱退しています」
「みんなってことは五人入って五人共B級依頼失敗時に離れていったと?」
「はい。そういうことです」
俺は首をひねった。
魔術師が余っている時代とはいえ、きちんと戦力になる魔術師はいなかったのだろうか。
「俺が言うのもなんですけど、変な魔術師しか入らなかったんですか?」
「いえ、皆さんちゃんと実績のある方です。B級のリュートさんもいました」
「リュート!?」
会った事はないがリュートと言えば攻撃魔術に優れた魔術師だと聞いたことがある。
そんな人物を仲間にしておいても任務達成できなかったのか。もしかしてリュートって評判と違って大したことないのかな。
「あいつらはいつもの酒場に現れますかね?」
セシルさんに聞きながら俺は心の中で自分に問いかけた。
あいつらに会って何を言いたいんだ?
俺を追放したくせに失敗していることを笑うつもりか。
そんな小さい男に。……性根はそうだったとしてもそんな自分を出したくない。
会わない方がいいな。
うん。あいつらだって俺に会ったら嫌な思いするだろうし。俺もなんだかんだ気まずい。会わない事にしよう。……でも一目くらい見ておきたいな。
「それが、エルトさん達はこの前に依頼に失敗してから隣の領地のギルドに拠点を移すと言ってここを出て行きました」
「はい?」
会おうか会わないか迷っていたら会えないところに行ってしまった後のようだ。
「なんでですか?」
昔からずっとお世話になって近くの地理も勝手知ったこの領地から出ていく意味がわからない。
「私の想像ですが、テオさんに顔を合わせられなかったのではないでしょうか。それにここでの評判も良くなかったですから、新天地を求めたんだと思います」
セシルさんの言葉を聞いて納得した。
「そうですか」
ちょっと寂しいようなほっとしたような複雑な心境になった。
まあ、そのうちあいつらの評判も聞こえて来る事があるだろう。
人の事を心配しる暇があったら自分の事をなんとかしないと。
とりあえず俺はあいつらのことを忘れる事にした。
魔術の使えない魔術師として追放された俺の行く末 @kunimitu0801
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