第10話 夜の二人
夜。アイネの課外授業を終えた後、俺はベッドで授業で回収した課題の魔法陣を見ていた。
一見すると他の魔法陣と何ら変わりのない記録なのだが、見るものが見ればわかる異常な記録を持っている。
俺は隣のサナに魔法陣を渡した。
「学院長がキレてた理由はこれだろうな」
「ああ、確かにこれに気付かなかったのでしたら呆れますよね。職務怠慢と言われても言い訳できませんよ」
記録によると、魔法陣を発動する際に白い魔力を使ったようだ。白い魔力を持つのは俺の知る限り天使かその系列の者のみ。
俺やサナは見ようと思えば他人の魔力の色を見ることができるため、生徒たちを少しでも気にかけていればすぐにわかっていた。
ってことは、あの教室には俺が気づいていなかっただけで、天使の関係者がいたことになる。
……こりゃあ学院長に文句言われてもしゃーないか。でも、こんな場所に大物がいるなんて普通は思わん。
「何でこんな学院にいるんだろうな。正直、ここで学べることはそんなに多くないだろ」
「そうでしょうか。実際、天使にしてみれば大したことない学院ですが、あなたみたいな異常者が他にもいるかもしれませんよ」
俺みたいなゴミが学院長以外にもいるかもしれないってのは、ちょっと嫌だな。面倒ごとが向こうから殴り込んでくることになりそうだし。
「まあ、学院長の抱え込んでる面倒ごとの一つがこれなのは間違いなさそうだな」
天使とは過去の大戦で悪魔と対になって大暴れした種族だ。勝つためにありとあらゆる残虐非道な手を用いて、悪魔を成敗した。
当然、魔法についても造詣が深く、多種多様な魔法を使うことができる。こんな学院に通う必要は一切ない。
ちなみに、サナは天使が大昔に作った機械人形だ。その魔力の色は白く、天使の特徴を大なり小なり持っている。
「どうします? 現状、何も気付かずに二回も授業をしちゃいましたけど、このまま気付かない
天使は面倒だ。人間と比べてやることなすことが常に大怪獣のように周囲を破壊する。天使によって作られたサナも今はかなり薄れてきたがその性質を一部持っているため、時折とんでもないことをしでかす。
その度に俺が尻拭いをするのだから少しは感謝してほしいものだ。
面倒なことに巻き込まれたくないのであれば、白い魔力を持つ者とは関わり合いにならないのが一番の対策だ。
サナの言う「気づかない
「でも、既に学院長は押し付ける気でいるみたいだし、先手を打っておいた方が良さそうではあるな。いや、敢えて何もしなかったら何も起きないってことはあるか?」
いくら大怪獣であっても、寝ていれば周囲に影響はない。幸い、ここは魔法学院だ。面倒ごとは外に比べれば少なく、問題が起こることはないだろう。
そうに違いない。気付いてないふりが最も良い判断だ。
俺は一抹の不安を消し去ることに成功し、ベッドに身体をゆだねた。少し高価なベッドの感触が心地よい。
「私もそれが良いと思います。あちら側が私達に気付いているかは不明ですが、今日の時点であちらから何かアクションがないということは、考えていることは恐らく同じでしょうし」
言って、サナが俺に添い寝するように隣に寝転んだ。
厳しく、長い夜が始まりを告げる。
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