あのクソジジイ、オレに幼女のアバター寄越しやがったな
「……………………」
赤い絨毯敷きの長い廊下を歩いていく。
先ほどの控え室ほどではないが足の長い高級そうな絨毯が延々と続く。廊下の左右にはいかにも高そうな壺や絵や彫刻が一定間隔で置かれており、天井のシャンデリアに取り付けられたろうそくからの明かりがそれを明るく照らしている。
そんな廊下を無言で歩いていく。
イリスの前を歩くのはカーンだ。その後ろ、イリスの左右と後ろに合計三人の兵士が勇者を守るように従ってついてくる。
「ううむ……」
「どうされました、勇者様?」
イリスが唸っているのを耳ざとく聞きつけたカーンが立ち止まって後ろを振り返る。
「いや、何でもない」
「そうですか」
それだけ言うとカーンか気にした風でもなく再びイリスの歩幅に合わせてゆっくりと歩き出した。兵士もそれに続く。
そう、今の彼らは非常にゆっくり歩いていた。イリスの歩幅に合わせるためである。
「こいつら全員デカい」
イリスに突然襲いかかった第1勇者の男もそうだったが、イリスの周囲を固める四人の男達も相当に大きい。兵士たちはもちろん、四人の中で最も小柄なカーンでさえもイリスより頭一つ分以上大きいのだ。
いや――これはもう、認めざるを得ない。
なんだこのガキは。第1勇者はそう言った。
「あのクソジジイ、オレに幼女のアバター寄越しやがったな」
別にフィジカルで勝負するタイプではないので幼女でも実用性には全く問題がないのだが、男子高校生としては納得しがたいものがある。
「ぐぎぎ……」
今のイリスには歯を噛み、拳を握ることしかできなかった。
「こちらが謁見の間でございます」
そんなことを考えていると、いつの間にか大きな扉の前にやってきた。扉はきらびやかな鎧を身にまとった騎士が左右を守っており、その騎士にカーンが勇者の到着を告げる。
騎士が頷き、巨大な扉が騎士達の手によってゆっくりと開かれていく。
「第999勇者様のご入来!」
そうして、イリスは謁見の間に足を踏み入れた。
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