第2話 妹のおぱんちゅ

「分かってくれた?」


 笑顔で問いかけてくる妹を可愛いと思ってしまう俺は既に手遅れなのだろうか……。


「うーん……。」


「そんなに気になるならスウェーデンに行く?」


「何でスウェーデン?」


 聞けばスウェーデンでは腹違いの兄妹は結婚出来るのだそう。


 しかもなんと、子供が16歳になるまでは児童手当と両親手当が支給されるうえに……出産費用、大学までの学費、20歳までの医療費、とこれら全てが無料となっております。


 一旦それは置いといて。


「スウェーデンに行ったところで親が許してくれるかは……。」


「そこは大丈夫。」


 何でそう言い切れるんだろう?


 怜は当然と言った風に続ける。


「三人で結婚するようなぶっ飛んだ親だもん。」


 た、確かに……。


「仮に反対されたとしても、時々3人で「ピー!」してる親には言われたくないよ。」


 何それ? そんな情報ちっとも知りたくなかったんだけど。


 違う。きっとゲームの話だ。そう思う事にしよう。


「えっと、取り敢えず保留でお願いします。」


「まあ……今はまだそれで良いよ。」


 それで良いと言いながらも大変ご不満な様子の妹。


 口が尖っている。可愛い……。


「話も一区切りついたし、ちょっと出掛けて来るね!」


「ウェイト!」


 俺は怜の腕を掴み待ったをかける。嫌な予感再び。


 今度は何よ? と妹の顔に書いてある。


「念の為に聞くが……何しに行くんだ?」


「コンドーさん買いに行くんだけど?」


「……保留って言ったじゃん。」


 はぁ~と溜息をついてこちらを見る妹。


「お兄ちゃんは言われた事しかやらないタイプなの? そんなんじゃ社会でやってけないよ?」


「いやいや! 今の話と全然関係ないよね!?」


「保留にします。決戦の時が来た。コンドーさんが居ない。買って来なきゃ……。そんなんじゃムードぶち壊しじゃん。」


 え? これって俺が悪いの?


「保留にします。決戦の時が来た。我が軍にはコンドーさんが居る。勝利……の方が良いでしょ?」


 なんちゅう例えだ。


「……もしかしてコンドーさん使わない派? 前世ではちゃんと使ってたのに……。」


「そりゃあ使いますけど……。」


「なら良いじゃん。」


 そう言って怜は出掛けてしまった。


(まあ……。使う雰囲気にもっていかなければ良いだけだし。)


 しかし前世の恋人とは驚きの事実である。自他共に認めるシスコンの俺としては、嬉しいような悲しいような複雑な気分だ。


 幾ら何でも半分血が繋がっているとなれば、流石のシスコンオブザイヤー16年連続堂々一位の俺としても躊躇する。


 そして既に流されそうな気がしているが、俺の精神は高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応できる性質を備えている。そう簡単に流されてなるものか。




 暫くすると怜が帰ってきたようで、俺を呼ぶ声が聞こえてきた。


「お兄ちゃんちょっと来てー!」


 何だ?


 大声で呼ぶからには用事があるのだと思い、怜の部屋へと入る。


「あっ、来たね。早速なんですが……。」


「どうした?」


 彼女はエコバッグから数点の下着を取り出し、広げて見せてきた。


「どれが一番似合うかな?」


「……待たれよ。」


「どうしたの?」


 そんなエッチな下着を見せられると、とっても困る。大変困る。


 困り過ぎて、つい変な言葉遣いになってまった。


「それは兄に見せる物ではないと思います。」


「異議あり!!」


 バンッ!


 下着を広げていたテーブルを両手で強く叩き、異議を唱える彼女。


「前世は恋人で、戸籍上も他人の私達には適切な対応だと思います!」


「いや、半分血が繋がっているし。」


「ああ……お兄ちゃんったらもう……。」


 ?


 怜はもじもじしながら俺をチラリと見る。


「ちゃんと穿いて見せて欲しいって事だよね?」


 もうしょうがないんだから……とニヤニヤしながら服を脱ごうとする彼女。


(違うって。そうじゃないんだって……。確かに見せて欲しいけど。)


「普通の妹は兄に下着を見せません。」


「それってどこの国の話?」


「日本だよ!」


「今日の下着可愛い? みたいな事くらいどこの兄妹も皆やってるよ。」


 やってねーよ。いつから日本はそんな国になったんだよ。


 そんなんだったら、もっと明るい国になってるわ!


「で? 結局どれが好きなの?」


「俺としてはこの……穴が開いている奴かな。」


「お? これは流石。お目が高い!」


 ほっほっほっと笑いながら揉み手をし、すり寄って来る彼女。


(今どきアニメのキャラでもそんな奴いねーだろ。)


「これは大変人気の品となっておりまして、お客様だけ特別ですよ?」


 そう言ってどこの商人の真似なのか……特別感を出しながら再び自らのスカートへ手を掛ける怜。


「ちょっと待て。今見せなくて良い。」


「夜になってからって事ですな?」


 エセ商人はいっひっひと笑う。


「それも違う。」


「今日はお父さん達帰ってこないよ?」


 何だと? それはたすか…いや、違う。


「そういう問題じゃなくて……」


「そう言えば、お風呂まだだもんね?」


「違うんだよなあ……。」


 あんまりにもグイグイ来られるとうっかり流されてしまいそうだ。


 理性ではダメだと思いつつもかなり嬉しい気分の俺がいる。

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