奈落の底に眠る物
ラヴが引っ張り出してきた道具や武器、防具はどれも高性能を一段階超えたようなものだった。
斬り殺した相手の霊魂を閉じ込め、封印した霊魂の分だけ剣の性能が強化される剣、
これで体を覆えば大抵の相手からは存在を察知されないようになる薄く暗い布、
突いた相手の魂を直接損耗させる白い木の槍、
他にも色々あるが、どれも強力なものであることは間違いない。
「ネクロさん、私これにします」
そう言ってエトナが僕に見せたのはシンプルな銀色の短剣。だが、見た目通りのただの短剣では勿論ない。
「
この短剣は例え粉々に壊れても、海底に投げ捨てられても、持ち主が望めばその手に帰ってくる。そんな能力を持つ短剣だ。単純だが、短剣を投擲用に使うことの多いエトナにとっては良い武器だ。
「渋いのを選んだな。もう一つくらい構わないぞ? 君たちの戦力が上がることは私にとっても価値があるからな」
「じゃあ……これも貰います!」
エトナが選んだのは黒い布。マフラーのように使えそうだが、よく見ると、紫色で細かい文字の刺繡が刻まれてある。
「
これを体のどこかに着けていれば、布に刻まれた文字を消費することでバリアを展開できるらしい。展開している間は常に文字を消費していくのでご利用は計画的にといった感じだ。
「マスター、私も決まりました」
そう言ってメトが差し出したのは三つの腕輪。
「一つでなくても良いとのことだったので、残りの腕と足、全てに装着できるよう三つ選びました」
あぁ、既に片腕には
「万象踏破の腕輪、
一つ目の効果が腕力の強化、二つ目の効果がSTRに補正、三つ目の効果が拳によって発生するダメージを強化……なんだこの脳筋ビルド。
「ふふ、三つとは遠慮を知らないな。だが、勿論構わない」
ラヴは微笑み、そして僕に視線を向けた。
「さて、君はどうする?」
「うーん……」
どうしようか。まぁ、ある程度絞ってはいるけど。
「そうだね、これは確定かな」
僕は一つの指輪を拾い上げた。
「
効果は単純で、他人に対する強化効果に補正がかかるというものだ。自身に対するバフに補正はかからないが、魔物使いの僕にとっては問題ない。
魔物使いのバフスキルだけではなく、称号効果による従魔の強化にも補正がかかるので、かなり強力だ。
「後は……これだ」
当然、杖としての性能も高く、MPの回復を早め、魔術の効果を高めてくれる。また、所持者に危機が迫ると宝石に貯め込んだ魔力を使用してそこそこのバリアを張ってくれる。エトナが選んだ
「そうだ、後これも貰っていいかな?」
そう言って僕は金の柄と装飾に赤い刃の剣を持ち上げた。
「勿論構わない。良い物を選んだな。だが、使えるか?」
「うん、これは相当な高級品だね。心配は要らないよ」
一つは、竜特効。この剣はドラゴンに対して三倍の威力を誇る。限定的だが強力な効果だ。
一つは、吸血。この剣で与えたダメージの半分を所持者は回復し、更に剣は血を吸えば吸うほど一時的に強化される。
一つは、バリア無視。この剣は血を求める余り、あらゆる障壁も結界も無視することが出来る。この剣を阻めるのは鉄と肉だけだ。但し、剣が結界や障壁を素通り出来るだけであって所持者までもすり抜けられる訳ではない。
一つは、焼灼。この剣は竜の炎を纏い斬りつけた敵を焼き焦がすことも出来る。
最後に、代償。血を渇望するこの剣は所持者さえも欲求の対象だ。この剣の所持者は自らのHPを代償に竜の力を宿して自身を一時的な強化状態に出来る。
但し、この剣は誰しもが扱える訳ではなく、資格が必要になる。それは、竜殺し。しかも、単独討伐。つまり、僕ではこの剣を使えない。
「ストラ」
僕は
「君、竜殺しの経験ある? 単独の」
「やぁ、いきなりだね。何度かあるけど、武勇伝でも語って欲しい?」
僕は笑い、首を振った。
「君、今剣とか持ってないでしょ。だから、これ使いなよ」
「……本気かい?」
僕は頷いた。ススやイシャシャも剣士だが、ススは既に自分の剣を持ってるし、イシャシャは自分自身が剣だ。だから、適任はストラしか居ない。まぁ、一応ネロも剣士だけどあの子は剣というより空間魔術で斬ってるからね。そもそも単独で竜を倒せるか分からない。
「本気も本気だよ。君くらいしか使える人居ないからね」
「……じゃあ、有難く貰っておこう。ただ、この分は冥王との戦いで十分に報いさせて貰おう」
ストラはそう言って剣を受け取った。やっぱり、ストラには赤い剣が似合うね。グッドだ。僕は頷きながらストラを
「これで終わりか……しかし、二人は三つずつ選んで君だけ二つと言うのも不公平だな……そうだ。君はこれを持っておくべきだろう。いつか、必要になる」
そう言って、ラヴは一つの指輪をエトナに渡した。宝石も何もない銀の指輪だ。
「なるほど……良く分からないですけど、貰えるなら貰っときますねっ!」
エトナの指にそれが嵌まると、指輪が一瞬だけ淡い輝きを放った。もう一度だけ
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