加護

 僕が得た加護、それは正に理を超えた力だった。


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『加護:不滅の愛と永遠の慈悲ネヴァーエンディングブレス


 不死と停滞を司る神、ラヴ・マーシーの与えし加護。悍ましき不死と終わりなき停滞は彼女の持つ愛と慈悲の具現だ。


 [不滅の愛イモータル・ラヴ永遠の慈悲エターナル・マーシー


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 不滅の愛イモータル・ラヴは加護の所有者が誰かに心から愛されている限り不死化する能力、永遠の慈悲エターナル・マーシーは敵が死へと進んだ時にその部分を停滞させる能力、付けた傷は再生せず、殺せば蘇ることもなく死の状態で停滞し続ける。つまり、自分は不死身だが相手の不死身は無効化する、そんな理不尽な力だ。


「僕が知ってる加護と色々と違う部分が多すぎて、正直ちょっと混乱してるよ」


 先ず、加護の名前は~~の加護って形になるのが普通だ。ラヴだと、不死と停滞の女神の加護になるだろう。それに、加護の内容に力(フォース)がない。普通の加護なら~~の力ってのがあるはずだが、これもない。代わりに二つの特殊な能力が付いているが……これ、覚醒はどうなるんだろう。


「ふふふ、私は型通りなのが好きじゃないからね。何でも型破りにやってしまいたくなる質なんだ」


 だからって、型破りすぎじゃないかな? そもそも、こういうステータスの表記みたいなのって弄ろうとして弄れるものなの? いや、それは有り得ないか。説明文に彼女のってあるし、明らかに第三者が説明してるよね。だったら、単純に加護やそれに内包された能力に自分で名を付けてるってだけかな。


「そもそも、不平等だからという理由で加護の内容を全員同じにするという決まりも私は好きではない。だから、その能力も君固有の物だ」


「なるほどね、不滅の愛イモータル・ラヴの能力はそういうことなんだ」


 誰かに愛されていなければ発動しない能力なんて扱えない人じゃ無理だろうね。その点、僕は従魔達を愛しているし、従魔達からは愛されている筈だ。勿論、全員とは分からないけど。


「とはいえ、それは無敵の能力ではない。無限の再生力ではないから死なないだけで傷は負う、一度でも完全に滅びれば蘇ることは無い。そして、不死でも殺すことが出来るのはもう一つの能力である永遠の慈悲エターナル・マーシーが証明しているだろう?」


「そうだね、慢心は良くない。けど、ある程度のリスクを負えるようになるのがこの加護の強みであることも事実だね」


 今まで完全に弱点でしか無かった僕の存在が弱点で無くなるのはかなり嬉しいね。


「そうだ。この加護、覚醒(アウェイク)は出来るの? 力(フォース)が無いと出来ないのかな? 出来なくても文句はないくらい強力な加護ではあるけどね」


「出来る。二つの力、それぞれ覚醒出来るが……制御できるまではやめておいた方が良い。先に言っておくが、その加護に自重は無い。故に、その力を覚醒させることで君の身がそのままでいられるかは怪しい。取り合えず、覚醒させるのは危機的状況のみ。そして二つ同時に覚醒は禁止だ」


 良いな? と、真剣な表情で問いかけるラヴに僕は頷いた。


「おっけー、ありがとう。加護について聞きたいことはこのくらいかな」


 僕は言いながらも念の為に加護の説明にもう一度目を通していく。


「ネクロさんネクロさんっ!」


「ん、どうしたの?」


 名を呼ばれたので振り返ると、エトナが目を輝かせて立っていた。


「加護、どんなのだったんですかっ!? 教えてくださいっ!」


「ん、誰かに心から愛されている限り不死になる能力と……まぁ、殺した敵を絶対に殺す能力だね」


 僕が答えると、エトナは硬直した。


「だ、誰かに愛されている限り不死ですか? な、なんかもう能力の発動は決定事項ってくらい余裕ですけど……だ、誰に愛されてるって、感じですか?」


 やたら挙動不審なエトナに僕は首を傾げる。


「誰にって、エトナは違うの? 僕はエトナのことを愛してるつもりなんだけど。勿論、メトや他の従魔達もね」


 全ての従魔に平等な愛を持っているとは僕でも言えないが、それでも全ての従魔に主として愛を持っているつもりだ。向こう側からは分からないけど、エトナやメト、アースやロア辺りは僕に対しても愛を持ってくれてると思ってたんだけど。違ったら正直ショックだ。


「エトナ?」


「は、はいっ!?」


 顔は真っ赤だし声は裏返ってるけど……あぁ、そういうことかな。


「一応言っておくけど、恋と愛は違うからね。僕はエトナのことを愛してるし、エトナも僕のことを愛してくれてると思ってたけど、違うかな?」


「ね、ネクロさんっ! その、愛してるとか何回も言うのやめてください! 恥ずかしいんですからねっ!!」


 ……僕、愛されてないのか? なんだか、不安になって来たなぁ。


「メトは、どう?」


「言葉にするまでもありません、マスター」


 それは、どっちなんだろう。なんで目を背けながら言うんだろう。


「メト、僕に嫌な部分があるなら正直に言って欲しい。僕は主と従魔の間のコミュニケーションは大切だと思っているし、それによって築き上げられる関係は連携面に大きく影響すると思ってる。だから……」


 僕が紡いでいた言葉は、ラヴの手で遮られた。


「ふふふ、ネクロ。このまま見ているのも悪くないが、そのくらいにしておこう。まるで愛に飢えている少年のようだ。それに、安心しろ。愛と慈悲の女神である私が保証するが、君は愛されている。少なくとも、そこの二人からはな」


「……そっか。そうだね。君がそう判断したからこそこの加護を僕にくれたってことだよね」


「そうとも」


 ラヴは穏やかな笑みで頷く。背後ではまだエトナがわちゃわちゃしていた。

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