黒金星崩斬
『グォオオオオオオオオオオオオオッッ!?』
黒金の光が瞬き、赤竜の体を削りながら斬撃が散っていく。
「ディアン、本体ッ!?」
ネクロを庇ったのは分身ではない。本体が壁になったのだ。
『ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』
咆哮を上げるディアン。耐える赤竜の体にめり込んだ斬撃は光を強め、遂に爆発した。
「ッ、ディアンッ!」
視界を覆う黒金の光に目を伏せたネクロだが、直ぐに目を開けてディアンの様子を見た。
『ガァ、ガァアッ、グォォ……!』
凄まじい音と共に地面に墜ちるディアン。その胸には深く大きな斬撃の痕が残されている。
「ディアン、大丈夫?」
『グォォ……問題ない。はっきり言って致命傷だが、死にはしない。我がどれだけの時間を生きてきたと思っている。喰らっても死なんことは分かっていた』
そう言うディアンだが、地に伏せたまま起き上がりはしない。
『……とは言ったものの、肉を超えて骨もバラバラになり、臓器まで斬撃は届いている。今、下手に動けはせん』
「なるほどね……ありがとう、ディアン。一旦、これで回復しようか」
ネクロはインベントリから緑に煌めく液体の入った瓶を取り出した。
「グリーンエリクサー、通称グリエリだよ」
そのポーションを横たわる赤竜の体にかけると、内側から傷が塞がり、再生していく。
『ぬ、これは……ッ!』
「良かった、やっぱり効くよね。グリエリは自然治癒力を増幅させるらしいからディアンには良く効くと思ったんだよね」
ネクロは安堵したように息を吐き、ジールに視線を向けた。
「ジール。調子はどうかな」
「そう、だな……この体になってから、初めて……眠い、な……」
ジールの瞼が、ゆっくりと閉じていく。
「急げ、よ……魔物、使い……」
「そうだね。善処するよ」
力を使い果たしたからか、立ったまま眠りに就いたジール。
「さて、どうしようか。ネルクス」
「クフフ、この状態であれば私でも封印を施せますので取りあえずはお任せください」
そう言ってジールに近付いていくネルクスを見送り、ネクロはこの暗黒の世界を見回した。
「死の宝珠……どこにあるのかな」
「マスター、報告によると既に突出した強者は粗方無力化出来ているようですので、虱潰しに探せばいつかは見つかると思われます」
「まぁ、そうだね……」
ネクロは曖昧な返事を返し、漆黒の空を見上げた。
「ネクロさんっ!」
ネクロの背後から、聞き慣れた声が聞こえた。
♦……ネクロ視点
遂に強敵ジールを打倒した僕らの背後から現れたのはエトナだった。そして、エトナは僕が振り向くと同時に、上を指差した。
「上ですっ! 死の宝珠は上にありますっ!」
「へぇ、上か」
やっぱりね。僕は笑みを浮かべ、頷いた。
「この開けすぎた空間で物を隠すなら、一番マシなのはそこだよね」
敵の誰かの体内にでも埋まってるんじゃないかと考えもしたが、それはリスクが高すぎる。逆に地下だが、それも微妙だ。この空間の地面はそこまで深くないし、勝手に塞がってしまうので地下なんかに埋めたら宝珠にどんな影響があるか分からない。
「空、ね……」
僕は見上げていた視線を下ろし、ディアンを見た。
「ディアン、乗せてってよ」
『む』
嫌そうな声を漏らすディアンに、ネクロは笑う。
「ドラゴンに乗って大空を飛ぶ。テイマーの夢の一つだよね。尤も、ここの景色はお世辞にも良いとは言えないけどね」
『庇うのでは無かったな……』
ドラゴンライダーだ、と笑うネクロにディアンは溜息を吐いた。
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