竜炎、神炎。
暗黒の世界を焼く二つの炎。片や、神殺しの竜の炎。片や、神の呪いの炎。どちらも尋常ではない二つの炎は激突した。
「今ここで死ねッ、人狼ッ!!」
「んな炎でオレを殺せると思ったかァッ!? 火力が足んねェなァッ!! オレの炎で焼いてやるよォッ!!」
炎熱を無効化するエクスへの有効打となる神殺しの炎だが、それはエクスの体に触れることなく神呪の炎に焼かれていく。
「炎で炎を焼くだと……? だが、手がない訳ではないッ!!」
「だったら見せてみろやァッ!! その手って奴をよォッ!!」
自身の炎を防御壁のようにしているエクスだが、クレッドは覚悟を決めたように更に踏み込んだ。
「『涯天炎破、炎天の五月雨』」
「
赫灼たる光が幾度も瞬き、超高熱の刺突が目にも留まらぬ速さで繰り出される。それに対抗するように、氷の鉤爪が振り回され、その槍をいなし、弾き、しのぎ切ろうとする。
「破ァッ!!」
「うぉッ」
だが、寧ろクレッドはその鉤爪に槍を強くぶつけて、大きく弾いた。エクスは僅かに体勢を崩し、クレッドはその僅かな隙を見つけ、ねじ込む様に一歩踏み込む。
「赫王撃ッッ!!!」
完璧なタイミング。最良のコース。最高の一撃。エクスに深く突き刺さろうとする槍は、エクスの体内で神殺しの炎を溢れさせ、内側から全てを焼き切る……筈だった。
「ッ!?」
槍が、僅かにズレた。足元の地面に氷が張っていたのに気付かず、体勢が僅かに崩れたのだ。しかし、槍はそれでもエクスに向かって進む……が、エクスが神殺しの槍を凌ぐには、その僅かなズレだけで十分だった。
「オラァッ!!」
タイミングは完璧ではなくなった。コースも最良から外れた。力が一瞬抜けた一撃は最高とは言えなかった。
ベストではないが、ベターな一撃。だが、それではエクスに届かない。
「ぐ、ッ!」
クレッドの槍は、後ろに下がりながら振り上げられた鉤爪に弾かれてしまった。
「こんだけ近けりゃァ! そんだけ隙を晒してりゃァッ!!」
槍をかちあげられ、隙を晒したクレッドの胸に、凍てついた鉤爪が食い込む。
「
クレッドの胸が凍り付く。足元が凍り付く。
「ぐッ、まだ――――」
「オラァッ!!」
槍を振り下ろそうとするが、その腕に鉤爪が突き刺さる。腕は凍てつき、槍は空中で止まる。燃え盛る炎は凍り付くスピードを抑えることは出来ても、凍結自体を回避することは出来ない。
「これで、終いだ」
クレッドの四肢が、胴体が、そして頭が凍り付いた。
「必殺」
燃え盛る氷の鉤爪。体から溢れる赤黒いオーラ。身体中に巣食っていく罅割れるような赤黒い亀裂。
「――――
走る衝撃。それは氷像と化していたクレッドの体をバラバラにぶちまけた。それと同時にエクスの体に走っていた赤黒い亀裂が弾け、そのまま深い傷となった。
「……中々楽しかったぜェ、クレッド」
粉微塵となったクレッドの体はエクスが一歩歩く度に凍てつきが迸り、その肉片達を凍らせていく。エクスが完全にこの場を去る頃には、肉片達は全て氷に包まれていた。
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