トゥワイス
人狼から放たれるのは凄まじい熱気と冷気。エクスの周りは陽炎のように歪み、キラキラと氷の粒子が舞っている。
「……止めを刺しておくべきだったか」
呟くクレッドに、エクスは笑う。
「いいや、確かにオレは死んだぜ? テメェはオレを殺した。だが……蘇った」
「……蘇った、だと?」
エクスは頷く。
「あァ、蘇った。復活って奴だ……そして、敬意を以って教えといてやる」
エクスは、指を二本立てた。
「二つ。それが、オレの残りの残機だ。つまり、オレはあと二回の復活を残してるってことだァ」
「……バカな」
余りの理不尽さに思わず言葉が漏れるクレッド。
「オレに勝つんだろ? 竜戦士。だったら、あと三回オレを殺せェ……無理なら、テメェの負けだ」
トゥライス・ウェアウルフから
「それと、さっきも言ったがオレは傷付けば傷付くほどに強くなる。時間が経てば経つほどテメェは不利だってことだァ……さァ、どうする? それでもテメェはオレに勝てるかァ?」
挑発的に睨むエクスを、クレッドは睨み返した。
「愚問だな」
クレッドは槍を持ち上げ、構える。
「勝つのだ。負けるかもなどと怯えながら戦う敗北主義者は、このルファス帝国には居ない。当然、このクレッド・ベルフィストもッ、勝利以外は見ていないッ!!」
クレッドは燃え盛る紅蓮の剛槍を掲げ、エクスへと突進する。
「ハハッ、良いなァ! ここで諦めるなんて言われたらぶっ飛ばすところだったぜェッ!! まァ、どっちにしてもぶっ飛ばすけどなァ!」
「『涯天炎破、封神赫弧』」
エクスの数メートル前、クレッドは槍を地面に叩きつける。すると、その地点から炎柱がぶわりと立ち上がり、エクスを囲むように弧を描いて炎の壁が形成されていく。
「あァ? オレに炎は……いや、なるほどなァ」
ただ赤く、紅く、朱い壁。炎の壁。ドーム状にエクスを囲んだそれは、エクスにとっては取るに足らないものである筈だった。
「当たり、か?」
「ほォ……あァ、大当たりだ。いや、大当たりって程でもねェが……こりゃァ、死ぬかもなァ」
その赤い炎のドームは、ただの炎では無かった。涯天炎破。竜の力と戦士の技を掛け合わせた最強の槍術。それによって作り出された炎は、所謂……神特効を持っていた。
「ハハッ、クソ神の呪いはここまで邪魔しやがるってこった」
そして、エクスの操る炎は神の炎。それにより、エクス自身も僅かな神性を有している。故に、神特効を持つ炎の壁はエクスにとっても厄介なものであるということだ。
「……まァ、構わねェ」
エクスはスラリと伸びた氷の鉤爪をもう片方の鉤爪で研いだ。
「先に、宣言しといてやる。オレは、逃げねェ。ネクロに頼んで安全地帯に逃げ込むことは、しねェ。オレがもし、死を目前にしても、だ」
エクスはその鉤爪を一本、クレッドに向けた。
「だから、テメェも逃げるな。オレと死ぬまで戦え。良いなァ?」
クレッドは燃え盛る槍を構えたまま、笑った。
「当たり前だ、犬っころ」
一歩、クレッドが踏み出した。足元から、鎧のような鱗の隙間から、炎が溢れる。
「ハハッ、そうかよ。安心したぜェ? トカゲ野郎」
一歩、エクスが踏み出した。足元から、真っ白い体毛から、炎が溢れる。
「……」
「……」
一歩、更に一歩。静寂が場を支配する。そして、また一歩――――
「『涯天炎破、神焼竜槍』」
「
紅蓮の槍が突き出され、神殺しの炎が溢れる。氷の鉤爪が振り回され、神呪の炎が溢れる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます