インセイン・ヒュドラ

 解析スキャンが発動し、ヒュドラのステータスが表示される。


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 Race:狂い堕ちる多頭蛇竜インセイン・ヒュドラ Lv.82

 Job: ──

 Nameless

 HP:1020

 MP:938

 STR:502

 VIT:488

 INT:487

 MND:559

 AGI:358

 SP:810


 ■スキル

 □パッシブ

【HP自動回復:SLv.9】

【MP自動回復:SLv.6】

【並列思考:SLv.9】

【打撃耐性:SLv.6】

【魔力視認:SLv.5】

【高速再生:SLv.2】

【毒液生成:SLv.3】

【溶解液生成:SLv.3】

【麻痺毒生成:SLv.3】

【悪食:SLv.1】


 □アクティブ

吐息ブレス:SLv.4】

【咆哮:SLv.3】


 □特殊スキル

狂い堕ちる多頭蛇竜インセイン・ヒュドラ


 ■状態

【従魔:ネクロ】

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 なるほどね。ステータスはかなり高水準だね。それと、並列思考のレベルが異常に高いのは頭が沢山あるせいかな?


「さて、君はどんな力が欲しい?」


「ギャゥ……? (どんな力……?)」


 聞き返すヒュドラに、僕は頷いた。


「うん。例えば、大岩も一撃で砕けるくらいの力持ちになりたいとか、風のように速く走りたいとかさ」


「ギャオゥ、ギャァゥ……(大岩は既に一撃で砕けるし、速く走ることに興味はねぇな……)」


 少し悩んだ素振りを見せた後、ヒュドラは一つ頷いた。


「ギャォ(そうだ)」


 何か閃いたらしいヒュドラに、僕は首を傾げる。


「ギャゥ、ギャオゥギャウ(俺がスライムに呑まれる前、俺の頭は一つごとに意識っていうか、精神っていうか、そういうのが宿ってたんだ)」


「九つの頭に、一つずつ人格があったってことだね」


 竜格? 人格? まぁ、なんでもいいね。


「ギャォゥギャゥ、ギャァォ……ギャゥ(その頃の常に他の自分と話せる感覚っていうか、その心地良さを取り戻せるなら……そんな力が良い)」


 なるほどね。大体分かったよ。


「難しそうだけど、再現出来なくは無いかもね」


 分け身とか使い魔とかで行けるかな。取り敢えず、分け身のSLv.3で270SP。これで、九体まで自分の分身を作る能力が得られる。本来は分け身で作った分身は自分で完全に制御するか、あまり賢くはない自動操作に任せるかしか無いが、並列思考があればスライムのミュウと同じ方式で分身体にも意識を分けられるかも知れない。

 そして、使い魔。SLv.3で210SPだ。こっちは、スライムのような肉体を利用して体を一部分離させ、それを依代に使い魔を作れる。一応、二つのやり方でアプローチしてみよう。


「後は……」


 一応色々調べつつ、スキルショップを眺めていると、僕は気付いてしまった。


「……これじゃん」


 僕はヒュドラの並列思考のスキルレベルを10まで上げると、それが条件になる二つのスキルを取得した。


「分裂思考、思考統制」


 分裂思考は読んで字の如くだ。並列思考で分けられる思考の数だけ、思考を完全に分裂させられる。これによって分裂する思考は飽くまでも本人ベースだが、完全に同じ思考ではなく、言ってしまえば少し違う人格になる。

 つまり、並列思考をしたところで結局その本人が思い付くものにしか行き当たらないが、分裂思考はそうではない。完全に自分とは違う思考が出来るということらしい。

 但し、飽くまでも本人ベースなので、脳の使い方は全く異なるが、使っているのは同じ脳みそ的な感じらしい。


 それと、思考統制はよく分からない。よく分からないが、分裂思考と併せて取得した方が良さそうだったので取得した。これで更に200SPだ。


「良し、これで……っと、どうしたの?」


「ギ、ギャゥ……ギャ、ギャゥ……」


 目の前で頭を抱え出したヒュドラ。僕は思わず駆け寄った。


「ギ、ギャ……ギャゥ……ギャ、ギャギャゥ(い、や……戻って来たんだ……オレが、完全に)」


 苦しそうなうめき声とは裏腹に、その言葉は嬉しそうだった。

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