キエカの山
シルワを仲間に加え、取り合えずムーンに任せた後、僕らはキエカの山を登っていた。
「んー、快適ではあるけど冒険感は薄いよね」
「まぁ、それはそうですね……でも、今回はゆっくりしてる暇もないですし、しょうがないですよね」
そう。キエカの山を進む僕たちだが、その道に敵は居ない。何故なら、僕らの周囲には沢山の従魔が居て、近くの敵を掃討しているからだ。
「熊さん、思って以上に強いね。奈落にも連れて行こうかな」
僕たちの視線の奥で魔物を次々と屠っていく熊さん。メルメモ大繁茂洞窟の本来のボスだった
「グマァ」
この奇妙な鳴き声だ。鳥はトリィと鳴かないし、犬はイヌゥと鳴かないが、彼は例外だったらしい。まぁ、鳴き声は置いといて彼は結構強い。
「あの熊さん、さっきの洞窟のですよね? 倒すときは瞬殺でしたけど、仲間になると強いですね」
「まぁ、強化したし……そもそも、この山の野良の魔物と僕らとじゃレベルが違いすぎるからね。比べたってしょうがない」
黄色い樹のような肌と、樹皮の中から漏れ出る緑の淡い光。そこそこ奇妙な見た目のグマの元々の能力は、高速で植物の成長を促す緑の光と黄色い樹の皮だ。剥がれても燃やされても大したダメージのない樹の外殻、それを高速で再生できる緑の光。高いフィジカルと持続力で敵を屠り続けられる。アンデッド化した彼には体力の限界などないので、本当に敵を屠り続けることが出来る。
「うん、良いね」
そんな彼に僕が与えたスキルは光属性耐性、火属性耐性、斬撃耐性、
筋力、機動力、耐久力、全てが高水準。圧倒的パワー。ステータスアップ系のスキルを山盛りで積んでみた。攻撃を受ければ受けるほどステータスが強化される耐受強身、低HP時の耐久力をアップさせる根性、彼自身の相性がいい光合成、敵を屠れば屠るほどステータスが上がる
どうやら、凶暴化と巨大化は基本は必要な場面だけで使っているようで、この山の魔物相手には使っている様子は無い。
「さて、そろそろ……ん?」
そろそろ山頂だ。その言葉を発するよりも早く僕らの前の地面が隆起してそこから何かが現れた。
「手?」
毛むくじゃらの手だ。一つじゃない。僕らの周りにその手はどんどんと現れ、そこから何かが這い出てくる。
「おー、沢山出てきますよ。これって、確か……」
「グノーム、だね。僕らの目当てじゃないけど彼らの王がここのエリアボスだったはずだし……相手をするのも悪くないね」
「なんにしても、これだけ包囲されていれば戦闘を避けるという選択肢は無いかと」
ほぼ一頭身で丸っこい茶色い毛むくじゃらの体、彼らはグノーム。元は地の精霊であるノームだったらしいが、色々あって闇落ちした一部のノーム達が彼ららしい。ゴブリンに似ているが、彼らよりも知能が高く、手先が器用で地中での生活に適している。代わりに彼らほどの繁殖力は無い。
警戒すべきはその爪と知能だ。爪はそう長くは無いが、鉱物を簡単に削ってしまえるほど鋭く硬い。また、毛に覆われたその筋肉も発達しており、人間など片手で持ち上げられるほどだ。そして、彼らの知能は人間に匹敵するものがあり、集団で作戦を立てて襲ってくる。恐らく、今僕らを襲っている彼らにも何か作戦があるのだろう。僕らがかなり強い敵だってことは既に分かってるだろうからね。
「さぁ、取り合えず包囲はされたけど、こっからどうやって僕らを狩るつもりなのかな?」
不敵に呟いた僕の足元が、ぐらりと揺れた。
「あ、ネクロさん。これ落ちます」
「え?」
真っ逆さまに落ちていく中、僕はミュウを呼び出して守るように包み込んでもらった。
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