シルワ・グリメラ

 さて、まずは本人に聞いてみようか。


「シルワ、僕はある程度好きなように力を与えられるんだけど……どんな力が欲しいかな?」


「ん~、みんなを守れる力が良い!」


 みんなを守れる力、ね。


「確かに君の力なら相性も良いかもね」


 ステータスこそそこまでの耐久力は無いが、シルワの能力なら本体である彼の人のような肉体まで到達できないように根や枝を展開できるだろうし、凄まじい回復力もあるからタンクビルドも何とかなりそうだね。


「既にある回復系のスキルが高速再生と光合成ね」


 高速再生はスキルレベル四、光合成はスキルレベル六。どっちもかなり高いね。


「取り合えず、光合成の効果をどこでも発動しやすいようにしたいね」


 グラと同じように光魔術も考えたが、どうせなら別のスキルを与えようかな。


「シルワ、君から伸びる根とか枝って君の体なのかな?」


「ん~、どっちもあるよ。自由に動かせるのは自分の体で、簡単な動きしかできないのが自分の体じゃないのだよ」


 何かよくわかんないけど、取り合えず自分の体って判定で枝や根を出せるみたいだね。


「【発光】【光の化身】」


 発光は単に体から光を放つだけのスキルで、光の化身は発光をスキルレベル5まで上げてようやく取得できる50SPのスキルだ。凄まじく強そうなスキル名だが、実際は地雷スキルと揶揄されるような代物だ。効果は自身の光を浴びた仲間と自身のステータスを強化するスキルだ。だが、普通にバフ系のスキルを取ればいい上に本人も眩しいので全く使われていない。


「これで150SPだね」


 残りは510SP、回復面の強化と全体バフは手に入れたし、後はどうしようかな……まぁ、枝や根も含められるなら体が大きい判定に入るし、これもありだね。


「ヘイトを取れるスキル……うん、これかな」


 取得したのは【存在感】だ。文字通り存在感が強まるスキルで、このスキルの所持者を視界に入れるとやたら気になってしまう。MNDの数値にもよるが、長時間視界に入れていると狙わずにはいられなくなる。が、基本的に視界から外していれば問題ないので通常はあまり使われていないスキルだ。しかし、シルワなら視界に自分の体を入れておくくらい問題ないだろう。


「環境適応、これも取っとこうかな」


 全身が植物すぎて環境によってはだいぶマイナスを受けそうだから取っておいて損はないだろう。これで50SPと50SP。残りが410SPだ。


「後は、そうだね……」


 光の化身も存在感も混戦の中で敵味方の判定を付けるのが難しそうだし、後は戦場全体を認識できるようにする必要があるね。


「思考加速、並列思考」


 先ずは思考を追いつかせるようにこの二つだ。思考加速はSLv.3まで取得し、並列思考はSLv.2まで取得した。これで思考速度が四倍、同時に三つの思考を持てるようになった。合わせて200SPの消費だ。残りが210SP。


「空間認識、多眼」


 ここら辺かな。空間認識は視界に頼らずに自身の周囲の空間の形を把握できるスキルだ。SLv.1では形が分かるだけで生物と地形の区別が付くわけではないのだが、3まで上げているので色と音まで分かるようになっている。そして多眼は体のどこからでも目を作り出せる能力だ。これで伸ばした根や枝に目を生み出すことができる。空間認識は飽くまで周囲しか認識できないので遠くのことは分からないので、このスキルでその弱点を補おうというわけだ。これもSLv.3まで伸ばしているので、最大で9つの目を生み出せる。


 これで180SP消費、残りが30SPだ。残りは……気配察知で良いかな。SLv.2まで上げた。


「うん、これで完成かな」


「ね、ねぇ、お兄さん……僕、どうなっちゃったの?」


 僕は微笑み、答えた。


「みんなを守れる強くてかっこいい男の子になれたんだよ」


 答えると同時に解析スキャンを使う。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 Race:精霊溶けし歪王樹ミックスト・デンドロン Lv.12

 Job: ──

 Name:シルワ・グリメラ

 HP:283

 MP:832

 STR:302

 VIT:289

 INT:521

 MND:543

 AGI:258

 SP:0


 ■スキル

 □パッシブ

【HP自動回復:SLv.8】

【MP自動回復:SLv.7】

【光合成:SLv.6】

【高速再生:SLv.4】

【毒液生成:SLv.3】

【魔力視認:SLv.3】

【思考加速:SLv.3】

【空間認識:SLv.3】

【多眼:SLv.3】

【並列思考:SLv.2】

【存在感:SLv.1】

【環境適応:SLv.1】


 □アクティブ

【発光:SLv.5】

【土魔術:SLv.3】

【調合:SLv.2】

【光の化身:SLv.1】


 □特殊スキル

【森の精霊】

歪みし王の樹エビルキングデンドロン


 ■状態

【従魔:ネクロ】

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 うん、良いね。攻撃性能は高くないけど、そこは後々なんとかできると思ってる。


「ねぇ、シルワ。君が作り出せる木は知ってれば何でもいいのかな?」


「んーん、見たことがある木なら何でも生やせるよ」


「それって、欠片でも大丈夫?」


「うん、大丈夫」


 へぇ……今日はちょっと、忙しくなるかもね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る