死体は嘘を吐かない

 見事にゾンビと化したホトンから話を聞き出したところ、色々と収穫があった。


「忍の集団、月導衆が帝国と契約して僕を狙ってる……か」


 敵が増えるばっかりでなんとも世知辛い世の中だが、その分仲間も増やせているのでプラマイゼロだ。


「この魔物も帝国と月導衆が共同で作ったものらしいですけど、帝国さん、技術だけは本当に高いですね……」


「そうだね。帝国は生物兵器的のものを作るのが得意らしい」


 精霊と魔物を無理やり混ぜ合わせ、強力な生物兵器とする実験。それは確かに成功していて、僕らの前に立ちはだかった。彼に僕らを倒せるほどの強さは全く無かったが、帝国側としてはそれで問題ないらしい。


「飽くまでも僕らの実力を確かめ、手の内を晒させるための観察用だった……か。それで言うと、まんまと目的は達成されちゃった訳だね」


 見せていない戦力はまだまだあるが、それでもエクスやエトナ、ネルクスにメト……かなりの戦力の情報を渡してしまったことになる。


「にしても、この洞窟の魔物が僕らを呼び出す為の釣りだったってことは……」


 僕は、これから行こうとしていたキエカの山の怪物も怪しいと考えた。


「いえ、キエカの山の怪物はかなり昔からある話なので、帝国が用意したものでは無いと思われます」


「それに、もしあっちも帝国の罠だったらホトンさんが知らないのは変ですしね」


 確かに、それはそうだね。両方罠だったとして、ホトンが片方しか知らないなんて非効率だし有り得ないかな。


「そういえば、ちゃんと人間をアンデッドにしたのは初めてかな」


「はい、あんまり良い気分じゃないですね……」


 そうだね。流石の僕も人をゾンビに変えるのは抵抗があるよ。まぁ、必要があればこれからもやるけどね。


「元人間だけあって、SPもしっかり振られてるし弄ることもないね。まぁ、ムーンのところで指示を仰いでくれたらいいかな」


 と、そうだ。ムーンに連絡してなかったね。


『やぁ、ムーン。元気かな?』


『お久し振りです、偉大なる我が主ネクロ様。本日はどのようなご用件でしょうか?』


 直ぐに通信テレパシーが繋がり、ムーンの上品な声が聞こえてくる。


『ちょっと良い仲間が増えたんだけど、僕よりもムーンの方が扱えそうだから話しとこうかなと思ってね』


『良い仲間、ですか?』


『うん。元上忍のゾンビだよ。毒で死んでるから見た目はあんまり汚れてないし、誤魔化せば普通の人に見えると思うよ』


『なるほど、人里に潜入させるのも容易ということですか』


『そうだね。しかも、僕の従魔になって生前よりステータスは上がってるはずだから、戦力としても十分だと思うよ。それに、これから敵として僕らを襲ってくるっぽい月導衆の内部情報も丸々聞き出せる』


『承知しました。これで戦略の幅が更に広がります。……ところで、メルメモ大繁茂洞窟の方は?』


『あぁ、上手くいったよ。まぁ、詳しい話はウィスプから聞いてね』


『えぇ、分かりました。この度は私の為にありがとうございます、偉大なる我が主様』


 別に、君の為にゾンビ化した訳じゃないんだけどね。


『うん、まぁ、うん……じゃあね』


 僕は通信を遮断した。


「……さて」


 ここからが本題だ。


精霊溶けし歪王樹ミックスト・デンドロン


 地面に倒れ、すやすやと眠っている白緑の肌の少年。服は当然着ていないが、生殖器も無い。少年のように見えるというだけでそもそも性別などないのかも知れない。


「見せてもらおうか、君のステータスを」


 僕は解析スキャンを横たわる少年に使用した。

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