メルメモ大繁茂洞窟
ニラノ平野の西、ガンドラ山脈の側。メルメモ大繁茂洞窟はそこにあった。
「聞いてた通りの繁茂具合だね……僕らには関係ないけど、洞窟の中なのに明るいね」
大繁茂洞窟の名の通り、その洞窟の中は凄まじい量の植物が生い茂っていた。寧ろ石の面を見つける方が困難な程だ。
「にしても……この感じ、久々だね」
魔物で溢れる洞窟をこんなに平和に通れているのは、僕らのやり方が原因だ。直ぐ側のガンドラ山脈を完全に制覇しようとしているムーン達の協力により、僕の配下のゴブリンやアンデッド達が先に行って制圧しているようだ。今もチラチラと従魔達が隣を横切っていくのが見える。
「くそッ、なんなんだッ! おいッ! 誰か助けてくれッ!」
人の声だ。男の声、少し篭って聞こえる。声の方へと行くと、洞窟を覆う植物が僅かに捲れた場所から声が聞こえていた。
「へぇ、隠し部屋みたいだね」
「だ、誰か居るのかッ!? 助けてくれッ、急にゴブリンやゾンビどもが……ッ! というか、アンタの方は大丈夫なのかッ!?」
僕は植物を捲り、洞窟の横穴を覗いた。そこには、冒険者然とした装備の男が一人、蹲っていた。
「大丈夫だよ。彼らは人を襲わない。少なくとも、理由なくは」
「そんなことが……いや、何者かの従魔なのか?」
確かにあの量は普通じゃない……と独り言ちる男の腕を掴み、外へと引きずり出す。
「そうだよ。彼らは全員、僕の仲間だ」
「……おいおい」
信じられないような目で僕を見る男。
「アンタみたいな子供が、か……いや、見た目通りじゃないんだろうな」
「見た目通りだけど」
何その、邪悪な魔術で自分を若く見せてる魔女みたいな。
「……魔人か?」
「いや、人間だけど」
横の二人は人間じゃないけどね。
「……じゃあ、俺は普通に出口から帰れるのか?」
「うん、何もしなければね」
男は恐る恐ると言った様子で穴の外に出た。
「……本当に何もしてこないな」
隣を走り抜けていくゴブリンを目にした男は、呆気に取られた様子で言った。
「でしょ? 今回は迷惑かけてごめんね。それじゃ、僕らは先に────ッ!」
轟音が響いた。洞窟の奥だ。
「なッ、なんだッ! 今のはッ!」
「……なんだろう」
焦る男。僕は首を傾げて答えた。
「二人とも、分かる?」
「奥ですね。ゴブリンさん達と戦ってるみたいです。そこそこ強そうな気配です」
「これは……竜気を感じられます。しかし、そこまで強大な存在ではありません。竜そのものでは、ないです」
ふーん、竜のような気配ね。
「まぁ、取り敢えず行ってみようか。君はどうする?」
「……どちらにしろ、俺はこの先に用がある。付いて行かせてもらいたい」
僕は微笑み、頷いた。
「それじゃ、確かめようか……僕らの敵を」
テイムできる魔物なら良いけど、どうかな。僕は淡い光で覆われた洞窟の奥へと歩みを進めた。
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